「あの舞台に帰るためにも、必ず天皇杯で優勝する」。工藤壮人は力強い口調でそう述べた。リーグ戦を6位でフィニッシュした柏。連覇を逃しただけでなく、最低限の目標に据えていた来シーズンのAFCチャンピオンズリーグ出場権も逃してしまった。しかも鹿島との最終節、「勝てば3位」という状況にありながら、そのチャンスを掴み損ねたのである。だからこそ工藤が言うように、選手たちの天皇杯へ懸ける意気込みはさらに強まったとも言える。
前身の日立時代以来、37年ぶり3度目の天皇杯制覇に向け、険しい道のりは続く。チームの大黒柱、レアンドロ ドミンゲスがリーグ戦最終節で受けたレッドカードにより、3試合の出場停止処分となった。柏が勝ち進んだとしても準決勝まで“キング”は不在。さらにはジョルジ ワグネルも怪我で戦列を離れ、おそらく復帰は準々決勝になる見込み。“ブラジリアン・デュオ”を欠いた状態で柏は週末の試合に臨まなければならない。
対する横河武蔵野は、1回戦から3試合連続完封という勝ち上がりが示す通り守備から入るチームだ。中でも「試合の初めから5バックをやったのはこの試合だけ。普段は4−4−2です」と依田博樹監督が振り返った2回戦のF東京戦は、7、8人で作る分厚い壁でゴール前をがっちりと固め、猛攻に耐え抜き、そして試合終了間際のフリーキック一発で前年度天皇杯王者を粉砕した。自分たちの粘り強い守備によりいっそう自信を深め、今回も「F東京に続き柏も倒してやろう」という高いモチベーションを抱いているに違いない。試合の運び方以前に、まずはその雰囲気に飲み込まれないことが先決である。
そして焦点は、レアンドロとジョルジが不在の中で、柏が武蔵野の堅陣をいかにして破るかという点になるだろう。「裏へ抜ける動きは大事だけど、引いた相手に裏ばかり狙ってもしょうがない。鍵はロングシュートだと思う」(田中順也)。確かに、田中のあの強烈な左足キャノンシュートは引いた相手に対しては非常に有効的である。田中自身も「コンディションは良い」と話しており、リーグ戦の不完全燃焼を天皇杯にぶつける意気込みが、彼の言葉からも伝わってくる。
「フィニッシュに持ち込む形のイメージはG大阪戦(第31節)。改めてあの試合の映像を見て確認する。ダイアゴナルに動いて、相手を引き出す」と工藤は語る。リーグ戦で13ゴールを叩き出したチーム得点王は、その器用さを買われてレアンドロの代役として中盤の右サイドを務めるが、ワイドに張る時とゴール前へ飛び込むメリハリを付けながら、虎視眈々とゴールを狙っている。
また、澤昌克は「速く攻める時は速く、ゆっくり攻める時は焦れずにパスを回しながら相手を動かし、できたスペースを工藤、山中(亮輔)が狙う。そうすれば、僕と順也も前を向いてプレーできる」と攻撃のイメージを膨らませ、「チームの鍵は……選手全員ですよ」と屈託のない笑顔で話した。澤の言葉にもある通り、ルーキー山中の日立台デビューが濃厚。アカデミーが輩出した新たな才能の活躍にも大きく期待がかかるところだろう。
ネルシーニョ監督就任以降、天皇杯では学生相手でもJFLのチームが相手でも、常にフルメンバーを組み、Jリーグの試合と変わらぬ「目の前の試合を全力で戦う」というモチベーションで試合に臨む。それは今回も変わらないが、サポーターもJリーグと同じ気持ちで選手を後押し・鼓舞し、ぜひとも普段と変わらぬ日立台の素晴らしい雰囲気を作り出してもらいたい。
以上
2012.12.14 Reported by 鈴木潤
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