4月2〜3日のACLでJリーグの代表4チームの試合結果がKリーグの代表相手に1勝3敗だったときには、唯一勝利した柏を頼もしく誇らしく感じたが、Jリーグ戦で当たるとなれば別の話。J1昇格2度目の2011年シーズンは、リーグ戦で2敗、天皇杯では1−6で敗れていており、対柏戦の連敗はもう伸ばしたくない。第618回のtotoの投票状況（12日）では柏の勝利を予想する投票が約60パーセント。甲府が公式戦で2連勝したことで甲府の勝利や引き分けを予想する人が少しは増えたのだと思うが、相当難しい対戦であることは変わらない。ただ、相手を研究して勝つというよりも甲府らしさを追求したい。今の甲府は、前線から連動した守備が機能してボールを奪うことで主導権を奪えるようになってきたので、継続しつつ精度を高めたい。城福浩監督は「柏のゲームを分析して感じるのは、対策を立てることが難しいチームだということ。隙を与えない、隙を突く厳しさがあり、個人のアイディアの豊富さを思い知らされる。攻守に渡って（相手にとって）厳しいチーム」と話す。試合前日の紅白戦形式の練習を見ていると「〜のときに〜なるから〜しよう」と城福監督が言っているので、分析した上でお手上げというわけではないが、できれば柏の選手には、おごり高ぶって甲府に乗り込んできてほしい。

公式戦で連勝して――今から逆転優勝を狙うというほどではないが――チームとしての自信を取り戻した甲府。柏戦のことを頭の中でイメージすると、――甲府贔屓なので――結構やれるイメージが浮かんでくる。ただ、心配なのは主導権を取る時間があってもチャンスにパシッと決められて、“悪くない内容だけど勝てなかった”となること。第5節の大分戦は、相手にも決定機があった中での1−0の勝利。この勝利がもたらすプラスアルファには期待しているが、決定力のある選手が多い柏相手に、ゴール枠の守備力に期待するわけにはいかないし、昼間（13時キックオフ)のゲームなのでピンチに照明が消えることにも期待できない。3〜4点取る自信がないのなら、甲府は無失点で抑える戦いをするしかない。「大分を無失点で抑えて気持ち良かったし、うれしい。柏もゼロに抑えたい」と話す元FWの松橋優は、完全にディフェンスの選手思考になっていて、ちょっと意外。大分戦がプロ初勝利だったGK河田晃兵が、「90分間常に前からボールを奪いに行くのは難しいので、行くところ行かないところをはっきりさせて、行くときにボールを取れれば強い相手でもいい試合ができると思う」と言うように、課題はこの判断の共有。山本英臣がボランチに戻ってきてからはピンチの芽を摘み取る能力が高まったと思うが、ボランチからの指示で判断の共有の精度を高めたい。

柏はACLでは決勝トーナメント進出の可能性が高い立場にいるが、リーグ戦では勝点7の8位で、勝点15で首位を独走する横浜FMを追撃するには、今節の甲府戦は“取りこぼせない”相手ということになる。今節に向けたレアンドロ ドミンゲスのコンディションが注目されるが、甲府から見ればいなくても柏が怖いチームであることに変わりはない。練習のインナーは今でも黄色（使えるから使っているだけ）で、柏をよく知る男・水野晃樹は「レアンドロがいなくても去年は勝っているから、（もし出場しなくても）“レアンドロがいないから”とは捉えないで、柏レイソルというチームとして捉えることが大事。レアンドロがいないならいないで、日本人選手がものすごく頑張るのが柏。（失点が多いが）オフェンスでは結果を出しているチーム。そのオフェンス力にビビってラインを下げると押し込まれるので、そうならないようにする必要があると思う。勝機は絶対にある」と話す。途中出場で起用される可能性が高い水野は、ここまでアシストでチームの勝利に貢献しているが、直接蹴り込むこともイメージして壁を相手に練習していた。ケガ明けでまだコンディションは万全ではないが、徐々にボールの当たりの感覚はよくなっており、去年までいたチーム相手に“直接決めたい”という欲求が強くなっているのではないだろうか。ここ数試合、水野のコメントからは責任と自覚と自信を感じる。柏サポーターの温かいブーイングを受けて、水野が恩返しゴールを決めるシーンを山梨中銀スタジアムで見たい。JFK甲府は3月は勝てなかったが、4月に入って連勝。山梨の人たちの心も大きく動き出したと思う。明日は多くの人が山梨中銀スタジアムに来てくれるはず。今季、ホームでの公式戦は4連敗中だが、12,000人のタメ息禁止のポジティブ声援でホーム初勝利を勝ち取ろう。

以上

2013.04.12 Reported by 松尾潤