示されたアディショナルタイムは4分。ギラヴァンツ北九州の最後の猛攻が始まる。アウェイゴール裏に陣取るサポーターの声に導かれるように、シンプルに長いボールを放り込み、そして人数をかけてアビスパ福岡ゴールに迫る。90+2分にはキム ドンフィが放ったシュートが右ポストを叩いた。どちらが福岡を代表するかを決めるのがダービー。たとえアウェイであろうとも勝利以外に意味はない、そんな気迫が伝わってくる。
だがアビスパ福岡は譲らない。前半からアグレッシブにボールを追い続けた体力は限界に近付いていたが、そんな選手たちにサポーターたちが力を与える。途切れることのないチャント。スタジアム全体から起こる手拍子。それに押されて選手たちがボールをはね返していく。そして、宮本亨が放り込もうとしたボールをオズマールが体を投げ出してブロックしたところで、大きく、長いホイッスルの音が鳴り響いた。スコアは2−1でアビスパ。「サポーターに感謝したい。最後の15分間は我々にとって苦しい時間帯だったが、サポーターによって助けられた。そして、柱谷幸一監督(ギラヴァンツ)が『ダービーを制した者が九州を制す』と話していると聞いたが、私も同感。だから、私たちが九州で一番いいチームだ」。マリヤン・プシュニク監督(アビスパ)は高々と宣言した。
立ち上がりからアビスパのアグレッシブさは際立っていた。攻撃の始まりは高い位置からの守備。まずは坂田がボールに対してプレッシャーをかけると、それを合図に、2人、3人と激しくボールに寄せる。ペース配分などお構いなしに、フルパワーでギラヴァンツに襲い掛かる。「前線の選手の守備の意識がものすごく高かったし、自分たちも手応えを感じていた」(石津大介)。その言葉通り、チーム全体でギラヴァンツに圧し掛かるようにプレッシャーをかけ、相手を自陣に押し込めた。決してギラヴァンツが悪かったわけではない。時折ゴールへ迫るボールの運び方からは、この試合に向けて万全の準備を積んできたことが窺えた。しかし、それを上回る激しさがギラヴァンツの良さを奪った。
そしてアビスパの先制点は13分。金久保順が送ったスルーパスに反応した金森健志が反応してビッグチャンスを作ると、GK武田博行がたまらずファール。これで得たPKを坂田が確実に決める。2点目は22分。3人に囲まれながら左サイドをドリブルで突破した金森がクロスボールを送り、石津を経由して中央にこぼれたボールを金久保順が豪快に蹴り込んだ。「失った後の守備の切り替えが遅くて、そこで相手にウチの守備が整う前に、速く攻められて失点した」と柱谷監督は悔やんだが、それこそがアビスパが狙いだった。
だが、ギラヴァンツは諦めない。後半開始早々の49分に、渡大生のクロスに冨士祐樹が頭で合わせて1点差に迫ると、ここからはギラヴァンツのペース。高い位置からのプレスが緩んだアビスパに対し、攻守の切り替えを速くして、ボールをしっかりとつないでアビスパゴールに迫る。ほどなく主導権はギラヴァンツに移った。
しかし、試合途中で降り出したスコールのように激しい雨を合図にしたかのように60分を過ぎると、アビスパが再び高い位置からボールを追い始める。ここからの15分はアビスパの時間帯。勝利を決定づけるべく、サポーターの声援を背に受けてゴールを目指した。そして最後の15分は、互いの誇りのぶつかり合い。両サポーターも力の限りにチームを後押しする。そして最後は、シンプルにボールを前線に送り込んでパワープレー気味に攻めるギラヴァンツがアビスパを慌てさせたが、結局ゴールは生まれず。5度目の福岡ダービーは、ホーム・レベルファイブスタジアムで戦うアビスパが勝利を手にした。
両チームが誇りをかけて激しくぶつかり合った試合は、まさにダービーの名にふさわしいもの。前半の主導権はアビスパ。後半はギラヴァンツのペース。最後まで、どちらが勝つのか分からない試合だった。それでも結果に偶然はない。「絶対に負けたくなかった。そういう部分では相手をまさった所があったと思う」(金森)。それこそがダービーの結果を分ける唯一のものだ。
そして、ダービーはこれからも続く。ギラヴァンツは、この日の悔しさを胸に次の戦いに挑み、アビスパは、自分たちの誇りを守るべく力の限りにぶつかる。そうした戦いの一つひとつが福岡ダービーの歴史として刻まれていく。次の福岡ダービーは第36節(10月6日)。はたして、どのような歴史が刻まれるのだろうか、今から楽しみだ。
以上
2013.04.15 Reported by 中倉一志
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