ヤマザキナビスコカップ第４節、大宮はホームNACK５スタジアム大宮に甲府を迎える。大宮と甲府はここまで休みなく３試合を消化しているが、７チームのうち上位２チームしか決勝トーナメントに進めないカップ戦に対して、チームとしてどう向き合うのか、そろそろはっきりする時期だ。ここまで２勝１敗で首位と勝点で並び得失点差の３位に付ける大宮は、当然ながら予選リーグ突破をねらう。一方、１分２敗の甲府には既に自力突破の目はない。ただでさえ甲府はリーグ戦で１勝２分２敗と低迷しており、カップ戦では成績よりも、残り３試合をいかにリーグ戦に向けて有意義に使えるかがテーマとなる。

リーグ戦では３勝２分の３位に付け、昨年９月以来の無敗記録を１６に伸ばしている大宮は、非常に良いチーム状態にある。予選リーグ突破のためにこの試合も取りこぼせないが、１５日間で５連戦の４戦目ともなると、さすがに疲労を考えないわけにはいかない。しかもズラタンが腰の痛みで先週半ばまでプレーできず、ようやくズラタンが戻ってきたと思ったら今度はノヴァコヴィッチが足に違和感を訴えて離脱した。長谷川悠と富山貴光が高稼働してしのいでいる状態で、幸いその２人が好調を保っているが、できればケガで出遅れていた清水慎太郎に出場機会を与えたいし、同様にチョ ヨンチョル、渡邉大剛の両サイドハーフともフル回転中につき、宮崎泰右の起用もありそうだ。守備陣では既にカップ戦でスタメン出場している上田康太、今井智基、村上和弘、片岡洋介、江角浩司らは十分に戦力として考えられるし、さらに今季まだ出場機会のない橋本早十や福田俊介らに声がかかってもおかしくない。ベルデニック監督は「ポジションごとに同じくらい力のある選手がおり、総力戦で戦う」と語っており、実際、ここまで結果が伴っていることで「競争が激しくなっている。だれが出ても、そこで勝つことでアピールしようと(リーグ戦に)出てない選手も練習からモチベーションが高い」(金澤慎)と、チームはまさに好循環のただ中にいる。リーグ戦は５節を終え、この試合からいわゆるベストメンバー規定が効力を発揮するが、ベルデニック監督の用兵に注目したい。

一方の甲府は、山本英臣、土屋征夫、水野晃樹らのケガ人が戻り、先週末にはついに今季初勝利を挙げて調子は上向いている。焦点は、この試合をどう使うかだ。大分に勝利した主力で熟成を図っていくのか、それとも戦力の底上げを兼ねつつ主力の疲労を避けるのか。先週末の甲府スタメンの平均年齢が２８．７３歳と高いことを考えると、おそらくは後者のほうだろう。期待の新外国人マルキーニョス パラナ(２００７年には磐田に所属)は登録が間に合わないが、元パラグアイ代表のオルティゴサには少しでも早く実戦の中でフィットしてもらいたいはず。金子昌広、河本明人、井澤惇らにもチャンスが与えられそうだし、また大宮サポーターにとって楽しみなのは新井涼平が先発濃厚と報じられたことだ。大宮ユース育ちで２００９年にトップ昇格を果たし通算９試合に出場したものの、２０１０年に岐阜へ期限付き移籍し、２０１２年に北九州に完全移籍した男が、青と赤のユニフォームをまとって久々にNACK５スタジアム大宮に帰ってくる。新井自身にとっては見返したい思いが強いだろうが、オレンジのサポーターは温かく彼を迎えるはずだ。

今季のリーグ戦とカップ戦を合わせると、大宮は５勝２分１敗で、甲府は１勝３分４敗だが、大宮にとっては与しやすい相手ではないだろう。甲府の平均失点は１．１と守備は堅く、複数失点は２失点が２回で大崩れはしない印象だ。また甲府は今季一度もアウェイでは負けていない。「ハードワークして守備をしっかり固めてくると思うから、いかに崩せるかがポイントになる」と金澤は言う。大宮の得点パターンは堅守速攻だけに、ボールを保持する展開で攻めあぐねるようだと、逆に甲府のチャンスにもなり得る。甲府にとっては、メンバーが代わるとすれば連携してのムービングフットボールが難しくなることはカップ戦の前節・湘南戦でわかっている。ハードワークをベースに割り切ったサッカーに徹すれば、新井は一瞬の隙を突くロングパスが出せる選手だし、オルティゴサの個人能力も生きるかもしれない。
成績とチーム状況は対照的だが、「気を抜けない試合になる」(宮崎)と、大宮の選手たちに油断はない。むしろリーグ戦に出ていないメンバーにとっては「この状況に満足してはいないし、勝つことが一番のアピールになる」(上田)と、自らの存在価値を示すために何より勝利が欲しい。それは甲府の選手たちも同じはず。カップ戦の残り試合にかけるチームの思惑はともかく、そうした選手たちのギラついた気持ちが、試合を熱くしてくれるだろう。

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2013.04.09 Reported by 芥川和久