「明日のゲームは、あのゲーム（Ｊ１第２節・Ｆ東京戦）とは全く違うチームがグラウンドの中で戦うと思ってください」。前日会見で、ネルシーニョ監督がそう語った通りだった。リーグ戦完敗の悪い流れをしっかりと断ち切り、柏は素晴らしい内容でＡＦＣチャンピオンズリーグ２連勝を飾った。

スタメンにはキム チャンス、鈴木大輔、茨田陽生の名がなく、代わりに藤田優人、谷口博之、山中亮輔が名を連ねた。ジョルジ ワグネルもＦ東京戦に続き欠場し、狩野健太が中盤左サイドに入る。
対するセントラルコーストもＦＷダニエル マクブリーンをはじめ、ＤＦジョシュア ローズ、ＦＷマイル ステリョフスキら主力３選手が週末のリーグ戦に備えて今回は来日しておらず、司令塔のマイケル マクグリンチーもベンチスタートと、柏にとってはスカウティングとは異なるメンバーとの対峙。しかもこの日はまるで台風のような強い風が吹き荒れるなど、あらゆる点において難しい条件が揃っていた。

８分、警戒していたセットプレーからパトリック ズワンズワイクのパワフルなヘッドが突き刺さり、セントラルコーストに先制を許す。ただ、「選手が柔軟に対応して、落ち着いて自分たちのやるべきことを確認しながらゲームができた」（大谷秀和）という柏は、次第にペースを握っていく。セントラルコーストは、オーストラリアのチームにしてはハイボールを多用せず、パスをつないでいくスタイルだ。それについて大谷は「相手の中盤でのパスミスが少なくはないという情報は入っていた」と話している。
２１分、大谷のインターセプトがセントラルコーストのコンパクトな守備ブロックに穴を空けた。クレオのポストプレー、大谷のスルーパス、テンポの良いダイレクトパスで相手の背後を突き、最後はレアンドロ ドミンゲスがＧＫの足元を射抜く同点弾を流し込む。

守備面も安定していた。工藤壮人、クレオ、レアンドロ、狩野ら、前からのプレスは連動、中盤ではセントラルコーストのパスの出どころであるジョン ハッチソン、アンソニー カセレスを大谷と谷口が封じる。近藤直也と増嶋竜也のセンターバックコンビも強風にあおられるボールを確実に弾き返しながら、前線のミッチェル デューク、アンドリアーノ ペレグリーノに高い位置でボールを収まらせなかったことで「相手の狙った形は作らせなかった」（菅野孝憲）。リーグ戦で３失点を喫した守備は、統率のとれたコンパクトな状態を保ち、見事に立て直されていた。

攻撃面では、これまでなかなか出場機会を得られていなかった藤田、狩野も躍動した。前半から藤田とレアンドロの連携で何度か右サイドを突破していたことを受けて、狩野は「後半は中に入ろうと思っていた」と、右サイドで攻撃の形を作った時にはゴール前で勝負を仕掛ける意識を持っていた。工藤の折り返しをレアンドロが受け、その大外から藤田がオーバーラップを仕掛ける。完全にセントラルコーストの守備陣形をサイドに釣り出すと、ゴール前では２対１の数的優位な状況に。レアンドロのクロスをニアサイドでクレオがスルー、流れてきたボールを狩野が左足で詰め、６７分に逆転に成功する。

８８分の追加点もサイドチェンジで揺さぶりをかけ、完全にセントラルコーストの守備を崩す。左サイドで狩野が落とすと、クレオが逆サイドのレアンドロへ展開。右サイドを駆け上がった藤田のフワリと浮かしたクロスから、レアンドロの鮮やかな左足ハーフボレーが決まった。直後にはＰＫを献上したが、「３−１だったので余裕を持ってできた。（キッカーの）データも持っていた」という菅野がマクグリンチーのキックを足でストップ。点差を縮められることなく、３−１で勝ち切った。

会心の勝利でグループＨの首位を堅持し、さらにリーグ戦完敗の悪い流れを断ち切った上に、ケガ人多発といったアクシデントも代わりに出場した選手が活躍することで、チームとして“穴”を感じさせずに選手層の厚さを見せつけた。柏が見据える『前人未到の国内外２冠』のためには、戦力の底上げは絶対不可欠である。試合後、２得点１アシストで勝利に大きく貢献した“キング”レアンドロは自信に満ちた表情でこう語った。

「レイソルは結束したひとつのグループ。誰が出ても負けないという強みがある」

以上

2013.03.14 Reported by 鈴木潤