27日に桜の満開予想が出ている大分で、アウェイの桜色のチームが花開いた。試合開始45秒、自陣から扇原貴宏の長いフィードに抜けた南野拓実が、高木和道がバウンド処理にもたついたボールをカットし、そのまま流し込み先制。マテルヘッドコーチが「今日はいつも以上に戦術的要素の強い試合だった」と振り返ったように、しっかり守備ブロックをつくり、そこから素早く攻撃に移り、縦を意識した厚い攻撃でゴールに迫った。立ち上がりから、ラインを高く設定する大分の最終ラインの後ろの広大なスペースを突こうとするC大阪攻撃陣の狙いは明らかだった。
これまでの巧さに、力強さが加わり攻撃力は増すばかり。前線の若きタレントの質の高い動きに呼応するように、中盤と最終ラインにも攻撃の連動性が生まれた。2点目は扇原の柿谷曜一朗へのタテパスがスイッチとなり、エジノ、南野とつなぎ、ふたたびエジノが受け、ゴール前の山口螢が合わせた。パスとドリブルを絡めた多彩な攻撃は、相手に全くボールを触れさせずにネットを揺らす。自分たちの戦い方を信じ続け、勝負どころを見つける力。強豪チームが持つ勝者のメンタリティを、今のC大阪は身につけている。
今季、公式戦4試合連続で先制していた大分は、厳しい状況からスタートとなった。これまでポゼッションから攻撃を展開してきた相手が、長いボールを多用してきたことに対応できずにいた。ただ、時間の経過とともに落ち着きを取り戻し、マイボールになった際はしっかりボールを動かし、ポゼッションの時間を高めた。
ハーフタイム、田坂和昭監督は改めて長いボールを蹴らせないように、相手へのプレッシャーを強調したという。実際にそのプレッシャーの掛け合いで相手を上回り、「後半は失点の場面を除けば満足」(田坂監督)のいく内容だった。
収穫はもうひとつある。新戦力がチームにフィットしたことだ。19日に加入が発表されたばかりのロドリゴ マンシャを先発起用。「頭の回転が早く、(先発で)いけると感じた。賭けではないが本番で使う方がいい」と判断してのこと。実際にピッチでは何の違和感もなく、チームにとけ込んでいた。田坂監督は「我々のコンセプトを理解し、攻守でいいプレーをしてくれた。何も悪いところが見つからなかった」と評価し、「かなりの戦力になるという印象を受けた」と賛辞を贈った。
さらに新加入の辻尾真二も猛アピール。55分から右WBで途中出場すると、サイドラインを勇猛果敢に突破しチャンスを作った。同点ゴールは辻尾の積極的な仕掛けからはじまり、木村祐志のクロスからのこぼれ球を丸谷拓也が拾い、ゴールに突き刺した。
今季、公式戦5試合を終え未勝利のチームは新しい力が加わり、歩みは遅いが一歩一歩前に進んでいる。
過去に両クラブの選手が行き来したチーム同士の対戦は、実力通りの結果となったが、敗戦したチームにアウェイのサポーターは心憎いエールを送っていた。これまでC大阪に在籍したことのある田坂監督をはじめ、森島康仁、小松塁、丹野研太、阪田章裕、児玉新の名前を記した横断幕に「がんばってね!」と書き込み、試合後に掲げた。選手の移籍はクラブを愛するサポーターにとってつらく、悲しいものではあるが、チームを離れても選手を応援するセレッソ・サポーターの愛を感じた試合でもあった。
以上
2013.03.24 Reported by 柚野真也













