「前から行くとスペースを突かれる。守備では1人ずつ見ようと試合に入った」(栗澤僚一)。イメージとしては、守備がハマった前々節の広島戦に若干近いだろうか。1トップのネット バイアーノも、トップ下の茨田陽生もG大阪のセンターバックにはプレスに行かず、陣形をコンパクトにセットして相手ボランチにボールが入ったところから、それぞれが与えられた守備の役割をこなす形で試合に入った。
遠藤保仁が中盤の底でプレーする時には、そのマークは茨田の役目だったが、遠藤が高い位置まで上がった時には栗澤が見るとマークの受け渡しがはっきりしており、さらに「遠藤さんは攻撃的なボランチなので、明神さんが1人になり、その両脇が空く。そこに入ってパスを受けようと思っていました」(茨田)というように、守備の負担が減った茨田は、彼独特の攻撃センスをフルに生かし、攻撃を奏でた。
先制は12分。サイドに流れた茨田のクロスから、工藤壮人のヘディングが決まる。
プレビューでも述べた通り、この試合には右サイドにひとつの鍵があった。そのせめぎ合いでは、柏に分があったと言っていい。積極的な攻め上がりを見せるG大阪の左サイドバック藤春廣輝に対して、工藤はハードワークを怠らず、守備をこなしながら、攻撃時には中盤右サイドの位置からゴール前へ顔を出した。レアンドロ ドミンゲスを欠く柏の攻撃は、当然ジョルジ ワグネルと橋本和による左サイド偏重となる。これによってG大阪の守備は右へと引き出され、さらに右サイドバックに入ったのは加地亮ではなく、武井択也だ。柏はその急所を突き、片方のサイドに寄せられたG大阪の手薄なファーサイドから、工藤が入ってゴールを仕留める。45分の2点目は、まさしくその展開から生まれた。
前半、G大阪は柏の守備を攻略する手立てに欠けた。37分には武井のスルーパスからレアンドロがゴールを決め、一時は同点とするも、それは那須大亮、増嶋竜也のイージーなミスを突き、レアンドロが裏を突いたものであって、得意のパスワークで守備を破綻させたわけではない。
そこで後半、G大阪が動く。「バイタルのところにスペースがなく、窮屈だった。少し違うキャラクターの選手を入れ、攻撃のバリエーションを変えようと思った」(松波正信監督)という意図から、二川孝広に代えて佐々木勇人を、家長昭博に代えてパウリーニョを投入した。前半までは唯一、柏の陣形をかき回す動きをしていた倉田秋も「(佐々木)勇人君とパウリーニョが入ってレアンドロもサイドに流れるようになった。あの動きをやってくれると相手のラインが下がるんでスペースができるし、自分もそこを使える。やりやすかった」と話している。前半のカッチリした守備を破れないといった手詰まり感は、解消の方向へ進む。
ただ、こうした展開は柏にとって想定内のはず。むしろG大阪の前傾姿勢は、第16節のようなワンサイドゲームに持ち込む絶好のチャンスでもあった。しかしカウンターこそ発動するものの、つなぎにミスが生じて逆にG大阪のカウンターを浴びる始末。記者席近くのメインスタンドで観戦する方が談笑を交え、首を左右に振る動作を大袈裟に行っていたが、「まるでテニスのラリーを見ているようだね」とでも言っていたのだろう。試合は往来の激しいカウンター合戦の様相を呈したのである。
菅野孝憲と激突し、顎の下を切っても勝利のためにプレーし続けた遠藤の姿に火が点いたのか、終盤はG大阪の気迫が柏を土俵際まで追い込んだ。柏は何とか守備陣が体を張って耐え続けていたが、90分、栗澤のチャージを振り切った今野泰幸がドリブルで持ち上がる。増嶋はパスコースを読んでいたがクリアし切れず、パスを受けたレアンドロは鮮やかなステップワークで渡部博文をかわし、菅野の頭上を射抜いて同点ゴールを決めた。
片やAFCチャンピオンズリーグ出場権の3位浦和とは勝点差3、片や残留圏内の15位神戸との勝点差は2と、両者ともこの引き分けによってわずかながらにせよ、その差を縮めることはできた。これをポジティブに捉えるのか、それとも勝てなかったことをネガティブに捉えるのかは千差万別、それぞれだとは思う。確かに上との差は縮めた。しかし、柏は名古屋、横浜FM、鳥栖には追い抜かれ、G大阪も新潟に勝点で並ばれた。目標順位には依然として到達できないまま、リーグ戦はとうとう残り3試合となってしまった。
柏もG大阪も隙を作れば、必ず危機感を持つライバルチームには追い抜かれる。もちろん過度のプレッシャーを背負い、重苦しい雰囲気を作る必要はないが、「何とかなるだろう」というような楽観的ムードを生み出すことは双方とも避けたいところ。“負けなかった”ことによって、時として危機感はぼやけてしまいがちになるが、残り3試合、しっかりとチーム内で意識確認をしておかなければならない。
以上
2012.11.08 Reported by 鈴木潤















