前節、北九州と勝点１ずつを分けあったことで、3試合連続引き分け中の東京Ｖ。「この溜まった３つの引き分けを『良い引き分けだった』と、言えるように次に臨まないといけない。『苦しい中、耐えて勝点1をとってきたことが効いてきた』というのが、常に次（の試合）に答えがあるものだと思う。だから、引き分けの次の試合は非常に大事」だと、三浦泰年監督は力説する。
開幕戦の黒星とあわせて、未だ白星を挙げられていないだけに、今度こそ、今度こそホームで初勝利を手にしたいところだ。

ただ、結果こそ出ていないが、この4試合を振り返ると「攻撃の形や守備の連携は1試合ごとに良くなっている」と、鈴木惇はしっかりとした手応えも感じていると話す。特に前節、流れから高原直泰のゴールが生まれたことは、チームにとって大きな収穫となったことは間違いない。「自分たちのリズムで試合を運べる時間が少しずつ長くなっている」とも鈴木。あとは、その時間帯をさらに伸ばし、良い流れの時間帯にしっかりと得点を奪えるかがテーマとなりそうだ。

「自分たちのリズム」を生むためにポイントとなりそうなのが、森勇介の存在ではないだろうか。大きくメンバーや監督、サッカーが変わっても、東京Ｖの攻撃スイッチは森にボールが入ったところでオンになる部分では変わりはない。そのボタンをいかに高い位置で押すことができるかが鍵となるだろう。北九州戦後の練習では3バック試しており、森の攻撃力をより活かすことも大きな狙いのひとつとみられる。
また、前節の反省として「練習ではできているのに、試合ではあまりボールに関わりたがっていないように感じる選手がいる」点を三浦監督は挙げる。そこで、積極的に自分からボールを受けにいき、そこから自分にもチーム全体にもリズムを生み出すことのできる西紀寛をボランチに入れて試すなど、いかに主導権を長い時間握れるかの最善策を模索中のようだ。
もちろん、いずれの布陣も選手起用も現時点ではあくまでオプションのひとつだが、「システムは、僕の中ではあくまで“攻撃をよりスムーズにするための人の配置”」だと語る指揮官が、どのような選択をしてくるのかは注目だ。

熊本は前節、優勝候補の筆頭とされるG大阪に対し2-2。もちろん、2失点は今節を戦う上で改善しなければならない大きな反省点だが、内容自体は熊本が主導権を握り、先に2点をリードされながらも決して下を向かず、引き分けに持ち込む粘り強さをみせたことは収穫だったはずだ。それにはやはり、前々節vs松本山雅戦での勝利が好影響をもたらしているのではないだろうか。言うまでもなく、新監督を迎えた中での“初勝利”は、選手にも吉田靖監督自身にも大きな自信をもたらせてくれたはずである。また、松本戦で挙げた2得点どちらもが、自分たちが意図するサイドからの形だったことも手応えを深めたに違いない。そのサイドの有効利用こそが、今季熊本が目指すスタイルと言えそうだ。
吉田監督は「幅とテンポ」を大事にしているという。その特徴として、昨季まではあまりみられなかった大きなサイドチェンジからの攻撃が見られるようになった。ピッチを広く使いながら、藤本主税、大迫希、仲間隼斗、齊藤和樹そして北嶋秀朗ら個性豊かで能力高い攻撃陣が絡んでゴールを目指す。また、やや距離がありながらも、コースを見つけて可能性があればどんどんシュートを放つ全体的な積極性もまた、今季チームの魅力と言えるのではないだろうか。
前節のG大阪戦後の記者会見での「基本的には、ガンバがということではなくて、我々の熊本のサッカーをやり通すと、それがガンバの力を封じるというふうに僕は思ってます」という吉田監督のコメントは、この試合にも言えることだろう。目指すのは、自分たちのサッカーということであることは間違いない。
「5年でJ１」を掲げた6年目。改めてJ１を目指していくなかで、前節以上の吉田イズムが披露できるか。その可否が勝敗を分けるだろう。

以上

2013.03.23 Reported by 上岡真里江