余りにも短かく感じた90分の試合だった。アディショナルタイムの4分さえも、ほんの数秒にしか感じない程、再会の時間はあっという間に過ぎていった。
因縁や遺恨など様々な言われ方をした試合だったが、ピッチで戦う選手たち、純粋にチームの勝利を願った選手たちの姿を見た時、そんな感情は何処へやら……。見ている我々も、選手のプレーとボールだけに集中して、サッカーが持つ楽しさと勝負ごとの激しさを充分に堪能させてもらった。
新生・北九州と、昨季まで北九州に在籍していた選手が多く移籍した東京Vの対戦。北九州は、第2節の岡山戦からスタメンに変更はなし。東京Vの三浦泰年監督は、前節から常盤聡をスタメン復帰させ、高原直泰との2トップで挑んで来た。
「前節の徳島戦と同様、試合の入り方が大事」と、柱谷幸一監督が話していたように、ホーム初勝利を目指して北九州は試合開始のホイッスルと同時に、東京Vゴールに襲いかかった。開幕戦から攻撃面ではなかなか息の合ったところが見せられなかった北九州だが、この日も2トップを組んだ柿本健太とキム ドンフィに引っ張られるように、ゆっくりとした中盤でのパス回しから素早く相手DFの背後を狙ったカウンターや、サイドから息の合ったコンビプレーでの崩しなどでゴールを狙い続けた。しかし、最後のところではしっかり体を寄せる東京VのDFの対応に阻まれ、昨季は全試合で北九州のゴールマウスを守ったGK佐藤優也を脅かすまでには至らなかった。
それでも23分、前線でタメを作ったキム ドンフィが新井純平にボールを預けると、新井は走り込んだ内藤洋平に絶妙なスルーパス。その折り返しをゴール前に走り込んだキム ドンフィが合わせて先制。さすがの東京V・GK佐藤もどうすることもできず、シュートが決まるのを呆然と眺めるしかなかった。
さらに追加点を奪って試合を優勢に進めたかった北九州。しかし、東京Vも「良い入りではなかったが、自分たちのしっかりした修正能力と対応力を持って落ち着いてサッカーをやることができた(三浦監督)」の言葉通り、先に失点したことで逆に落ち着いたのか、後方からしっかりボールを繋いで自分達のリズムを取り戻す。徐々にボールポゼッションも上がり、攻撃に人数をかけられるようになって、北九州にプレッシャーを掛けていった。
そして37分、左サイドからのクロスに対して、常盤が見事な胸トラップから素早く左足を振り抜きシュート。一度は冨士祐樹が体を張ってブロックするが、そのこぼれ球に素早く反応したのは新たな戦いの場をJ2に求めた高原直泰だった。磐田でもドイツでも、そして日本代表でも、数多くのゴールを奪って来た嗅覚は、まさに超一流のストライカー。右足から放たれたシュートは豪快にゴールネットを揺らし、高原の移籍後初ゴールで、東京Vは同点に追いついた。
ホームのファン・サポーターに、今季初勝利を贈りたかった柱谷監督は、早めの交代で流れを引き寄せようとした。しかし、連戦の疲れが出始めた後半は、東京Vの執拗なサイドからのクロスの対応に追われ、苦しい時間帯が続いた。それでも、ホームのサポーターから後押しを受けた選手たちは、試合終了のホイッスルがなるまで懸命に走り続け、ゴールを許さなかった。アディショナルタイムには、松本陽介のシュートがバーに弾かれ、その瞬間、本城には大きなため息と最後の力を振り絞った松本に対して歓声が起こった。
いろいろな意味で注目の一戦となったが、1−1の結果以上に内容のあるすばらしい試合だった。試合直後には悔しそうな表情を見せた両チームの選手たちも、しばらくして取材エリアで顔を合わせた時にはお互いの力を認め合う、晴れ晴れしい笑顔を見せており、お互いに声を掛け合う姿はまるで同窓会のようだった。
東京Vをの再戦は第38節。その時、両クラブがどの順位にいるかで心境も変わってくるかもしれない。しかし、新しい挑戦の場を求めて東京Vへと旅立った彼らを、これからも見守っていきたいと思えた1日だった。
以上
2013.03.21 Reported by 坂本真















