開幕から栃木は猛烈な逆風に晒されているが、少しずつその勢力は弱まりつつある。前々節の山形戦では同点後に突き放されたものの、前節の鳥取戦では同点に追い付き辛くも勝点１を拾った。菅和範の決定的なシュートはクロスバーに嫌われたが、サビアの同点弾はクロスバーに当たりながらもゴールに吸い込まれた。まだまだ、流れと運を掴んでいるわけではないが、掴めそうな気配は漂い始めている。ここで一気に流れを変えるには、今節のライバル群馬との「北関東ダービー」は格好の舞台だと言える。
「（成績が）歯がゆい状態でダービーに臨むことになるが、ダービーはいつも以上に気持ちが高まる。それをカンフル剤にして、何としても勝点３を取って波に乗りたい」
廣瀬浩二が群馬戦を飛躍のきっかけにしたいと言えば、松田浩監督も「ダービーを弾みにして、きっかけを掴めればいい」と位置付ける。今季ホーム初勝利を群馬から奪い、水戸に一時的に預けているダービーカップ奪還の足掛かりにするためにも、この決戦は極めて重要な意味を持つ。

アウェイ２連戦となった山形、鳥取戦の反省点として試合の入り方が挙げられる。相手に押し込まれた原因を、松田監督はこう分析した。
「試合の入り方は緩くない。ただ、風の影響など外的要因に戸惑い、１１人の意思統一が図れずに試合を進めていたところはあった」
２試合とも相手の背後にボールを蹴りＤＦラインを引っ繰り返すのがプランとしてあったが、上手く実行できずに後手に回った。ピッチで１１人が同じ絵を描けなかったことが、やるべきことをやれなかった要因となった。群馬は４バックと３バックを使い分ける。どちらを採用するかは不透明だが、今週のトレーニングではいずれにも対応できる準備は行った。相手の出方を見ながら蹴るのか、それとも繋ぐのか。的確な状況判断をすることで、序盤から優位に試合を進めたい。

主導権を握れたならば先制点が欲しいのは言うまでもない。今季は一度も前半に先制点が取れていない。そのため、栃木本来の形に持ち込めずに苦戦を強いられている。１月のトレーニングマッチでは、カウンターが面白いように決まり群馬に７‐０で圧勝した。しかし、公式戦では、そう上手く事は運ばないだろう。仮に群馬が３バックを採用すれば、５バック気味に守備を固める可能性が高い。そうなればハードルはさらに上がる。守備に人数を割く相手を攻め崩すのに、トレーニングでは２列目からの飛び出しを菊岡拓朗などが意識的に行った。丁寧にパスを繋ぐ相手のボールを引っかけてカウンターを狙うと同時に、機を見て積極的に背後を取る動きも交えてゴールを陥れたい。

前節１‐４で神戸に大敗した群馬は、間違いなく１月のトレーニングマッチの雪辱に燃えている。当時は秋葉忠宏新監督の戦術が浸透しておらず次々にゴールを割られたが、そこからどれだけ進歩したのかをはかるには絶好の機会になるはずだ。また、前節からの立て直しを図る上でも重要な一戦となる。神戸に４失点を許すまで失点はわずかに１だっただけに、前線からのアグレッシブな守備をまずは取り戻したいところ。

奪ったボールは細かく繋ぎ、東京Ｖ時代の同僚である菊岡が「裏への飛び出し、シュートも上手い。一番、気を付けないといけない」と警戒する、フィニッシャーの平繁龍一に届けるのが群馬の理想的な形。栃木のダブルボランチとセンターバック２枚が挟み込みながら起点を潰すのか、それとも平繁がマークを掻い潜り嗅覚を発揮するのか。ゴール前で何度も繰り返されるバトルに注目したい。

菊岡に言われるまで気が付かなかったが、栃木はホームで勝利どころかゴールを決めていない。つまり、サポーターはゴールの歓喜も、勝利の歓喜も味わっていないのだ。それだけに、指揮官も群馬戦には並々ならぬ思いを抱いている。
「群馬とのダービーは栃木にとって他の試合とは別格のものがあると聞くし、私自身もそう感じる。それだけに、なんとしてもホームで群馬に勝ち、これ以上ない勝利をプレゼントしたい」
ホームゲームも群馬戦で３試合目となる。ライバルからゴールも勝利もいただき、４月からの巻き返しの狼煙としたい。終わりよければすべてよし。３月最後の試合を勝利で締めくくろうではないか。

以上

2013.03.30 Reported by 大塚秀毅