4−1。シュート数は神戸が24本、群馬はわずか4本。数字から見ても、神戸が圧倒的な強さを見せつけたと言っていい。だが、試合後の会見で神戸の安達亮監督は「1失点も含めて、非常に悔しいゲーム」と眉間に皺を寄せた。
前半の立ち上がりは群馬が中盤でボールを回し、有効なサイドチェンジを入れながらゴールをうかがった。だが、前節の京都戦で4失点を喫した神戸の守備陣も不用意にボールホルダーに飛び込まず、群馬に決定機を作らせない。そして徐々に神戸がポゼッションを高めていく展開に。この試合のファーストシュートがマジーニョだったことを考えても、神戸の試合の入り方は悪くなかった。
だが、前半9分。先制したのは群馬だった。神戸・奥井諒のスローインからのリスタートの状況で、群馬は高い位置でプレスをかけてボールを奪うと、小柳達司が前にいた加藤弘堅へとつなぐ。この早い切り替えに神戸DFの対応が遅れたスキを突き、加藤がミドルシュートを放った。一度は神戸DFに跳ね返されたものの、こぼれ球は群馬の青木孝太の元へ。今度は青木がミドルシュートを放つと、神戸の岩波拓也の身体に当たって球速が変わり、GK山本海人の頭上を抜けてゴールネットを揺らした。
神戸にとっては不運な失点だった。だが、安達監督は「(あの失点は)あってはならない状況でした。マイボールのスローインでしたし、前から奪われて最初の加藤弘堅のシュートもセンターバックの顔が逃げているし、その後の青木のシュートをもう1人のセンターバックが逃げている。それじゃ点を取られる」と振り返る。前節の京都戦に続き、2試合連続で先制点を奪われる展開に苦言を呈した。
その後は、群馬の秋葉忠宏監督が「高校の先輩でもある安達監督に、してやられたなというのが率直な感想です」と会見で語ったように、神戸が目を覚ました。失点後すぐの前半10分には、マジーニョのコーナーキックを田代有三が頭で合わせて1点を返すと、前半32分にはポポがハーフウェイラインより少し前から豪快な一発をお見舞いして逆転。群馬の夛田凌輔が「前半の早い段階で点をとって、このまま行けるかなと思った時にコーナーキックから失点。行こうと思ったところでちょうど失点してしまった。それで勢いに乗れなかったかなと思う」と振り返るように、神戸にとっては失点後すぐの田代の同点ゴールに救われる形となった。
後半も神戸がうまくゲームをコントロールし、67分には相馬崇人の左サイドの崩しから最後はマジーニョが決めて3−1に。85分には群馬のGK内藤圭佑のフィードミスを奪った小川慶治朗がそのまま持ち込んでゴールを決め、勝利を確実なものにした。
前節の横浜FC戦で今季初白星を飾った群馬にとっては、先制に成功しただけに苦い敗戦となったが、「キャンプから準備してきた」(秋葉監督)3バックシステムに戻し、自分たちの目指すスタイルを貫いての敗戦は、今後につながる一戦だったと言えるだろう。
神戸は前節の京都戦で大敗した悪い流れを断ち切る快勝と言っていい。とはいえ、この勝利と引き換えに、神戸は“エステバンの負傷”という大きな代償を支払う結果になった。安達監督は怒りを抑えながら、こう話す。
「(前半33分頃、エステバンのゴールがファウルの判定で無効になったシーンを振り返り)3点目が取れたと思ったんですけれどゴールが取り消されました。ゲームを左右する大きな1点だったんですが、仕方ないといえば仕方ないですが、これで5試合で2得点取り消されていることを思うと若干、自分の気持ちを抑えられないことも出てきます。(後半73分前後、エステバンが右太腿裏の痛みで交代したことを受け)まだエステバンがどれくらいのケガかは分かりませんが、試合の展開が前半で3−1になっていれば、もしかしたらハーフタイムでエステバンを代えるというのも頭の中にありました。(前節から中3日の連戦の中)それを引っ張ったおかげでケガをしたかもしれません。(中略)シーズン前からいい調整ができて、スタッフに助けられてここまで来ました。それっぽいものを含め、筋肉系のケガ人を出したのは初めて。それが本当に悔しい」。
エステバンの負傷具合はまだ不明だ。だが、開幕ダッシュを支えたボランチが離脱するとなると、大きな痛手になるのは間違いない。会見で安達監督がナーバスになっていた理由も、エステバンの負傷によるやり場のない怒りからかも知れない。神戸にとっては痛みを伴った快勝となった。
以上
2013.03.25 Reported by 白井邦彦













