ホームの磐田にとっては試合開始早々から“我慢”を強いられる展開となった。
5分、自陣ゴール前でパックパスを受けた川口能活に、広島が揺さぶりをかける。川口の左手にいた藤田義明に高萩洋次郎、右手にいた伊野波雅彦に佐藤寿人がマークにつき、いわゆる“フタ”をした状態に。次の瞬間、川口が右足で伊野波を狙ったショートパスを佐藤がカットし、そのまま左足で無人のゴールに蹴り込んだ。「直接ボールを取ってゴールを決めるとは思っていなかった」(同選手)とのことだが、献身的なボールアプローチが功を奏したゴールだった。
結果的にこの1点が勝敗を分けることになった。ただし、前半広島に訪れたチャンスはこの場面のみ。序盤から1点を追うことになった磐田だが、ここから大きく崩れることはなかった。その後広島より長くボールを支配し、押し込む場面も幾度となく作った。23分には駒野友一のCKをチョ ビョングクが頭で合わせたが、わずかにゴール横。25分には松浦拓弥のパスを受けた前田遼一がドリブルで切れ込み、33分には伊野波の縦パスを受けた金園英学が反転しながら右足を振り抜いたが、これもゴール横に外れた。金園には前半終了間際にも立て続けに決定機が訪れたが、いずれもゴールを決めることができず、0-1で前半を折り返すことになった。
前半を内容だけで見れば磐田に軍配が上がる。だが、広島にボールを持たされている感、攻めさせられている感があったことも事実。「しっかり地に足をつけて守ることができた」と語るのは広島・西川周作。1点リードしているのはあくまでも広島。前線の佐藤を含む全員が自陣に入り、厚い守備ブロックで磐田に応戦。ゴール前の最後のところで体を張り、無失点でしのぎきった。マイボールのゴールキックの際には広島の先制点の場面のように磐田にプレッシングで牽制されたが、こちらは冷静に対応。西川は「ハーフタイムにもっとつなげると声をかけ合っていた」と明かし、こう続けた。「相手も(プレッシングに)来ていたけど、最後まで追えるわけではない。それを一つかいくぐることができれば、ボランチのところがフリーになっていたので、そこは狙っていた」。
広島にとっては後半も磐田にボールを支配される展開になったが、最後のところで踏ん張った。64分に宮崎智彦、72分には山田大記、73分には金園にゴールを脅かされたが、いずれも西川の守備の範囲内。76分にはCKのこぼれ球に反応した伊野波にポスト直撃のシュートを打たれ、さすがに肝を冷やしたが、結局最後まで磐田にゴールを許さなかった。試合終了間際には前がかりになった相手の背後を突き、注文通りのカウンターを発動。スルーパスに抜け出した途中出場・野津田岳人が左サイドからクロス。これをゴール前に走り込んだ石原直樹が押し込み、ゲームを決めた。
繰り返しになるが、序盤の1点が両者の明暗を分けることになった。1点を先制したことで楽になったのは広島。ピンチもあったが、ある程度守備から攻撃というスタンスに専念することができた。もちろんボール保持という点では自分たちのスタイルを体現できたとは言えず、森保一監督も会見で「さらに攻撃的な部分を出すことが今後の課題」と話していたが、劣勢でも勝ちきれる勝負強さはやはり昨季王者の“風格”と言えるだろう。
一方、敗れた磐田は結果的に序盤の失点が重くのしかかることになった。失点を招いた川口は「最初のプレーが全て。あれが今日の敗因。あれで試合を壊してしまった…」と責任を一身に背負った。試合後、森下仁志監督は川口のプレーを「トライしようとして起きたミス。全く問題ない」とかばった。もちろんあってはならないミスだが、昨季よりボールポゼッションを軸とした攻撃的サッカー・スタイルの構築を目指してきた磐田にとっては、“起こりうるミス”という言い方もできる。スタイルを貫くためには今後もこの手のリスクを常に背負うことになることになる。だからこそ、指揮官は「最初の失点を2点、3点で跳ね返すようなチームになってほしい」と攻撃面に目を向けた。「最後の“仕上げ”の部分だと思う。すごく責任を感じています…」とうなだれたのは決定機の決めきれなかった金園。これでクラブワースト更新となるリーグ開幕7戦未勝利。順位は10年3月以来3年ぶりとなる最下位となった。
以上
2013.04.21 Reported by 南間健治
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