唯一残された残留争いの直接対決。チケットは完売し、NACK5スタジアム大宮はオレンジのサポーターで埋めつくされた。ホームのゴール裏には『大宮共闘』、アウェイのゴール裏には『残留』の段幕が掲げられ、選手入場とともに大宮サポーターによるオレンジのコレオグラフがスタンドを染めると、新潟サポーターもビッグフラッグを展開して応戦する。互いに勝利だけを求め、ピッチで戦う選手たちの背中を押した。しかしどちらも、その願いはかなわなかった。
先にチャンスをつかんだのは新潟だった。開始10秒、村上佑介からのロングボールから裏へ抜け出したブルーノ ロペスがダイレクトボレーを放つ。「ブルーノ ロペスは動き出しも速いし、ボールが出てくると信じて走ってきた」(菊地光将)ことで、大宮は強気にDFラインを上げられなくなった。一方、大宮の前線の選手たちは「プレッシャーをかければ意外と取れそうだと、前からボールを取りに行きたがった」(金澤慎)ことで、陣形が間延びし、新潟に自由な展開を許した。
標的となったのは大宮の右サイド。村上和弘の負傷により右サイドバックには渡部大輔が入ったが、「代わった選手のところなので、突いていこうと思っていた」という田中亜土夢が、渡部と右サイドハーフのカルリーニョス、ボランチの金澤の間でボールを受け、積極的にオーバーラップする金珍洙とともに大宮の右サイドを蹂躙した。正直、そこから失点しないのが不思議なくらいではあったが、新潟の拙攻と、大宮の中央での粘りによって均衡は保たれた。
大宮は前日の練習終了後に、前節で痛めたノヴァコヴィッチの足の状態が悪化したことで、急きょズラタンと長谷川悠の2トップを組んだが、新潟の早いプレッシャーに苦しみ、ロングボールを蹴るもののセカンドが拾えない。トップの動き出しが少ないうえに選手間の距離が遠く、前線にボールが渡っても孤立してつぶされた。そして38分、大宮のロングボールからセカンドボールを拾って新潟がカウンターを仕掛ける。右サイドでボールを持ったブルーノに、大宮は守備の人数はそろっていたもののだれもアプローチに行かず、グラウンダーのクロスを逆サイドから走り込んだ田中がフリーで押し込んで先制した。
勢いに乗った新潟の攻勢が続く。42分にはカウンターから裏をねらったブルーノへのパスをペナルティエリア内でカットされる。しかしそこに詰めてクリアさせずボールを奪い、三門雄大が正面からシュートを放つが左にそれた。このシュートが決まっていれば試合そのものが決まっていた可能性もあったが、堅守を誇る新潟が、その攻勢ゆえにリスクマネジメントがおろそかになっていた。44分、北野貴之のパントキックからセカンドボールを拾った青木拓矢が長谷川に縦パスを当て、前線に走り出す。リターンを受けた青木はすぐさま左の東慶悟にはたき、そのままペナルティエリア内に侵入。枚数のそろっていたDFの間を通した東のピンポイントのリターンも見事だったが、左足で黒河貴矢の股下を射抜いた青木の同点シュートが、ゲームを振り出しに戻した。
後半、大宮が長谷川に代えてチョ ヨンチョルを投入すると、流れは一気に大宮に傾いた。48分、ヨンチョルのキープから下平匠、ズラタンとつないで最後は青木のミドルシュートが枠を襲う。49分にはカウンターからヨンチョルが長い距離をドリブルしてペナルティエリア内で切り返してシュート。51分には青木の縦パスをバイタルエリアで受けた東が振り向きざまに左足でねらった。新潟はヨンチョルのスピード突破に手を焼き、53分には守備の要である鈴木大輔が警告を受け、累積で次節出場停止に追い込まれた。
大宮は逆転するならこの時間帯だったが、新潟が59分に藤田征也に代えて矢野貴章を投入すると、流れは一変した。矢野の前線からのプレスによって守備にアグレッシブさが蘇り、大宮のビルドアップを寸断してボールを奪う。61分、インターセプトから前線に上がった鈴木大輔がミシェウからのクロスを頭で合わせたが、北野がかろうじて弾き返す。大宮はゴール前に釘付けにされ、クリアも次々に拾われ波状攻撃にさらされた。
新潟もこの時間帯に2点目を奪いたかったが、大宮が東とヨンチョルのポジションを入れ替え、ヨンチョルに矢野のサイドのケアと、東にボランチのケアをさせたことで、70分にはゲームが落ち着いた。大宮は守備の負担が増えたヨンチョルが鳴りを潜めてしまったし、新潟は矢野へのロングボール一辺倒になって大宮の右サイドへの執着を忘れてしまったようだった。ともにここまでリーグ戦連続無失点の守備力と、1試合平均1得点以下の得点力不足が顔を出した格好で、互いにカウンターからゴール前には迫るものの決定機の数は少ない。85分、新潟は途中出場の鈴木武蔵がペナルティエリア内でセカンドボールを拾ってボレーを放つもサイドネット。89分、大宮は途中出場の渡邉大剛がペナルティエリアに走り込んで横パスを受け、黒河の右をねらうがシュートは正面を突く。それぞれ一度ずつ、互いに両ゴール裏に歓声と悲鳴を上げさせかけたが、寸前で飲み込ませたままで死闘の幕は降りた。
大宮にとっても、新潟にとっても痛すぎるドロー。この結果を一番喜んでいるのはG大阪だろう。大宮は15位をキープして勝点1を積んだとはいえ、降格圏までの勝点差は試合前よりも1つ減ってしまった。17位に順位を下げた新潟は言わずもがなだ。両者とも勝ちたかった。本当に勝ちたかったが、ともに相手の堅守を崩して勝ちきる力は、残念ながらなかった。
もちろん、互いに“負けなかった”という評価もできる。特に気持ちの部分で相手に負けなかったからこそ、勝点1だけでも得ることができた。前半にあれだけやられまくっていた渡部が、終了直前に前方のスペースに突進し、鈴木武蔵を吹っ飛ばしてクロスを送った場面は大宮サポーターの胸を熱くしただろうし、そのクロスに飛び込んだ清水慎太郎を捨て身で潰した鈴木大輔のプレーもまた、新潟サポーターのボルテージを上げた。大宮・ベルデニック監督は「たくさんのチャンスがあり、たくさんの相手を崩すシーンがあり、観客の皆さんは満足できたのでは」と語ったが、スタジアムを埋めたオレンジサポーターが満足したとすれば、選手たちが勝点3を得るために気持ちで戦い続けたことにあるだろう。必ずしも気持ちで勝てるわけではないが、気持ちがなければ勝点1すら得られないことを、だれもが知っている。この日、勝点1では足りなかった両ゴール裏に、ブーイングはなかった。
以上
2012.10.21 Reported by 芥川和久
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