山形の奥野僚右監督は試合後の会見の中でこう述べている。「(神戸には)ミドルシュートが得意な選手が数多くいる中で打たれてしまった。ボールにあと一歩が寄せられず、あと数メートルラインを押し上げ、相手の圧力をかわすことができなかったことで失点は生まれた」。後半の51分に神戸の奥井諒が決めた豪快なミドルシュートの話である。このワンシーンに首位攻防戦の明暗は集約されているように思われる。
前半の立ち上がりは、神戸が山形の攻撃の芽を摘み、早い攻守の切り替えでチャンスメイクを続けた。前半6分には奥井がインターセプトからドリブルで前線へ持ち込み、小川慶治朗とのパス交換を経て相手DFの裏へ抜けるシーンもあった。その直後の前半8分には、右サイドを突破した小川からのセンタリングをニアに走り込んだポポが頭で合わせ、ポストに嫌われるという決定的なシーンもあった。
だが、山形は一歩も引かず。逆に前から積極的にプレッシングをかけ続けると、ペースは徐々に山形へ。ショートカウンター、あるいはサイドにボールを散らしながらいいリズムで攻撃を繰り返していく。特に中島裕希が神戸DFの裏へ抜け出す動きは効果的で、そこへ至るプロセスでは山崎雅人やロメロ フランク、ボランチの宮阪政樹、左サイドバックの中村太亮ら多くの選手が絡むなど理想的なオフェンスを展開した。山崎は試合後にこう振り返っている。「前半はセカンドボールが拾えていた。そこが全てだったと思いますし、そこから2次攻撃、3次攻撃ができた部分がありました。でも、チャンスを生かすというか、もっと良い選択肢を見つけて周りを使ったりすることが必要だったと思うので、個の力というのも必要だと思います」。前半41分にはボランチの秋葉勝がペナルティエリア内に侵入し、思い切りよく振り抜いた右足シュートがゴールバーをかすめて外れた。再三のゴールチャンスを生かすことができれば、また違った展開になっていたかもしれない。
その山形のいい時間帯をしのいだ神戸は、後半の立ち上がりからペースをつかむ。47分には後方からのフィードを前線の田代有三が胸で落とし、走り込んだ小川がスピードを生かして相手の最終ラインを瞬時に突破。得点こそ生まれなかったものの、このワンプレーが山形のDFラインを下げる特効薬となる。やや間延びした山形の寄せが後手に回り出すと、神戸がバイタルエリアで面白いようにセカンドボールを拾い出す。それを2次攻撃、3次攻撃とつなげ、さらに山形のDFラインを押し下げる。そして51分。何度か山形に跳ね返されたセカンドボールを拾った後、橋本英郎が相手を交わすように出したマジーニョへのパスが流れて奥井の前へ。ルーズボールへの反応が遅れた山形のスキを突き、奥井が豪快に蹴り込んで神戸が先制に成功した。
ここまで神戸の攻撃にしっかりと対応してきた山形にとっては悪夢のような一瞬。冒頭で記した奥野監督のコメント通り「ボールにあと一歩が寄せられず、あと数メートルラインを押し上げ、相手の圧力をかわすことができなかった」瞬間だった。
その後、山形はスピードのある比嘉厚平や高さのある林陵平、MF廣瀬智靖らを投入。システムを3バックにして1点を奪いにいったが、神戸の河本裕之、岩波拓也を中心とした神戸DFを崩せず。87分にはポポの退場によって数的優位になりながらも1点が遠かった。これで山形は今季初の無得点ゲームに。逆に神戸は第3節の札幌戦以来の完封勝利で単独首位をがっちりとキープした。
試合後、神戸の安達亮監督は「ただの仲良しチームではなくて、勝つために何が必要かを中心選手が積極的に意見をぶつけ合う。本当に勝つためにチーム一丸が非常にできている」と話した。選手やコーチ陣だけではなく、クラブ全体がまとまっているとも言い残している。もちろん、山形もチームワークでは負けてはいないが、今日のゲームに関しては少し神戸が上回ったと言えるだろう。
全ては勝つために。それを神戸はJ2降格が決まった瞬間から1人1人が考え、意見し、同じ方向を向いてきた。仮に高い意識が研ぎすまされた集中力を生み、それが相手よりも一歩、あるいはコンマ何秒のボールへの反応の早さにつながるならば、奥井のゴールは今季の神戸を象徴するような一発だったと言える。シュート数では神戸の15に対して、山形が13とほとんど差がない中で、勝敗を分けたのは、そんな“あと一歩”だった。
以上
2013.04.08 Reported by 白井邦彦
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