すべてが岐阜の思惑とは逆に行き、結果として徳島の狙いにはまった展開となった。
徳島は福元洋平、斉藤大介、那須川将大の3バック、青山隼と柴崎晃誠のダブルボランチを配置し、1トップの188cmの長身FWキム・ジョンミンの後方に、津田知宏と大崎淳矢の2シャドーを配置した【3-4-2-1】を採用。
「3バックではどうしてもサイドのスペースを使われる」とGK松井謙弥が言ったように、このシステムの攻略は左右のウィングバックの裏のスペースを有効活用して、いかに相手を5バック状態に出来るかにあった。行徳浩二監督も当然、その狙いを持っていた。しかし、ピッチ上で展開されたのは、岐阜の5バック状態であった。
岐阜は李漢宰の出場停止を受け、行徳浩二監督は森安洋文をボランチに起用。そして前線には186cmの高さを誇るファビオを先発起用し、4試合連続ノーゴールの攻撃陣にテコ入れを図ってきた。
だが、序盤ペースを握ったのは徳島。徳島の狙いは、岐阜の右サイドにあった。「相手のボランチの状況がどうかを見た。ウチの2シャドーに対し、バックラインが落ちるのか、付いてくるのかどうかで見る。センターバックが付けば、ジョンミンが裏に行ったりなど、ボランチがどう来るかで変わる」と小林伸二監督が語ったように、津田と大崎に対する岐阜の守備の仕方を見て、攻め方を決めてきた。
「1トップがいて、2シャドーが落ちてきたときの守備を見切れず、相手の両ワイドが張った時に、サイドバックが行くのかサイドハーフが行くのか。前線の3人に対しては、4バックで見ましょうと言う決め事があったのに、上手くいかなかった」と行徳監督が肩を落としたように、岐阜はサイドと中央で完全にプレスの連動性を失ってしまっていた。
これが徳島の狙いをより的確なものとさせてしまった。津田と大崎が中盤に落ちても、センターバックが付いていって、サイドバックが中に絞って、サイドハーフが両ウィングバックをケアすれば、ダブルボランチは高い位置に入れるため、守備もはまるし、奪った後のカウンターにも備えることが出来る。しかし、岐阜はDFラインの1トップ2シャドーへの食いつきが曖昧になったことで、ボランチが中間のポジションを取らざるを得なくなり、前に出られなくなるばかりか、相手の両ウィングバックの裏のスペースすらも有効活用できなくなってしまった。
リズムを掴んだ徳島は、左ウィングバックの藤原広太朗がワイドに張り出し、そこに津田も意図的に流れてきた。これは岐阜の右サイドバックの田中秀人が中央へのカバーリング役のため、中央に絞ることが多いが、反対サイドの野垣内俊が絞る回数は少ない。そうなると必然的に徳島の左サイドが空くし、岐阜の右からの仕掛けは少なくなる。徳島はまさにここを狙っていた。津田や藤原が田中の右脇に立つことで、これも必然的に岐阜の右サイドハーフの杉山新も下がらざるを得ない。岐阜は5バック状態になってしまい、徳島は左サイドで奪われても、カウンターを受けるリスクは少ない。岐阜にとって、本来は3バックの徳島にしてもらいたい5バックを、自らがやらなければいけなくなる皮肉な悪循環に陥った。
中盤を完全に制圧した徳島ペースで試合が進んだ27分、藤原が左サイドタッチライン沿いで津田からのパスを受けると、じっくりと中を見て左足クロス。これを中央でFWキム・ジョンミンがフリーでゴール右隅にヘッドを突き刺した。このシーン、岐阜はサイドと中央で完全にプレスの連動性を失ってしまっていた。人に行くのか、ボールに行くのかはっきりせず、左サイドに展開されても、誰がプレスに行くのか、縦を切るのか、中を切るのかはっきりせず、簡単にフリーでクロスを上げられた。さらに中央ではクロスが来るとわかっていながら、188cmのキムのマークを関田寛士が完全に見失ってしまっていた。
まさに取られるべくして取られた先制点。0−1で迎えた後半、行徳監督は染矢一樹と杉山新の両サイドハーフを中に絞らせて、対応策に出てきた。しかし、何とか反撃に転じたい岐阜に思わぬ出来事が。ファビオが後半開始早々の49分に、悪質なファウルで退場処分に。岐阜は2試合連続で10人での戦いを余儀なくされた。
だが、皮肉にも10人になったことで、攻守において役割が明確になり、岐阜の攻撃にリズムが生まれた。さらに徳島も1点リードでアウェイ戦ということもあり、ラインを下げて守備に回ったことも重なって、岐阜がペースを握る。52分に左サイド深くでFKを獲得すると、MF美尾敦のキックを関田がドンピシャで合わせるが、ゴール左外。73分には染矢の左からのクロスを、ゴール前でDFデズモンドがバックヘッド。これは惜しくも右ポスト直撃と、チャンスをモノに出来なかった。
90分の間にピッチ上で起こった2つの皮肉。徳島にとっては、結果を見れば上出来の結果で、前半のサッカーは素晴らしく、収穫が大きい試合だった。しかし、岐阜にとっては厳しい現実を突き付けられた試合だった。なんでもネガティブに考えるのはよくないが、10人になってからのサッカーをあまりポジティブに捉えすぎても良くない。裏を返せば、攻守の切り替えの際の連動性が決定的に足りないことを露骨なまでに提示されたのだから。選手たちは個々に危機感を強烈に感じるべきだ。そうしないと、今後に繋がらない。攻撃と守備を割り切ってやることが得策とは思わない。まだシーズン序盤だからこそ、危機感を感じ、改善に最善を尽くさなければならない。開幕から5試合連続無得点、勝ちなしの現実。ここから目を背けては決してならない。
以上
2013.03.25 Reported by 安藤隆人













