立ち上がりにいきなり長い縦パスを入れ、ステボ、鄭大世とつないでシュートまで持っていったシーンを見ると、やはり水原は逆転でのグループリーグ突破を狙い、日立台での勝点3を狙っていることが窺えた。
多くの選手がピッチ上でも感じたように前回の大敗を受けて水原は柏を研究していた。柏の戦術上のキーマンは、中盤の底で舵を取る大谷秀和である。時には最終ラインまで降りてビルドアップに加わり、時には味方からパスを引き出して攻撃陣へ供給する。その大谷をステボがマークすることで、ビルドアップ時の柏はボランチから展開できず、やや窮屈な格好となり、「リスクを冒す必要はない」という意識も手伝ったのか、序盤は簡単に水原のディフェンスラインの背後へ長いボールを送るシーンが見られた。
ここまで無傷のグループリーグ3連勝で、グループHの首位をひた走る柏は、仮に引き分けでも他会場の結果次第では決勝トーナメント進出が決まるとあって、無理をして攻めるというよりは、ブロックを作って水原の攻撃を受け止め、水原の守備に隙が生じた時にショートカウンターで敵陣を切り裂けばいい。実際にゲームが落ち着いてくると柏の切れ味鋭い縦への攻撃が水原のゴールを目掛け突進した。
19分、敵陣での水原のスローインを鈴木大輔が弾き返し、それを大谷、茨田陽生、田中順也がダイレクトでつなぎ、ペナルティエリア付近まで攻め入る。さらに25分にも、パスを受けに降りた鄭大世を大谷と田中で挟み込み、そこからショートカウンターを仕掛け、一気に水原のゴール前まで襲い掛かっている。ともに得点には至らなかったが、怒涛のショートカウンターによって、少なくとも水原に前回対戦の悪夢を蘇らせることはできただろう。
2トップに高さのある水原が、サイドからのクロスやハイボールで攻撃を仕掛けるのは前回の対戦と変わらないが、その弾き返された後のセカンドボールを柏に拾われることを恐れたのか、何でもかんでも放りこむというよりは、慎重に回しながら、状況の悪い時には最終ラインまでボールを下げるなど、見ていると「出ていきたいが、なかなか出ていけない」といった様子が感じられた。工藤壮人が「全体的に堅い試合だなという感じがした」と振り返った通り、水原は勝点3を欲しながらも、柏の攻撃を十分に警戒してリスクマネジメントの意識を高く持っていた。
近藤直也を欠き、若干心配された守備面も、代わりに入った渡部博文が空中戦の強さを生かして、鈴木、増嶋竜也とともに水原のハイボールに屈することなく、良いパフォーマンスができていた。66分に中盤で奪い切れず、パク ヒョンボムの縦パスとキム デギョンの落としから、センターバック2人の間に生じたギャップをステボに入られ、“あわや”という場面を作られた。試合を通じて崩されたのはこの一度きり。しかし、決められていれば大変な事態になっただけに、このラインコントロールやセンターバックの関係性は改善すべきである。
また、61分にはクレオを投入したことで柏の前線にはタメができ、クレオに一度当ててから、水原のディフェンスラインの背後を突く攻撃が増える。大谷のスルーからクレオが縦に入ったシーンや、カウンターからクレオのカットインシュートといったチャンスが生まれたが、クレオ本人が「試合勘を戻さないといけない」と語ったように、足にヒットせず、シュートは枠すら捉えなかった。
終盤、おそらく水原はまだセントラルコーストと貴州との直接対決を残しているため、ここで無理をして敗れるよりも、確実に勝点1を手にして、残りの2戦にグループリーグ突破の望みをつなごうとしたのかもしれない。藤田優人も「思ったよりも最後は水原が出てこない感じはしていた」と話していた。ほぼ互角の試合は0−0のドロー、ともに勝点1ずつを分け合った。
他会場では貴州がセントラルコーストを破ったため、柏のグループリーグ突破は決まらなかったが、柏だけが大きくリードし、2位以下が混戦という状況となった。柏は次の貴州戦は引き分けでも自力でのラウンド16進出が決定する。得点は生まれなかったものの、レアンドロ ドミンゲスを欠いた中でもチャンスを作り、そして近藤直也不在でも守備組織の破綻はほとんどなく、グループリーグ第1戦の貴州戦以来となる久々の完封ゲームができたのは、ここ数試合の出入りの激しいスコアを考えれば、むしろ評価できる部分の方が多い。
それに次の貴州戦も日立台でできる。これ以上のアドバンテージはない。ラウンド16への扉は、23日の試合で必ず開く。
以上
2013.04.10 Reported by 鈴木潤
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