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【ヤマザキナビスコカップ 甲府 vs 横浜FM】レポート:強さは本物・横浜FMがアウェイで甲府を退けて5連勝。甲府は謙虚に受け止めるけれど方向性に対する自信は揺らがない(13.03.24)

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悪い内容でも勝つ強いチームが、いい内容で安定感を出して甲府に勝ったのがヤマザキナビスコカップ第2節の横浜FM。開始3分の中村俊輔が蹴るFKに中澤佑二が頭で合わせてサイドネットを揺らしたときに記者席で「ヒヤッ」としたが、その後のビルドアップでも甲府は横浜FMの出足のいい守備に苦労していた。それでも「悪くはない」いつもの甲府らしさは少なくとも発揮できていたし、初先発の堀米勇輝は20分に左サイドのスペースに入っていた羽生直剛を活かす正確なパスを通して決定機を作り出しており、“決定機を増やしてゴールに繋げる”というチームの意志は見せていた。ただ、23分に左サイドの攻防で福田健介が齋藤学にワンタッチでかわされて入れられたクロスをファーで兵藤慎剛に決められると、そのあとはガムシャラにボールを奪いに行って後手を踏まされるシーンが多くなった。

試合前日、城福浩監督は先制点を許していることを課題として挙げたが、この課題は開始23分で現実となってしまい、勝つには2点が必要な状況になった。ここまで公式戦4試合の総ゴール数が3点で、決めたのはウーゴだけという――現時点では残念ながら――貧打の甲府。羽生と堀米は合っているけれど、金子昌広やウーゴも含めた前線という意味では各々のストロングポイントが充分に活かせていない印象。(2点は重いなぁ…)と、当然勝つ気で見ていたが、大挙して来てくれたゴール裏の横浜FMサポーターは、パスが通る度に「オーィ、オーィ、オーィ、オーィ」と機嫌よく楽しんでいるくらいだからピッチの内容も合格点なんだろう。なんていっても34歳の中村が、サッカー選手人生の4段目か5段目かのロケットに点火した感じで今でも右肩上がりなのが素晴らしかった。巧さ+フィジカルの強さが強調された感じで、甲府の若手選手が中学生の頃に雑誌やテレビで見て憧れたスターを目の前にしてリスペクトしすぎな対応だったように思うくらい。もっとガツガツネチネチ行ってイライラさせるくらいでもよかったのに――明らかなファールだったのでよくないが――彼のことをよく知らないウーゴが19分にイエローを貰った以外では存在の大きさに比べてマークは不十分だった。
 
リードされているにもかかわらず45分を短いと感じた前半。ロッカーに戻ってくるときの甲府の選手たちの口数が少ないように感じたのは修正点を絞りきれない内容だったからではないだろうか。ただ、それでも1点差。まだまだ何とかできる得点差だということが甲府の希望だった。後半は堀米に替えてスピードとキレのあるドリブルが武器の柏好文を投入し、開始直後にカウンターから柏がペナルティエリア内でドゥトラと1対1の場面でシュートを打つが1本目は足に当てられ、そのこぼれを打った2本目も足に当てられ、J1のサイドバックの凄い人のレベルを感じさせられた。ただ、柏はその直後にもミドルシュートを打って攻撃的な姿勢を見せたのだが、49分に兵藤にフリーでシュートを打たれた辺りから雲行きが怪しくなり、52分のCK(右から)では中村が蹴ったゴールに向かって巻いてくるボールにニアで中町公祐が頭で合わせて追加点。甲府は3点取らないと勝てない重い重いゴールを決められてしまう。

甲府は58分にウーゴを下げて平本一樹を投入して前線からボールを奪うパワーを強化。目論見通りボールを奪う回数は増えるのだが、奪ったボールを奪い返されることが多すぎた。金子がもっと仕掛けて勝負できると期待していたが、横浜FMの選手には抑えられてしまう。横浜FMとは宮崎キャンプでTM(30×4)を戦っているのだが、そのときも金子は抑えられており、横浜FMの守備には金子が成長するためのヒントがありそうだ。こんな悠長なことを言っていられない0-2だったが、結局後半の甲府のシュートは開始直後の柏の2発だけ(公式記録では)。ただ、4分間のアディショナルタイムを含めた後半の終盤10〜15分間は――カウントされなかったようだけれど――平本→河本明人と繋いだ決定機もあったし守備のバランスも戦う姿勢も改善できていた。横浜FMの交代選手が少し落ちたのかどうかは分からないが終盤の内容は次節(アウェイ川崎F戦)に向けて自信にも繋がるはず。

主導権を取られる時間も長く、0-2で敗れた結果は残念だが、「次からは守備的に戦った方がいいですか?」と言う話にもなるかもしれない。しかし、多くのファン・サポーターも選手も主導権を少しでも長く取って戦うサッカーを志向することを2011年に再確認しているのだから、今の方向性でレベルアップを図るだけ。(全員とは言わないが)選手にはより高いレベルアップや自覚と危機感を持って貰わないといけないだろうが、城福監督を信じて努力し続けることは同じ。首位のチームに1試合圧倒されたくらいで揺らぐほど、甲府の歴史はヤワではないはずだ。

横浜FMのことをいつも気にかけているわけではないので驚いたのだが、ファーストディフェンダーが全く手を抜かずにボールにアプローチを掛け続ける姿勢が凄かった。齋藤は「去年からやっていることで、去年はガムシャラに行って疲れて最後まで体力が持たないこともありました。今は試合の流れやボールが(自分がプレッシャーに行くべき相手のところに)来る過程を見て“行く・行かない”の判断をしている。川崎Fや甲府のようにボールを回そうとするチームにはハマりやすいと思います」と、成熟の答え。中町は、「いろいろな状況がありますが、今日のピッチはボールが走りにくかったし、風もあった。マリノスがコンパクトにできているからこそプレッシャーに行きやすい。(甲府のように)ボールを回そうとするチームほどコンパクトなチームにはやりにくさを感じると思う。攻撃ではマリノスは選手の距離感がいいから、ボールを持っている選手は常に2つ以上の選択肢がある」と自信を深めた感じの答え。甲府の選手は選択肢が1つしかない場面が少なくなく、それ故に横浜FMのセカンドディフェンダーが効果的なアプローチができたのかも知れない。横浜FMはマルキーニョスが次節のF東京戦でも不在だが、どこからでも点が取れる今の内容なら見応え充分なので日産スタジアムに大勢のサポーターが来て後押ししてくれるだろう。甲府は未勝利対決となるアウェイ川崎F戦で、横浜FM戦を糧にして勝利をもぎ取るだけ。結婚式で歌われる長渕剛の名曲のタイトルと同じ発音で意味が違う言葉が頭に浮かぶ試合だったが、これで謙虚に努力し続ける姿勢を強調できるのなら問題なし。リーグ戦に切り替えて、次は川崎Fに挑むだけ。

以上

2013.03.24 Reported by 松尾潤
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