いよいよ始まった2013年J2リーグ。快晴の長良川競技場には5,006人もの観客が詰めかけた。今季からユニフォームスポンサーが胸、背中、肩、パンツとすべて付き、装いも新たになった。そのユニフォームの初お披露目となった開幕戦。スポンサー、来場してくれたサポーターのためにも勝利をもぎ取りたい岐阜だったが、初陣はほろ苦いものとなってしまった。
前半は横浜FCが圧倒的なポゼッションで、ゲームの主導権を完全に掌握した。新加入の松下裕樹がアンカー気味のポジションを取り、MF中里崇宏と寺田紳一が流動的にボランチの位置に入りながら、左サイドハーフの内田智也、FW武岡優斗らと共に、有機的にポジションチェンジを繰り返して、機を見て前線に飛び出して行く。この高い流動性に松下の正確無比なミドルパス、ロングパスが絡み合って、岐阜の守備陣を混乱に陥れた。
「シュートブロックが多くなるのは分かっていた」とDFデズモンドが語った様に、岐阜はこれに対し、前からはめ込む守備ではなくしっかりとブロックを作って前半を耐え凌ぐ戦い方にした。デズモンドと関田寛士のCBコンビは前と対人に強く、はじくという面では機能した。だが、ショートパスで裏を取られるシーンもあり前半は狙い通りゼロで抑えることが出来たが後半への不安要素として残った。それと同時に「奪ってからの展開が遅い」と岐阜の選手が異口同音したように、昨年の最大の課題であった奪ってからの攻撃の質が乏しく、チャンスらしいチャンスが作れなかったことが、後半をさらに難しくしてしまった。
後半、行徳浩二監督は攻撃にテコ入れを施した。「前線の高い位置で起点を作りたかった」(行徳監督)と、トップ下の山崎正登に代え、DF野垣内俊を投入。野垣内を左サイドバックに、左サイドバックの尾泉大樹を左サイドハーフに、左サイドハーフだった美尾敦をトップ下にポジションチェンジ。だが、開始早々の48分、浮き球処理にもたつき、ペナルティーエリア内のファール。横浜FCにPKを献上してしまう。しかし、大久保哲哉の蹴ったシュートをGK時久省吾がビッグセーブを見せ、事なきを得た。これで息を吹き返した岐阜は、トップ下の美尾にボールが収まりだし、さらに尾泉の左足のキックも、より攻撃に直結できるようになったことで、岐阜の攻撃にバリエーションが生まれだした。だが、これが長続きしないのは、これまでの岐阜の課題と同じであった。
後半立ち上がりこそ、横浜FCの守備は混乱したが、ハーフタイムの「自分たちのペースのようで、これは相手ペース。集中力を欠かさないこと」という山口素弘監督の指示を受けたように、すぐに冷静さを取り戻し、松下と寺田というキープ力に長けた2人が中央に残ってボールを集約して全体のリズムを落ち着かせ、岐阜の攻め気を巧みにいなした。
そしてリズムを取り戻すと今度は山口監督が動く。62分に中里に代えMF野崎陽介を、74分にFW大久保に代えて、FW田原豊を投入。より縦に鋭くシンプルな攻撃を選択してきた。これがズバリ的中した。80分、中央のDF野上結貴のロングフィードを前線で田原が競り勝って、2列目から飛び出してきた野崎にスルーパス。野崎が冷静にGKとの1対1を制し、先制弾を叩きこんだ。そして86分、中央でこぼれ球を拾った野崎の絶妙なラストパスに抜け出した内田が、ゴールに突き刺して決定的な2点目。電光石火の2ゴールで、横浜FCが開幕戦初勝利を収めた。
「最後の最後で集中力が切れた」と行徳監督と語ったように、確かに2失点はミスがらみで集中力の欠如だった。しかし、90分のゲームマネジメントでも相手に上回れていたのは事実。この現状をしっかりと見据え、次の試合に向けてしっかりとマネジメントしていかないといけない。まだ始まったばかりだからこそ、今ここでしっかりと修正すべきところ、浸透させていくべきところを細かく見つめ直していかないと、後から取り返しのつかないことになる。岐阜は危機感を植え付けられた開幕戦として、意義あるものにしなければならない。
一方で新戦力が躍動し、内田が素晴らしい活躍を見せ、勝利を勝ち取った横浜FCは、さらにコンビネーションを高めて行ければ、もっと面白いチームになるかもしれない。
明暗は分かれたが、両チームともスタートは切った。この試合をどうプラスに持って行けるか。ここを基準に、新しいシーズンを見て行きたい。
以上
2013.03.04 Reported by 安藤隆人
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