今日の試合速報

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【J2:第1節 熊本 vs 鳥取】レポート:藤本主税のスーパーゴールで先制するも、初戦を飾れなかった熊本。対する鳥取は、隙を突いた2発で逆転し開幕戦初勝利(13.03.04)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
特別価格で販売された前売りチケットの効果もあって、1万を超える観客が集まった熊本のホームでの開幕戦。チームの新たな出発にふさわしい晴れの舞台で、クラブ史に残るゴールとして語り継がれそうな藤本主税の見事な得点が生まれた。しかしながら結果は逆転負け。試合後のミックスゾーンに現れた選手たちにいっさい笑顔はなく、むしろその表情は、はやくも崖っぷちに立たされたような厳しいものだった。

昨年のホーム開幕に続いて2年連続で鳥取から自身のシーズン初得点を挙げた藤本は、その場面について「あまり覚えていない」と話した一方、勝ちきれなかったことに関しては「ディフェンスだけではなくてチーム全体の問題なので、しっかり意見交換して、いい方向へ持っていきたい」と述べている。

開幕戦独特の高揚感もあってか、お互いに浮き足立った印象ではいった試合の立ち上がり。まずは1分、片山奨典が遠めからファーストシュートを放って緊張を解くが、勢いでは鳥取の方にわずかに分があった。久保裕一を1トップに置く4-1-4-1の布陣を採った鳥取は、「相手のやり方も分析していた」と小村徳男監督が振り返った通り、熊本のパスワークを封じるべくボールホルダーに対して2列目の選手たちが素早いアプローチをかけ、複数で囲んでパスコースを遮断、球際の勝負に持ち込んで優位に立つ。奪ったボールはいったんボランチの横竹翔などを経由してシンプルに前線へ。全てを納めきれていたわけではないものの、久保のキープ力や奥山泰裕の飛び出し、また武田英二郎と尾崎瑛一郎の両サイドバックの追い越しなど、サイドのスペースを生かしながらエリアを回復し、熊本のブロックを押し下げていった。

対する熊本はこの勢いに押され、サポートや判断が遅れぎみに。吉田靖監督が「最初に縦に急ぎすぎてしまい、FWとMFの間が空いてバランスが悪かった」と話したように、選手間の距離の悪さから足元へのパスが多くなってしまったことで、鳥取の守備にひっかかる場面を頻発。3人目が絡む形はなかなか作り出せず、ここまで取り組んできた連動性のある攻撃は鳴りをひそめた。だが横竹の両脇のスペースを使えるようになり始めた25分頃から、徐々に熊本のペースに。それでも前半はお互いに精度を欠き、どちらもゴールを割れないまま折り返した。

均衡が破れたのは58分だ。前半途中から左右に揺さぶりをかける形を作り出していた熊本は、右側のタッチライン沿いで得たフリーキックから齊藤和樹、福王忠世とつないで左へ展開。福王のふわりとした折り返しを一度はクリアされるが、そのこぼれ球を藤本がうまくコントロール。ゴール正面、約13mのあたりで藤本が選択した右足オーバーヘッドでのシュートが鳥取ゴールに突き刺さると、スタンドの興奮も頂点に達する。このまま勝ちきれれば、シーズンのスタートとしては間違いなく満点だったろう。だが単に“時間を使う”には、残り30分は長過ぎた。「もう1点取りにいく積極性を出さないといけなかった」(吉田監督)。

先制された鳥取の小村監督は、実信憲明に替えてブルーノを投入し、中盤の形も変えて前線を久保とブルーノの縦関係に近い2トップに変更。これによって熊本の最終ラインと中盤を前後にストレッチさせ、間にできたスペースを狙う形で押し込み始めると、さっそく65分に得点につながる。最後は久保の粘りから奪った同点ゴールだが、逆サイドに1枚残ったことで生じた熊本のDFラインのギャップを生かし、右のスペースを狙った中盤からの長いパスから生まれている。

同点に追いつかれた熊本は、北嶋秀朗に替えて75分にファビオがピッチへ。対する鳥取も途中出場のブルーノを下げて岡本達也、住田貴彦に替えて森英次郎と、たて続けに攻撃的なカードを切りつつ、最終ラインでは柳楽智和らを中心に熊本のパワープレーも跳ね返し続け、逆に88分、前がかりになった熊本の背後のスペースへカウンターから奥山が抜け出してシュート。ブロックに入った熊本DF筑城和人の足に触れたがゴールインして遂に鳥取が逆転。熊本はその後、高橋祐太郎を前線へ送り出すが実らず、押し込まれる時間をうまくしのいだ鳥取が開幕戦初勝利を飾った。

鳥取にとっては、昨シーズンの2節、同じ場所で喫した逆転負けのリベンジを果たすとともに、「今年はちょっと違うぞと思わせる」(奥山)だけの内容と結果を見せることができたと言える。精度の面ではまだ改善すべき点があるが、帰陣や切り替えの早さではチームとして統制の取れた戦いぶりを披露。個の能力でも久保のキープ力や奥山、住田らの飛び出しが効果的で、奥山が話したようにJ2の台風の目となる可能性は十分。次節アウェイの群馬戦で連勝を飾り、3節のホーム開幕戦につなげられるか注目だ。

一方の熊本は、プレシーズンからの課題だった攻撃時のリスクマネジメントを次の試合に向けて徹底させる必要がある。攻撃ではボールもよく動かして幅広い展開を見せ、相手より多いシュートを放った。しかしバイタルを崩せた回数は少なく、また自陣からの組み立てにおいてはテンポが単調で、リズムに変化をつけることができたとは言いがたい。もうひとつ、試合前の段階でもまだ着手できていないことを吉田監督も明かしていたが、スコアが動いた後の戦い方について、ピッチ内での意思統一をより深めたい。次節迎えるのは千葉。早い段階で課題が浮かび上がったことをポジティブに捉え、1週間でしっかり修正を施さなくてはならない。

以上

2013.03.04 Reported by 井芹貴志
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/21(日) 10:00 知られざる副審の日常とジャッジの裏側——Jリーグ プロフェッショナルレフェリー・西橋勲に密着