自力での残留を決めたい富山と、ホーム最終戦を勝利して一つでも上の順位へと昇っていきたい北九州が対戦。プレビューにも触れたとおりの今にも雨の降り出しそうな空でキックオフを迎えたが、空はなんとか90分間持ちこたえてくれた。しかし、朝から吹いていた風は強いままだった。富山はコイントスで風上を選択。本城の気まぐれな天気を味方に付けようとしたが、主導権を握ったのは北九州だった。
富山は最終ラインの前にソ ヨンドクと朝日大輔を配し、「新しいコンビ、新しいポジション」(安間貴義監督)で試合に入っていく。中盤の底で選手が入れ替わると、ボールの動かし方に好影響が出る可能性がある一方で、守備面ではマイナスの側面が出てくる危険もはらむ。それは最終ラインとのギャップが広がって相手に自由にプレーされる空間を与えるという点だ。ただ、安間監督は「最初は戸惑うのは覚悟していました。(北九州は)ポジションをずらしながらいろんな工夫をしながら攻めてくる相手なので、ある程度その時間はできても仕方がないと思っていました」とリスクを承知で起用。これが功を奏したと言うべきか、富山は前半はバイタルエリアが空くのをなんとかケアしていた。しかし後半、北九州が長身の林祐征を投入し、さらにレオナルドもピッチに立たせると、守備陣が両FWに引き寄せられてしまい、スペースも、フリーになる選手も出始めてしまう。
この試合の唯一のゴールはその富山の脆さと、北九州の狙いが、双方にとってはまった、はまってしまった場面だった。
84分。右サイドでレオナルドと富山のDFが競ったこぼれ球を端戸仁が拾って木村祐志に流すと、木村はペナルティアーク上にいた林にグラウンダーのパスを出す。このときの木村はまだ右サイドのそれほど高くない位置にいたため、浮き球のアーリークロスや、競ったあと右から走り込んでいたレオナルドに合わせるという選択肢もあったが、木村は「(レオナルドに)最初は出そうと思ったのですが、(相手DFが)2人くらいいたと思う」と冷静に状況判断。富山のラインが引きすぎていたこともあり、ペナルティアーク上という少し下がったところにいた林にグラウンダーでもパスがぴたりと入った。これを林が落ち着いて竹内涼に出すと、竹内が鋭い弾道のミドルシュートで勝敗を決するゴールを決める。「点を取るならあの形だと自分の中で少しイメージしていたので、そのイメージした形を林さんが作ってくれた」と竹内。終了間際という「昨年のような劇的な時間での得点」(三浦泰年監督)で北九州が勝点3を引き寄せた。
終盤は富山がセットプレーで北九州ゴールに迫ったが、得点には至らず、1−0でホイッスル。
試合を落とした富山は勝点35のままで、残留争いは最終戦までもつれることとなった。しかし安間監督は決して下を向かず、「今すごく良い雰囲気で戦っているので、プラスアルファの力を頂いて、どんな形でも、しがみついてでも、Jに残りたいと思います。ぜひ県総に駆けつけて後押ししてくれたらなと思います」と話し、ホームの富山県総合運動公園陸上競技場で迎える最終戦への来場を呼びかけていた。
富山は守備面だけを見れば前半の内容を続ければ、最終戦も落ち着いて戦うことができるだろう。ただ、前半に風上を選択しながら、迫力を持って攻められなかったことが結果としては最後まで響いた。どういうチームであっても、何らかの形で1失点は喫する可能性がある。それだけに早い時間で試合を動かすべく先制点、追加点を追いかけてリスクをもっと負ってよかった。最終戦は大量失点さえしなければ残留を決することはできる。迫力のある攻撃を立ち上がりから仕掛けて、来季へと繋がる試合を展開してほしいと思う。
この試合がホーム最終戦だった北九州は、残り1試合あるものの、有終の美を飾ったと言っていいだろう。気温が低く風の強い試合でありながらも、ボールを大事にするサッカーを前半から展開。後半は前線にターゲットを置き、長いボールと短いボールの両方をうまく組み合わせながら、敵陣にスペースを作っていった。守備陣も最後まで集中を切らさなかった。36分に富山・國吉貴博のクロスを西川優大に頭で合わせられる場面以外にはビッグチャンスを作られることはなく、安定した守備は、安定した攻撃へと転換。ホーム最終戦は、今季の三浦サッカー、ギラヴァンツサッカーを象徴しうる試合になった。
惜しむらくはホーム最終戦であるにも関わらず入場者数が4,116人にとどまってしまい、北九州らしいサッカーを必ずしも多くの人に届けることはできなかった。セレモニーでは横手敏夫社長が「ギラヴァンツを北九州のシンボルにするための市民運動に火を付けたい」と話していたが、まさにその通りだろう。
試合後のゴール裏。三浦泰年監督はサポーターの前で選手たちの輪に交じって肩を組み、今夏以降は北九州の名物となった勝利のラインダンスを踊っていた。「最初は勝ってもああいうダンスは起きなかった。いつの間にか選手とゴール裏にいるサポーターとの距離が近づいていって、ああいうダンスを踊り出して、そのときに活躍した選手が前に出てはしゃぐようになった。私は暗い性格なのであまりああいうのを見ていいなあとは思わない私が、非常にいいなと」。
北九州の行く先はまだ分からない。それでも、三浦監督によって若い才能が花開き、胸を張れるサッカーが毎試合のように繰り広げられていく。これがギラヴァンツサッカーのスタイルとなっていくのならば、いま『ギラヴァンツのサッカー』は礎を築けただろう。これをいつの日か『ギラヴァンツ<北九州>のサッカー』へと高めていきたい。チームを我が町の誇りへと育てていく作業はチームを支える者たちにしかできない大事な役目だ。
まもなく迎える長いオフ。それは私たちにとって、『ギラヴァンツ北九州』へと昇華する重要なオンシーズンとなる。
以上
2012.11.05 Reported by 上田真之介
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