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【J2:第1節 栃木 vs 松本】レポート:松本の術中にハマった栃木。8686人に歓喜を届けられず、2年連続で開幕戦を落とした。(13.03.04)

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思惑通り。そんな表情を浮かべながら勝因を語ったのは川鍋良祐。オールドファンには懐かしい、栃木のJ2参入に貢献した、あの川鍋だ。
「栃木はポゼッションしながら(攻撃に)人数をかけてくるのでカウンターを、ブロックを作って縦に速い攻撃を狙っていた」
栃木はまんまと松本の術中にハマり、松本は現有戦力で体現できるサッカーで勝点3を得た。Jの舞台で初めて開幕戦を制した松本サポーターは狂喜乱舞。一方、8686人を飲み込んだスタジアムに歓喜を届けられなかった栃木。ゴール裏は静寂に包まれた。
「せっかくフロントの方がお客さんを集めてくれたのに、選手が頑張らないとフロントの方の仕事が報われない」
後半に巡って来た絶好機を逸した廣瀬浩二は肩を落とした。大観衆に「感動!」を与えることは叶わず、栃木は2年連続で大事な初戦を落とした。

「焦れずにボールを繋ぎながらやることはできたけど、結果的にそれが勝点3に結び付かなかったことは悔しい」
菅和範の言葉に敗戦の全てが凝縮されていた。序盤からボールを握ったのは栃木。トレーニングで準備した通り、ピッチの幅を使いながらボールを動かした。前半13分にはセンターバックのチャ ヨンファンから右サイドバックの赤井秀行にボールに渡り、赤井が精度の高いクロスを上げ切ってCKを獲得。スムーズなボール運びから手にしたCKに変化を付け、菊岡拓朗が入れたクロスにクリスティアーノが絶妙なタイミングでヘディングを繰り出す。相手を出し抜いたショートCKが決まっていれば、理想的な展開に持ち込めたはずだった。だが、無情にもシュートはクロスバーに嫌われる。

命拾いした松本は走力をベースに、奪ったボールをとにかく素早く縦に送り込んだ。ターゲットの塩沢勝吾が潰れ、その零れ球を船山貴之と北井佑季の2シャドーが拾ってはゴールに迫った。単調な攻撃は徐々にボディブローのように効き始め、栃木のボールの失い方が悪かったことも手伝い勢い付く。すると、33分にスローインからのクイックリスタートを活かし、北井の右クロスを塩沢がファーサイドで捻じ込み先制に成功。「振り返るとあの時間帯が一番、勿体なかった」と菅が悔やんだように、栃木は失点直前にもマークの甘さからピンチを招いていただけに、些か集中力に欠けたところを突かれたと言える。

失点を喫しても下を向くことなく、チャンスを作り続けた栃木だが、先制したことで守備に人数を割いた松本を攻め崩せない。特に後半は「5バックのチームは厄介だなとも感じた」と話した松田浩監督の印象通りだった。選手交代で活性化を図ったことで、やや躍動感が生じたものの、前記の廣瀬、CKから再びクリスティアーノが頭で狙ったシュートはゴールネットを揺らせず。幾度か不運も重なり、最後の最後まで松本の堅陣を崩せないままタイムアップを迎えた。

勝利と共に松本は幾つかの手応えを掴んだ。まずは、厳しいトレーニングが実ったことが挙げられる。「後半の最後まで足を止めることなくやれたのは2戦目以降のプラスの材料として持ち帰りたい」と反町康治監督も選手を褒め称えた。次に、「チームに足りないところを補えるリーズナブルな選手」(反町監督)が違和感なく戦えたこと。北井は推進力を生み、ボランチの岩沼俊介はボールの循環を滑らかにした。ピンポイントの補強が奏功したと言えるだろう。今後もホームの地の利を生かし、身の丈にあったサッカーが継続出来れば、昨季の12位を上回る成績が残せるのではないだろうか。

栃木はJ1勢を撃破して臨んだ開幕戦でリーグ戦の難しさを痛感させられた。プレシーズンマッチの川崎Fのように攻撃力のあるチームに対しては、ほぼ満点に近い戦い方が出来るが、その一方で松本のようにミスを誘う戦い方をされると苦しいのが現状だ。課題を克服する手立てとして、「アタッキングサードで一人ひとりがダイナミックさを出さないといけない」(菅)。前線にタレントは揃っているが、互いが個性を引き出すシーンは限られた。つまり、連動性があまり見られず、化学反応は起こらなかった。それゆえに、相手に脅威を感じさせる攻撃が出来なかった。シュートにもパスにもクロスにも、もっとこだわりを持つ必要がある。また、安易なボールロストの回数を減らすことも求められる。守から攻に切り替わる際のボールの失い方に気を付けなければ、またしても痛い目に遭うだろう。せっかく質が高まったポゼッションを有効活用するためにも、ボールを奪った後の最初のパスに気を配り、高速カウンターを発動させるスイッチにしたい。

敗戦の悔しさを噛み締めながら三都主アレサンドロは言った。
「ここで下を向いたらいけない。次に向けていい準備をして札幌に勝って戻ってきたい」
開幕2連敗だけは是が非でも避けなければいけない。今は三都主の言葉を信じたい。

以上

2013.03.04 Reported by 大塚秀毅
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