「我々はシフトチェンジして、そこに目標を置いている」――。試合後、反町康治監督はそう語った。指揮官の言う“目標”とは、プレーオフ圏内となる6位だ。もちろん13位のホーム・松本にとって、それはまだまだ遥か遠い目標だ。しかし、台風直撃により試合順延で松本は消化試合が一試合少ない。残り6試合を全勝すれば、勝点を69まで積み上げることが出来る。もちろん上位チームの足踏みという他力本願が必要条件とはいえ、数字上はまだ可能性が残されている。そのためにも今節は勝点3がどうしても欲しかった。
しかし、同じ事はアウェイ・徳島にも言える。徳島もまた消化試合数が一試合少ないものの、現在地を見ると勝点の最大値は61である。この試合で引き分け以下に終わると、6位以上の可能性は消滅する。つまり、お互いにこのゲームは負けることが出来ない一戦だったのだ。
フォーメーションは互いに3-4-2-1。開幕からこのフォーメーションを継続している松本に対し、徳島は長らく4-4-2を採用してきた。しかし、等々力で行われた川崎との天皇杯3回戦を「自腹で観戦した」反町監督にとって、この形ももちろん折り込み済み。「3枚で来ると予想していたし、準備もしていた」との言葉通り、前半は松本が落ち着いた試合運びを見せる。開始6分に得たFKのチャンスを塩沢勝吾がヘッドで合わせ、その直後のCKでもゴールを脅かすが、これは徳島ゴールを守るオ スンフンが続けて好反応を見せる。
しかし流れはまだホームにあった。22分、セットプレーのチャンスで楠瀬章仁の蹴ったボールにマークをずらしながら反応した飯尾和也が押し込む。これには、この日たびたび好セーブを見せてゴールに鍵をかけて松本攻撃陣を苦しめたオもさすがに反応できず、先制点は松本に生まれる。
しかし、「PA内での周りとの兼ね合いは少し寂しかった」(反町監督)、「距離感が悪く、強みのカウンターに持っていけなかった」(塩沢)との言葉通り、攻撃面でスムーズさに欠けた松本はペースこそ掴んでいたものの、生かしきる事が出来ずに追加点を奪えない。
変わって後半は徳島が主導権を握る。シュート数を見ても、松本の3本に対して徳島は8本。55分に左サイドから那須川将大がクロスではなくそのままドリブルで持ち込むと「スライドが遅れた」(楠瀬)最終ラインが隙を見せて、アレックスが流し込み、徳島が試合を振り出しに戻す。その後も個の能力に優れたドウグラス・津田知宏・アレックスの3トップが怖さを見せるが、ここは集中力を取り戻した守備陣が身体を張って阻止。勝ち越し点を狙った両監督は攻撃に比重をかけ、互いにアタッカーを次々に投入するが、ゲームを劇的に動かすまでには至らずにそのままタイムアップ。ある意味、妥当のドロー劇だった。
この結果、徳島は6位以上が消滅。来季も戦いの舞台はJ2となる。スタートにつまずいたことが悔しいシーズンとなった理由のひとつだが、人材の豊富さを改めて示した。例えば、殊勲の同点弾を決めたアレックスは今夏からの加入ということもあり、特に前半は機能していたとは言い難い。パスミスも散見され周囲との呼吸は今一つながらゴールをあげるのだから、さすがという他ない。このタレント集団をチームとしてどうまとめて来季の礎とするかを残り試合では求められそうだ。
一方の松本は「どうしても勝点1ではいけないゲーム」(反町監督)だったのは事実。しかし可能性はまだ残されている。残り試合は5試合。この日も9361人がアルウィンに集まった。このJ2屈指のサポーターの声援に応えるために最後の最後まで諦める事のない戦いを見せたい。
最後にどうしても触れておきたいプレーが後半開始直後にあった。オがゴールキックを蹴りそこない、PAに詰めていた楠瀬の身体に当たり、跳ね返ったボールがそのまま徳島ゴールに吸い込まれそうになった。これはポストに阻まれて得点にこそならなかったが、これは決して“珍事”などではなく、激しいチェイシングでオに休む間を与えずにプレッシャーをかけた楠瀬の積極性が賞賛されるプレーだった。
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2012.10.15 Reported by 多岐太宿















