3月の勝負強さを、Ｃ大阪は自らの聖地、大阪長居スタジアムで取り戻した。4月未勝利同士の対戦となったヤマザキナビスコカップ予選リーグ第4節、Ｃ大阪とＦ東京の一戦は、Ｃ大阪が柿谷曜一朗、シンプリシオのゴールでＦ東京を2-1と下し、公式戦の連敗を2でストップ。3月23日の同予選リーグ第2節・大分戦以来の白星を勝ち取った。また、この大会のBグループでも勝点を7に伸ばしたＣ大阪が、暫定で首位に立った。一方のＦ東京は、約1カ月前に同じ長居で行われたJ1第3節・Ｃ大阪戦同様、相手を上回るシュート（14本）を放ちながら、今回も惜敗した。

ともに15日間で、J1リーグ戦とヤマザキナビスコカップの計5試合を戦うという過密日程のなかでの、3戦目。「ベースは維持したい」という基本コンセプトを持つレヴィークルピ監督率いるＣ大阪は、4日前のJ1第5節・鹿島戦から、先発に南野拓実が入った以外は同じスターティングメンバーを揃えた。なお、8日の練習中にGK武田洋平が負傷し、18歳の韓国人GKク ソンユンが初めてベンチ入りすることになったため、外国籍選手登録枠の関係でブランコがメンバーから外れた。対するＦ東京は、J1第5節・大宮戦から先発陣を入れ替え、塩田仁史、米本拓司、河野広貴、三田啓貴が新たに名を連ね、東慶悟はベンチからのスタートになった。

試合では「相手にボールを持たれるシーンのほうが多かった」と山口螢も言うように、Ｃ大阪がＦ東京の攻撃を耐える時間帯が続き、攻めてはほぼカウンターのみ。ただし、Ｃ大阪の守備ラインのブロックがしっかりと作られていたこともあって、Ｆ東京側からみれば、「前半はただ（ボールを）回しているだけ」（河野）という形にもなり、双方決め手のないまま、スコアレスでハーフタイムを迎える。

だが、後半になると試合が動く。先手を取ったのは、そこまで劣勢だったＣ大阪。55分、敵陣左サイドにて、ハイプレスでボールを奪った扇原貴宏が左アーリークロスをゴール前へ送ると、エジノが相手DFとつぶれたところで、こぼれてきたボールに反応した柿谷が、右足で冷静にゴールに流し込んだ。しかし、Ｆ東京も東を投入した3分後の61分、右サイドバックの加賀健一がフリーで絶妙クロスを送ると、これにゴール前でDFの間にうまく入り込んだ李忠成がヘッドで合わせて、すぐさま1-1となり、試合は振り出しに戻った。

ただし、追い付かれても、Ｃ大阪に落ち込む様子はなく、むしろアグレッシブなＣ大阪らしさは強まった。60分に枝村匠馬、68分に今季初出場となる楠神順平をピッチに送り込み、中盤で活力を得たＣ大阪は、69分、勝ち越しに成功する。その決勝点を奪ったのは、シンプリシオだ。経験豊富なブラジル人ボランチが、機を見て前線へ進み、柿谷、枝村とそれぞれ細かくワンツーを行い、中央を突破すると、GKの位置をよく見て右足でループシュート。これが塩田の手を弾きながら、ゴールに吸い込まれた。「Ｃ大阪のみんなの質の高さが出たゴールだと思うし、パスがきっちりつながって、最終的にゴールにつながった」（シンプリシオ）。

その後も、流れはＣ大阪。柿谷、楠神、枝村らがうまく連動し、シンプリシオもそこに絡むと、柿谷に3度の決定機が訪れるなど、ダメ押しのチャンスもあったが、そこはＦ東京DFの粘りもあり、追加点は挙げられず。終盤には途中出場の播戸竜二が2度の警告を受けて退場となり、数的不利の戦いも強いられたＣ大阪だが、そのまま1点のリードを守りきり、今季のＦ東京戦2連勝を果たした。

「追い付かれたなかで、チームが下を向かなかったこと。アグレッシブに戦えたこと。勝点3を最後まで追い求めてプレーしたこと。それらが、ゴールにつながって、勝点3を取れたと思う」、殊勲のシンプリシオはそのように勝因を語った。また、「連敗で来ていたなか、勝ったので、ひとまず悪い流れは断ち切れたと思う。次のJリーグに向けて、しっかり準備したい」と山口も言うように、自信を取り戻した桜色のイレブンの視線は、すでに3日後のJ1リーグ戦に向けられていた。

逆に、「こういう結果を望んでここに来たわけではなかったので、少し、今、まだ受け止めきれていない気持ち」と試合後に落胆の表情を見せていたのは、Ｆ東京のランコ ポポヴィッチ監督。それでも、「この敗戦という結果につながった分析と反省をして、そこで次の試合に向けて改善して臨んでいくことが大事」と、チーム再生を誓っていた。

以上

2013.04.11 Reported by 前田敏勝