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【J1:第33節 広島 vs C大阪】レポート:日本一になれました!!!森保一と仲間たちの叫び、伝説となる(12.11.25)

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“さあ、行こうぜ、どこまでも。
 走り出せ、走り出せ。
 輝け、俺たちの誇り。
 広島、広島”

ネガティブな状況に陥った時、サポーターはこの「Hiroshima Night」をずっと歌い続けて、選手たちを鼓舞する。サンフレ劇場で西川周作が「一番、大好きな歌です。一緒に歌いましょう」と、サポーターの前で自ら歌い始めたのも、この曲だ。
ステージ優勝を果たし、広島ビッグアーチが4度も3万人以上の観客で埋まった1994年時点で、この曲は存在しなかった。その後、広島は成績低迷・観客動員激減のWショックをうけて経営危機に陥る。そんなクラブを包む沈滞した雰囲気を打ち破ろうとサポーターが創り上げたのが、「Hiroshima Night」だった。2度の「降格」などの屈辱にまみれながら、それでも気持ちを奮い立たせてサポーターが歌い続けるこの曲。歴史を積み重ねる中で、選手に立ち上がる勇気を与える力と重みを加えた「Hiroshima Night」は今や、広島というクラブの一部だと言える。

勝てばJ1残留が決まるC大阪は、他のチームと同様に「対広島戦勝利の方程式」を採用した。前線からプレスをかけてパス回しを限定させ、アンカーの横山知伸も加えた「5バック」で広島の攻撃を迎え撃った。
だが「Hiroshima Night」に迎えられてピッチに登場した紫の戦士たちは、誇りを持ってC大阪の「対策」を打ち破る。今季初めてリベロで起用された塩谷司を中心とした最終ラインは、前線に勇気を持ってクサビを入れた。最近見失っていた「点をとるためにはリスクも冒す」攻撃精神の発露だ。
17分、ここまで徹底マークを受けていた高萩洋次郎は、スッとボランチの位置までポジションを下げる。その動きに付き合って横山も走る。スペースが生まれた。
森崎和が1トップの佐藤寿人へ正確なクサビ。瞬間、森崎浩と高萩が決意を込めて動き出す。7番は斜めの動きで高萩がつくったスペースをついてさらに空間を広げ、鋭い走り出しでマークを振り切った15番が、前を向いてボールを受けた。
狙いは、森崎浩へのスルーパス。
ブロック。こぼれた。
高萩、集中。左足、一閃。
打った。入った。
上下に揺れる紫の波。選手たちが放った「三本の矢」によってボルテージはさらに増幅。
その3分後、今度は二人の若者が躍動した。
高萩のロングパス。佐藤が走り、正確に落とす。受け継いだのは、清水航平だ。
サイドチェンジ。ファーサイドに走り込んだのは石川大徳。「逆サイドから飛び込むから」。清水との約束を、石川は実行した。
届くか。行けっ。
3万人を超えたサポーターの声が、石川の背中を押す。
ダイビングヘッド。届いた!
石川の執念の先には、青山敏弘。約70m、自陣から全力疾走で飛び込んできた。「この試合で大けがをして引退したとしても、悔いはない」。
青山の覚悟、結実。
広島のエンジンが、後輩の頑張りを得点という形に昇華させた。
42分、もはや止められない存在となった高萩のスルーパス。抜け出した清水航平を山口蛍がペナルティエリアの中で倒し、PK&レッドカード。祈りを込めるようにボールをセットしたエースの左足シュートが、ネット上部を揺らした。
昨年、3-0から逆転された「長居の惨劇」を一瞬、思い出す。だがホームの大歓声を味方につけた広島に、その心配は不要だ。
高萩のスルーパスに反応した石川、迷いなき右足。「優勝を決める戦いで初ゴールを決めてヒーローになりたい」と語っていた若者のガッツポーズで、試合の趨勢は決まった。C大阪の反撃は、枝村匠馬のヘッドによる1点のみ。完敗を喫したC大阪のJ1残留決定は、最終節に持ち越しとなった。
アディショナルタイムは4分。ビッグアーチに響き渡る「Hiroshima Night」。手拍子はバックスタンドからメインスタンドにまで広がり、その瞬間を待ち続けた。
ボールがタッチラインを割る。家本主審の長いホイッスル。勝った。森崎和はベンチを見る。メンバー外の選手たちが、ピッチ横で待っている。
微妙な沈黙、その時間は12秒。
ミキッチが、近くにいた報道陣に確認した。
「(仙台戦は)フィニッシュ?」
「終わり?」
西岡大輝も確かめる。
一気だった。全員がピッチ内になだれこんだ。その様子を見て、サポーターもまた、確信した。
優勝だ。日本一だ。タイトルだっ!!!!
佐藤寿人は顔を手で覆い、背中を震わせて、頭をグラウンドに押し付けた。森崎浩司はピッチに大の字となり、西川周作は両手を天に突き上げた。一人歓喜の輪から離れた高萩は東日本大震災の被災者のために、両手を握りしめて、ずっとずっと、祈りを捧げた。
泣いた、泣いた、泣いた。
選手も、スタッフも、サポーターも。
20年間の想いを込めて、積み重ねた辛苦を噛み締めて、広島が泣いた。
「みなさんの応援のおかげで、我々は日本一になれました!!嬉しいです!!!」
森保一の叫びが、広島を覆っていた雨雲を切り裂いた。苦闘の歴史を突き破る歓喜の咆哮。永遠に続くかのような感激に、広島ビッグアーチは震え続けた。

以上

2012.11.25 Reported by 中野和也
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