栃木の先制点は16分。CKの競り合いの中で生まれたファールで得たPKをサビアが確実に決めた。そして、ラインを低く設定して守りを固めると、バランスの取れた守備網を敷いて福岡を待ち受けた。ボールをほぼ一方的に支配するのは福岡。しかし、細かくスライドしてゴールへつながる道を塞ぎ、パスコースを限定してボールを奪う守備を徹底させる栃木の壁は崩れない。勝たなければいけない試合を守備を固めてスタートさせた栃木が、いつ攻撃へのスイッチを入れるのだろうかと注目していたが、先制点を取ったことで、より一層守備意識を高めた栃木が福岡を自分たちの戦いに引きずり込んだようにも見えた。
しかし、両チームは、それとは違った感覚で戦っていたようだ。
「前半は守備一辺倒になってしまった印象がある」(上野優作ヘッドコーチ)
「1点取ってから相手に回される時間があった。そこで全体が押し上げて、守備も攻撃も全員がやることを意識しないと、追加点を取るのは難しい」(山形辰徳)
甲府戦、京都戦で2点目が取れずに敗れてしまった栃木にとって、J1昇格の可能性を上げるためには、福岡戦はアウェイとは言え勝たなければいけない試合。目指していたものは、自陣に引いて逃げ切るのではなく、堅固な守備から、いかに良い攻撃を組み立てるのかということ。前半は必ずしも自分たちの目指す戦い方とは違っていた。
一方、攻めあぐねていたようにも見えた福岡の選手たちは、次のように前半を振り返る。
「焦れることなくボールを回して、相手に隙が出来たらシュートを打つという考えでプレーしていた」(末吉隼也)
「焦らずにやっていれば崩せるし、点が取れる。後は最後のところだけだからと話していた」(石津大介)
「焦れずに外から行ったり、悪くないボール回しは出来ていた」(鈴木惇)
ここまでの試合では、ゴールが欲しいあまりに縦に急ぎ、逆にカウンター攻撃にさらされてピンチを招いていたのが福岡。前田浩二監督は、経験のなさからくるゲームの流れを読む力不足を何度となく口にしていたが、この日は選手たちは、90分間で勝てばいいという意識で徹底されていた。
そして、後半に入ると試合は全く違う展開を見せる。前への意識を高めた福岡に対し、堅守を誇っていたと思われた栃木の守備網が簡単に崩れた。ボランチは福岡の攻撃を全く受け止められずにボールを後押しするばかり。それに伴い、チーム全体のバランスが崩れて3ラインが揃わず、中盤には大きなスペースが空いた。そこには堅守を誇る栃木の姿はなかった。そして52分、石津が放ったミドルシュートで福岡に同点ゴールが生まれる。それはチームの狙い通りに奪ったゴールだった。
「前半は大事に行きすぎてシュートを打てなかったが、ハーフタイムに惇(鈴木)から『相手にあたってもいいから1回打ってみろ』と言われて打った」(石津)
「前半はミドルシュートが少なかったので、周りの選手に積極的に打ってほしいと伝えた。それで1点取れたことで、自分たちがバイタルへ入った時に、相手が焦ってアプローチに来たことで上手くサイドに展開できた」(鈴木惇)
試合は一方的な福岡のリズム。後半のシュート数は栃木の5本に対して、福岡の14本と、栃木を圧倒した。しかし、それでも勝ちきれないのが今の福岡の現実。結局、最後の精度に欠いて追加点を奪えず。試合は1−1のドローで終了のホイッスルを聞いた。
「この勝点1が今後に活きてくることを願っている」と試合を振り返ったのは上野ヘッドコーチ。栃木は勝点1を積み重ねたと言うよりも、勝点2を失ったというのが正直な気持ちだろう。しかしながら、甲府が2位以内を決めた以外では、上位6チームも大分以外は軒並み勝点を落とした。栃木にもまだ可能性は残されている。この日の勝点1をポジティブに捉えて前へ進むことが必要だろう。
そして福岡。先制点を奪われたものの自分たちのリズムを崩すことなく試合を勧められたのは収穫。攻め続けながらもゴールを奪えなかったことが課題。そして、引き分けたことで、第30節・富山戦(ホーム)で逆転勝ちをして以来、8戦勝ちなしという結果になった。それでも、前を向いて進むしかない。福岡にもまだ試合が残されている。
「こんな順位でも来てくれるサポーターがいる。自分どうこうではなく、来てくれる人達のためにやらなければいけない。目の前の1試合、1試合を勝つためにプレーすることに変わりはない」(鈴木)
サポーターが望んでいるのは、次節にホームで戦う甲府戦での勝利。まずは、その1点に集中して準備を進めたい。
以上
2012.10.15 Reported by 中倉一志















