浦和が湘南に地力の差を見せつけた。スコアは2−0だったが、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が「もしかすると4点、5点が入ってもおかしくはない試合だったかもしれない」と振り返ったように、もっと大差がついていても不思議ではなかった。
浦和は磐田戦、ACL全北現代戦と同じメンバーで5連戦最後の湘南戦に臨んだ。1週間で3試合目となった選手たちのプレーの質は、トップフォーム時と比べると全体的にそれほど高いものではなかった。普段なら見られないようなイージーなパスミス、ファーストタッチのズレ、判断ミスが序盤から目立った。やはり疲労の影響かと思わせるような滑り出し。槙野智章や森脇良太も「正直疲れはあった」と明かしている。
その浦和に対し、湘南は立ち上がりから高い位置までプレッシャーをかけにきた。浦和は単純なミスもあって、序盤は湘南のプレッシングに少し手こずる場面もあった。寄せられるとパスの精度が落ちたり、ファーストタッチが狂ったり、キックが味方のいないところに飛んだりと、やや不安を感じさせるスタートになった。
ただ、浦和は調子が今ひとつの状態でも、いつものように後方からつないでマークをはがすスタイルを貫き、何度かゴール前までボールを運んだ。すると30分、柏木陽介が「パススピード、コースとも完璧だった」パスをDFとGKの間に通すと、ポストプレーからゴール前に飛び込んだ興梠慎三がギリギリのところで合わせて先制弾。浦和は興梠の移籍後初ゴールでリードを奪った。
そして、この頃には早くも試合の流れは浦和に傾いていた。前からプレッシングをかけてショートカウンターを狙った湘南だったが、次第にプレスが浦和にかわされるようになると、前に行ってできるスペースを使われる恐怖から出足が鈍くなり、受け身になってしまった。
湘南の戸惑いは浦和の選手たちに伝わっていた。森脇良太は湘南の様子をこう語る。「前に来る時は来ていたけど、相手はやりづらそうにしていた。ボールが切れた時に相手チームが選手同士で話している場面を見ると、相手は前から行っていいのか、リトリートした方がいいのか迷っていたみたいだった」。
この試合の5日前に戦った全北現代の厳しいプレッシングに比べれば、湘南のプレスはさほど脅威ではなかった。プレッシングを受けているという実感があまりなかった選手もいたほどだ。阿部勇樹は「そんなに前にプレッシャーに来ていなかったので、どこかでスピードアップして、ワンタッチで崩せたらと思っていた」と話す。
槙野智章も戦前のイメージとは違ったと吐露する。「正直、もっと来るんじゃないかなという印象を持っていた。湘南のスカウティングもしっかりしていたし、1トップ2シャドーの選手がハイプレッシャーをかけてきて、なおかつ90分間落ちないくらいのプレッシャーをかけてくるというイメージだったけど、あまりこないな、という印象だった」。
実際のところ、湘南は前からボールを取りにいこうとはしていた。鎌田も「チームとしてはもっと前から行って、いい形で奪おうとしていた」と話している。だが、前から行ってもボールが取れなかったので、引かざるを得なくなったのだ。浦和がコンディションが悪い中でもパスを通し続けたことで、湘南からプレッシングに行く勇気を奪い取っていたのだ。
後半はもう、浦和のゲームだった。自陣で引いて守る湘南に反攻の力はなかった。後方でビルドアップして攻める形を持っていない湘南は、浦和の攻撃を跳ね返しても、そこから相手ゴール前まで迫ることができない。だから、どうにかして前で奪おうと高い位置を取ろうとするが、かわされるのが怖くて思い切って寄せにいけなくなっていた。曹貴裁監督は「後半はもっと高く保って戦っていきたかった」と唇を噛んだが、もうそういう形に持っていけるような試合展開ではなかった。
試合を支配した浦和は次々とチャンスを量産。57分に原口元気がゴールに迫ると、64分にも原口が決定的なシュート。そして73分には柏木が「狙っていない。ラッキーだった」と苦笑いしたCK弾でリードを2点に拡大。その後も興梠、マルシオ・リシャルデスなどがゴールを脅かし、2−0では満足できないくらいの力量差を見せつけて白星を飾った。
以上
2013.04.15 Reported by 神谷正明
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