試合後の監督会見の席、柱谷哲二監督は冷静に話そうとはしているものの、その口調の端々から怒りがにじみ出ていた。「前半からファイトが足りず、スカスカやられた情けないゲーム。本当にサポーター、来ていただいた方に謝らないといけない前半でした。後半は少し持ち直したのですが、前半の緩さがすべてを象徴したゲームだったと思います。とても情けないし、恥ずかしい」。それだけ柱谷監督が言うのも、これが1度目ではないからである。第3節・鳥取戦に続く、“闘志なき敗戦”だったことを指揮官は嘆いた。「俺の一番嫌いなゲームを、彼らは2回もやりました。鳥取戦に続いて今日。僕が一番大事にしている『戦う』『ファイトする』ことに対して、まだ緩い選手がいる。その辺が自分的にとても悲しい」。
特に前半は柱谷体制3年目のワーストと言っていい内容であった。運動量や切り替え、1対1でことごとく相手より下回った。前節・岡山戦ではそれらで相手を圧倒していただけに、「できなかった」のではなく、「やらなかった」と考えた方がいいだろう。水戸のメンタルの弱さが際立った45分間であった。
序盤から水戸のプレスは緩く、愛媛に自由にボールを展開させてしまった。最も「緩さ」が出たのは失点場面であった。愛媛が左サイドからスローイン。その瞬間、橋本晃司の切り替えが遅れ、中盤のスペースを相手に突かれてしまう。そこから右に展開され、折り返しを水戸DFよりも早くゴール前に飛び込んだ赤井秀一に合わされてしまった。3か所で後手に回っては失点するのは当然のこと。必然の失点であった。その直後にも愛媛のカウンターに対して、中盤の選手の戻りが遅れ、右サイドからのクロスを河原和寿にフリーで合わされる場面があった。これはシュートがGKの正面に飛んだため、水戸は命拾いをしたが、前半だけで2、3失点してもおかしくない展開であった。
なんとか1失点でしのぎ、後半巻き返しを図りたかった水戸は56分に鈴木隆行を、64分には負傷明けの西岡謙太をピッチに送り込む。前線では鈴木隆が、中盤では西岡が期待通り起点となって攻め込んだものの、愛媛の組織的な守備を崩すことができない。サイドから崩してもクロスの質を欠き、ゴールの予感すら漂わない展開が続いた。逆にカウンターとセットプレーからチャンスを作り出した愛媛の方がゴールの予感を漂わせていた。結局、ゴールは生まれることなく、後半は終了。愛媛は開幕戦以来の勝利を、水戸はホームで14試合ぶりの敗戦を喫した。
愛媛が勝つべくして勝った試合であった。1週間で3試合目という過密日程での試合であったが、1人1人がハードワークを惜しまず、運動量と動きの質で水戸を圧倒した。決勝ゴールを決めた赤井秀一や前線で体を張って起点となった河原和寿といった新たにチャンスを与えられた選手が活躍したことも大きな収穫。「これからさらに競争が激しくなる。この勝利はただの1勝じゃない。もう一つに行くための大きな勝点3だと思っています」と石丸清隆監督は充実した表情を見せた。この1勝をきっかけに上昇気流に乗りたいところだ。
開幕から5試合で2度も「情けない試合」(柱谷監督)をしてしまった水戸。やはり問題はメンタル面にある。前節・岡山戦で見せたように、チームが高い意識を持って臨めた試合では質の高いパフォーマンスを見せることができている。しかし、それを継続できないことが現状の大きな課題である。「このチームはうまい選手が多い」と柱谷監督が言うように、確かにテクニックに長けた選手が多い。だが、サッカーは技術力を競うスポーツではない。相手よりも走り、球際に対して厳しく行き、そして1対1で負けないことが勝利の条件である。そこを見失っている選手が多い。この敗戦を機に意識改革をしなければ、「J1昇格」ではなく、「J2残留」を現実的な目標にせざるを得なくなるだろう。今、変わるしかない。
以上
2013.03.25 Reported by 佐藤拓也













