『いつ決めるのか? 今でしょ』
そう言わんばかりのマルキーニョスの決定力一発で勝負を決め、横浜F・マリノスが神奈川ダービーを制した。
その決勝弾は83分、「スローインの前に(中村)俊さんと入念に話し合っていた」という小林祐三の素早いスローイングを足元で受けた中村俊輔は、すかさず前を向く。すると、対面の相手DFを抜き切らず、半歩ほど左に外して「ここでクロスを上げないだろう」(中村)というタイミングで、左足のレーザービームクロスを送る。このキックはマルキーニョスを狙ったものではなく、本人曰く「アバウトに蹴った」そうだが、背番号18が飛び、ニアでバチン! 力強く頭で合わせてゴールした。
「マルキーニョスは首だけでシュートへ持っていける」
独特の表現で中村は称えたが、確かにマルキーニョスのあの太い首が生む、腕力ならぬ“首力”があったからこそ、高速クロスに対応し、ねじ込めたはず。ベテラン役者2人だからこそ生み出せた、高次元の決勝弾だった。
それ以外の横浜FMの決定機は、J1初出場を飾ったファビオが80分に放ったヘッド1回のみ。前後半合わせてボール保持率では相手を上回っていた感があったが、攻めきれず、ジリジリ我慢するような展開が続いた。その要因は「“中盤で奪い合う”みたいなプレッシャーの掛けがいのある試合」(中町公祐)だったためではないか。お互いコンパクトな陣形を保ち、ピッチ中央に人が密集していたため、中盤でのコンタクトが激しいボールの奪い合いに終始した。そのため、両チームとも好機を演出するのに苦労したように見えた。
その閉塞感を打破しようと先に動いたのは、川崎フロンターレの方だった。後半開始からダブルボランチからワンボランチに変更。アンカーを稲本潤一が務め、交代出場した森谷賢太郎が、大久保嘉人と共にインサイドハーフに入る。
古巣との初対決でピッチに立った森谷。ボールを持つたびに大ブーイングを全身に浴びたが、本人は意に介さず。47分にはレナトの左クロスをファーで受けた小林悠の折り返しを、ダイレクトシュート。アディショナルタイムにもドリブルからの右45度シュートでGK榎本哲也を強襲。どちらもゴールならず、天を仰いで悔しがる姿から、この一戦への思いがにじんでいた。また、森谷のキープ力とシンプルなパスがリズムを刻み、前半にはなかった攻撃の“流れ”を生むきっかけになっていたように思う。ただし、それでも川崎Fらしい軽快なパスワークはあまり見られず、外国籍選手と期待の大久保とのコンビネーションによる崩しも皆無に等しかった。
開幕からリーグ戦を含め、1分3敗。立ちはだかる1勝への壁をどう崩すのか。風間八宏監督の手腕が問われそうだ。
逆に今季公式戦4連勝の横浜FM。今回は日本代表の栗原勇蔵の代役を、新戦力のファビオが務めた。ファーストプレーでは、プレスをかけてきた大久保を柔らかいタッチで軽くいなし、左の齋藤学へ正確にロングフィード。実にクールに及第点の出来を見せ、この日は守備のニューヒローとなった。次は攻撃の方で、中村とマルキーニョスの存在感を上回れるようなニューヒーローの出現を求む。
以上
2013.03.21 Reported by 小林智明(インサイド)















