動いてきたのは大宮だった。
ベルデニック監督は前節の［4-4-2］ではなく[4-2-3-1]へシステムチェンジすることを決断。ノヴァコヴィッチを1トップに置き、中盤2列目に右からズラタン、渡邉大剛、チョ　ヨンチョルを置く本来とは異なる布陣でこの試合に臨んだ。
対する磐田は先発メンバー、布陣共に前節と同じ。大宮のラインナップに「（大宮が）自分たちのよさを消しながらも来てくれたということは僕たちを警戒してくれている証拠」（森下仁志監督）と感じつつも、自分たちのスタイルを継続。2トップに前田遼一と金園英学、2列目に山田大記と小林裕紀を置く新布陣［3-5-2］で今季初勝利を狙った。

序盤から主導権を握ったのはホーム開幕戦となった磐田。試合開始直後に右サイドから小林裕紀、さらに左サイドから伊野波雅彦がそれぞれ攻撃参加からクロスを供給。大宮に弾き返されたが、ヤマハに集まったサックスブルーサポーターを早速沸かせた。
一方、守備からゲームに入ることになった大宮だが、慌てずに対応し、決定機を作る。12分、渡邉大剛のロングパスを敵陣右サイドで受けたズラタンが右足でクロス。ファーサイドで待ち構えたノヴァコヴィッチがバー直撃のヘディングシュートを放ち、磐田ゴールを脅かした。
ただし、大宮が前半に放ったシュートはこれを含め2本のみ。守備に割く時間が長く、失点こそしなかったものの、磐田の攻撃を掴みきることはできなかった。22分にはゴール前の混戦から前田遼一と北野貴之が1対1となり37分には金園英学にポスト直撃のシュートを打たれたが、いずれも北野がピンチを防ぎ、0-0で前半を折り返した。

前半の戦況を見たベルデニック監督は「守備を改善し、かつ攻撃を目指したが、なかなか功を奏しなかった」と[4-2-3-1]から本来の[4-4-2]へシステムチェンジ。攻守のバランスを整えて後半に臨み、結果的にこの采配が吉と出た。「カウンターの時に迷わず前に持って行ったり、スペースにパスしたりという部分で後半はうまくできたと思う」と語るのはチョ　ヨンチョル。57分には青木拓矢、58分にはズラタンが左サイドのスペースを突き、クロスを供給。決勝点が生まれたのはこのズラタンのクロスで獲得したCKからだった。
渡邉大剛のキックを菊地光将が頭で合わせると、これがゴール前にいた磐田・金園英学に当たり、ゴールへ吸い込まれた。「（渡邉）大剛さんからいいボールが来たので合わせるだけだった」（同選手）。ゴール後は喜びを爆発させた。

1点を追い駆ける磐田は69分に松浦拓弥を投入。さらに78分にはエース・前田遼一を下げて山崎亮平、86分には阿部吉朗を投入して反撃を仕掛けたが、焦りが出た。森下仁志監督は「最後の部分で（ボールを）もっと動かしてもよかったと思う」と唇を噛みしめる。最終ラインの中央に片岡洋介を投入し、5バック気味に守りを固める大宮から最後までゴールを奪えず、今季初黒星を喫することになった。
一方、大宮は「早い段階で勝点3を取れてよかった」（北野貴之）と粘り強く掴んだ今季初白星に手応えを掴む。これでリーグ戦では昨季より昨季13戦負けなし。ベルデニック監督も「まだまだ足りない部分はある」としながらも、「今日の勝利には満足しているし、自分たちの可能性を示せたゲームだったと感じている」と前向きにゲームを総括した。

以上

2013.03.10 Reported by 南間健治