最後の最後に勝利が指の隙間からこぼれ落ちていった。浦和は後半アディショナルタイムに同点に追いつかれ、2位の全北現代との勝点差を詰めることができなかった。
浦和はこれ以上ない最高の滑り出しを切った。立ち上がりの3分、柏木陽介のCKから那須大亮が「ボールがよかったので合わせるだけだった」と強烈なヘッドで先制点を奪った。さらに、その4分後には追加点を奪うことに成功する。柏木の縦パスを槙野智章がフリックし、DFラインの裏に抜け出た宇賀神友弥がシュート。これはGKのセーブに阻まれたものの、こぼれ球を梅崎司が押し込み、アウェイの地で序盤に2点リードという上出来のスタートとなった。
全北現代は前回の試合で控えだったイ・ドングッをスタメン起用し、ケヴィンと2トップを組ませる4−4−2の布陣でスタート。埼玉スタジアムでの試合の後半のように、2トップに手早くボールを入れる韓国らしいゴリ押しスタイルで挑んできたが、やはりこの試合でもイ・ドングッが存在感を示した。長身のエースストライカーは背中で相手をスクリーンするのがうまく、ポストプレーで何度か攻撃の起点となった。
全北現代は2トップにロングボールを放り込み、ポストプレーから次につなげるか、セカンドボールを拾ってたたみ掛ける形を狙ってきた。それでチャンスを作れなくてもアタッキングサードでファールをもらい、エニーニョがFKでゴールを脅かすというのが1つの流れになっていた。
浦和は全北現代のパワフルな攻撃を粘り強く対処していたが、押し込まれる時間は増えた。前半は無失点で切り抜けたものの、51分についに失点。エニーニョが虚を突く技ありのループシュートでゴールネットを揺らした。GK加藤順大は前戦に続いてクロスだと思って前に出たところで逆を突かれ、技巧派MFのセンスあるシュートに泣かされた。
全北現代はこのゴールで押せ押せムードに。シンプルに前に入れてはファールをもらい、エニーニョがFKでゴールを脅かすというパターンが続いた。浦和は「相手が前から来ていたので、うまくビルドアップができなかった」と那須が振り返ったように、全北現代の厳しいプレスをかいくぐってゲームを組み立てることがなかなかできず、主導権を握れなかった。
耐える時間帯が続いていた浦和も70分あたりからカウンターで何度かチャンスは作った。77分には興梠慎三が完全に裏を取ってシュートを放つが、力みすぎて枠外。その4分後にはマルシオ・リシャルデスのパスに飛び込んだ阿部勇樹がゴールを狙うが惜しくも外れ、84分にはカウンターから原口元気がドリブルで持ち運び、最後はマルシオがシュートを打ったが、ここは相手GKがファインセーブ。ここで追加点を奪えていれば試合運びも楽になったのだが、そううまくはいかなかった。
攻勢を強める全北現代に対し、押し込まれながらも最後のところではやらせないと奮闘する浦和。サイドからクロスを連発する相手に対し、那須などが粘り強くハイボールを跳ね返してフィニッシュまで持ち込ませなかった。このまま逃げ切れば目標の勝点3を獲得。そういう流れが見えかけてきたところで、後半アディショナルに痛恨の同点弾を浴びてしまった。
勝利目前の展開から白星をつかみ損ねた。森脇良太は「最後の数分我慢すればという思いが強いので、ちょっと悔しい気持ちが強い」と唇を噛む。まだまだアジアの強豪相手に逃げ切る力はなかった。これで自力突破の可能性はなくなった。だが、グループリーグ 突破の道が潰えたわけではない。
「最低限の引き分けに持ち込めたことは次につながる。これで終わっていたら下を向いてしまうけど、みんなでつなげたので、これをバネにやっていくしかない」。那須は不本意な結果もポジティブに捉えようとしている。まだ勝ち上がれる可能性は残っている。今回の引き分けを意味あるものにするためにも気持ちを切り替え、残り2試合では死力を尽くして勝利のみを目指していく。
以上
2013.04.10 Reported by 神谷正明
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