前半は全体のバランスに欠け、中盤やサイドで食い付く形で相手に引き出されては、空いているスペースを突かれてピンチを招く。また、ボールを奪ったとしても、前線に流動性がないためパスコースがなく、最終ラインから裏に蹴って相手にボールを渡すか、サイドに展開してセントラルコーストの守備陣に追い込まれ、奪われて逆にカウンターを浴びる。前半は、得点の気配の感じられない出来に終始した。
「ボランチがもう少し前で、攻守に渡ってプレーできるように動かし、それでボールの取り方が良くなり、奪った後も前に人数がいるので、FWのサポートにボランチがいるという形が作れた」(ネルシーニョ監督)。ハーフタイムの指示によって修正を施すと、柏は全体のバランスを取り戻した。何より、前半は互いに補完し合うことができなかった栗澤僚一、谷口博之のダブルボランチが、後半は安定した舵取り役をこなし、最終ラインまで降りてビルドアップに加わる、または高い位置を取って攻撃陣をサポートする動きが増え、柏のボールの回りが格段に良くなった。
後半の立ち上がり、コーナーキックのセカンドボールからダニエル マクブリーン、パトリック ズワンズワイクが立て続けにシュートを放ったシーンは、この日の最大のピンチでゴールに叩き込まれてもおかしくはない場面だったが、守備陣の体を張ったシュートブロックで失点を阻止できたことが、その後の反撃につながった。
先ほど述べたネルシーニョ監督のポジショニングの修正によって柏はリズムを掴むのだが、ボランチの好プレーによるところが大きい。象徴的なのが59分の先制点の場面。前半にはボランチから勝負の縦パスが入ることは皆無だった。それが前半からセンターバックとの駆け引きの中で何度も飛び出し、その都度オフサイドに掛かっていた工藤壮人の動き出しと、栗澤のスルーパスのタイミングが合致する。「1対1には自信を持っている。GKのポジショニングも悪いと思っていたので、流し込むだけだった」(工藤)。何度も掛かり続けたオフサイドによって、飛び出すわずかなタイミングを掴んだ工藤。まさにストライカーの面目躍如だ。
ビハインドを背負い、ラウンド16に勝ち進むためには勝点3が欲しいセントラルコーストは、カウンター狙いだった前半から、トップに当てたボールに2列目の選手が絡むといった具合に前に重心を傾ける。ただ、ここでもボランチが2列目から入ってくるセントラルコーストの選手を捕まえることができており、以前までは“柏のボランチ”としての役割をこなせず、時にバランスを失う原因にもなっていた谷口博之も、徐々に柏のやり方に慣れてきたのだろう、「クリさん(栗澤)を中心にやったから」と謙遜はしたが、後半はビルドアップに加わることも、中盤で落ち着かせるプレー、または攻撃陣のサポートもできており、“柏のボランチ”としてのイメージが谷口の中で出来上がりつつことを感じさせた。むしろセントラルコーストが出てきたことによって、バイタルエリアのスペースが空き、谷口は「点が入ってからは楽になった。やりやすかった」と語っている。今シーズンの大型補強で加わった選手がまた一人、フィットしようとしている。
後半もマイケル マクグリンチー、ジョシュア ローズという、セントラルコーストの左サイドに突破を許されはしたが、そこでも失点を許さなかったのはクロスに対して体を張ることや、中へ入ったクロスに競り勝つといった粘り強い守備が発揮されたからだ。そして、AFCチャンピオンズリーグの柏は、こうした守備陣の粘り強さを受けて、しっかりと攻撃陣が決めるべき時に決めるという良い流れができている。この試合でも79分にゴール前で相手DFがクリアし損ねたボールをクレオが詰め、85分にはゴール正面のフリーキックをレアンドロ ドミンゲスが直接決めた。
3−0と最終的に点差は広がったが、試合内容にそこまでの開きがあったわけではない。悪い流れでも失点せず、先週末の大宮戦の大敗を教訓として、粘り強い守備と決定力で悪い流れを断ち切ることに成功した。だが試合後、菅野孝憲はこんなことを言っていた。「敗戦を教訓にするのは大事だけど、今の僕らは勝利を教訓にできていない。それが連勝できない原因です」。負けた原因を次の試合に向けて正すだけではなく、勝った要因を次の試合でも継続していく。強豪揃いのACLグループステージで無敗の首位通過は見事な結果であるが、菅野の言葉通り、勝利の教訓を次の試合でも継続することが、今の柏には最も大事なことだ。
以上
2013.05.01 Reported by 鈴木潤
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