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【J1:第33節 大宮 vs 磐田】レポート:寡黙な守備職人の描いた美しいアーチ。大宮、自力で残留を確定す。(12.11.25)

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「何を思ったかシュートしてしまって」……8度目の残留に導くゴールを決めた伏兵は、ヒーローインタビューでそう振り返った。28分、中盤の底でボールを受けた金澤 慎が、ノヴァコヴィッチに縦パスを入れた勢いで前線にダッシュ。ノヴァコヴィッチから中央でパスを受けたズラタンは、左に上がってきた金澤にボールを預ける。ちょうどペナルティエリアの角。ドリブル突破や正確なクロスが持ち味の選手ではない。さらに左に開いていた下平 匠を使おうとした金澤だったが、自身がフリーなのに気づいてゴールに向き直し、右足を振りぬいた。美しい弧を描いたボールが、必死で伸ばした八田の掌の先を抜け、逆サイドネットに吸い込まれていく。その行方を見届け、寡黙な守備の職人は、両手を大きく広げて感情を爆発させた。

14時半キックオフの試合でG大阪が引き分けたことで、試合前に磐田の残留は決まっていた。大宮も、勝点3を取れば残留が確定する。立ち上がりは、後顧の憂いがなくなった磐田がアグレッシブに仕掛けた。前線から激しくプレッシャーをかけて大宮に苦し紛れのボールを出させ、中盤でボールを奪うと得意のサイド攻撃を展開した。1分、右サイドに開いた前田遼一が起点となり、松浦拓弥のクロスに山本康裕が詰める。勝点3が欲しい大宮も、磐田のハイペースと満員のスタジアムの熱気に引きずられるかのように前線からボールを追ったが、青木拓矢が「そこを統一できればもうちょっと上手く試合に入れたと思う」と振り返ったように、最終ラインとの間でやや間延びを生じ、序盤の主導権は磐田にあった。
特に、この日久々にスタメン復帰してトップ下の位置に入った松浦が大宮を苦しめた。前田遼一が裏をねらって大宮の守備ラインを下げ、そこに松浦が「浮いた位置からランニングしてきて、なかなか(マークを)つかめなかった」(渡部大輔)ことで、危険な場所で起点を作られた。ただ磐田も、そこから先で連動した崩しができなかった。
前半も半ばには試合が落ち着き、大宮もズラタンとノヴァコヴィッチの前線にボールが収まるようになると、徐々に磐田を押し返していく。大宮のねらいは「駒野の裏」(チョ ヨンチョル)。ボールを奪うと対面のヨンチョルが縦に飛び出し、ドリブルで切り裂く場面が頻発した。さらに下平も駆け上がってクロスを供給。磐田のハイプレスは続いていたが、時間とともにタイトさは失われていった。そして28分、金澤のビューティフルゴールが均衡を破る。前半終わりごろには磐田の猛攻にラインを下げられ、39分にはペナルティエリア内で山田、45+1分には藤田のミドルが枠を襲うが、北野貴之の攻守とクロスバーに助けられた。

後半も、攻める磐田、守る大宮という大勢は変わらなかったが、カウンターを武器とする大宮にとっては、押し込まれすぎない限りは悪い展開ではない。磐田は大宮に「うまく誘い込まれた」(松浦)とも言える。ねらい通りに57分、青木のカットから駒野の裏を走ったズラタンに渡り、ペナルティエリア内まで持ち込んだズラタンからマイナスのパスを渡邉大剛が左足ミドルで突き刺す。この追加点で、試合はほぼ決まった。
確かに磐田は大宮を押し込んではいたが、焦りからか強引なプレーが増えていった。連動を欠き、個人で仕掛けてはつぶされる。67分には小林祐希と金園英学を投入し、3トップ気味で攻めに出るが、「パワープレー気味になってしまった」(金園)。そのクロスも、精度はもちろん中とのタイミングやねらいが合っていたとは言い難い。大宮は高い集中力でクロスを簡単には上げさせず、前田と金園に対しては菊地光将と河本裕之のセンターバックがきっちり抑え、セカンドボールを青木が回収した。後半、磐田のシュートは7本を数えたが、決定機はゼロに終わった。
アディショナルタイムは4分。磐田は攻め続けていたが、勝利を、残留を確信した大宮サポーターのチャントがスタジアムを揺るがす。コイントスで勝った磐田がエンドを変えたことで、後半はホームゴール裏を背に戦うことができたのも、大宮にとって幸いだったかもしれない。4分は長かったが、何の不安もなかった。長い笛が鳴り響き、殊勲の金澤はしゃがみこんで芝生を一度たたくと、ホッとしたような笑顔で立ち上がり、仲間たちと抱擁する。歓喜の瞬間は、これほど苦しんだシーズンだったのが嘘のように、どこかあっけなくもあった。

大宮はこれでリーグ10戦無敗となり、次節の清水戦に勝利すれば、過去最高勝点と最高順位も見えてくる。何より今年は、リーグ戦が終わっても、天皇杯を戦うことができる。ホーム最終戦セレモニーで、ミックスゾーンで、選手たちは口々に「次も勝ち、さらに元日の国立を目指す」と語った。10試合17得点、失点はわずかに4。今の戦い方であれば、それも不可能ではない……そう感じさせる安定感と勢いが、今の大宮にはある。
対照的に磐田はこれでリーグ8戦勝ちなし。得点力不足もさることながら、8試合で15失点の守備の立て直しが急務だ。ただ、序盤のアグレッシブなプレスとそこからの攻撃は、今年の好調時の磐田らしさを十分に表現できていた。必要なのはやはり、エース前田のゴールだろう。磐田の最終戦は降格危機にあるG大阪。こちらの結末にも注目したい。

以上

2012.11.25 Reported by 芥川和久
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