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【AFCチャンピオンズリーグ2013 広島 vs 北京】レポート:あえて言おう。勝たねばならなかった、と。若き広島、北京国安を驚かせるにとどまる(13.05.01)

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ピッチを照らし続けたライトが落ち、暗闇が世界を支配する中で、現実の厳しさと未来への想いが交錯した。

ACLで3分3敗。1勝もできず、ホームでは得点すら奪えなかった。一方で、相手が決勝トーナメント進出をかけた真剣勝負の場で、10代トリオの1トップ2シャドーをはじめ、20歳の井波靖奈や22歳の岡本知剛やパク・ヒョンジンを中心に互角以上の闘いを演じたことも事実である。
ただ、岡本は試合前に「もう引き分けはいらない」と語り、「このメンバーで結果を出したい」と野津田岳人も口にした。だからこそ、彼らにはこう語りかけるべきなのかもしれない。
この試合は、勝たねばならなかった。
そんな要求こそ、見事な奮戦を見せた若者たちに対する礼儀だと考える。ブニョドコル戦でもいい内容のプレーを見せた彼らにとって、次に求めるべきものは結果、つまり「勝利」を手にして初めて納得と成長を、彼ら自身が実感できる。だが、それはかなわなかった。ACLでは2試合連続失点ゼロ。素晴らしい。しかし、2試合連続無得点。チャンスを量産しながら、どうしてゴールできなかったのか。そこは厳しく、見つめる必要がある。

前半の広島は、ブニョドコル戦よりもさらに素晴らしい内容だった。特に両サイドの動きは白眉。右サイドの井波は持ち前の身体能力の高さを見せ、豊富な運動量をベースに走り回って相手の左サイドを引き裂いた。パク・ヒョンジンの決定的なシュートを導き、水本裕貴の決定機をつくるCKを生み出したクロスは抜群の精度。左サイドのパク・ヒョンジンもクロスだけでなくゴールもアグレッシブに狙い、そのワイドでダイナミックな攻撃を演出したのが10代トリオのリズミカルなパス交換だ。

戦術家として知られるスタノイェビッチ監督(北京国安)は、広島の若者たちに対する研究も怠りなかったはずだ。しかし前半からの劣勢に彼は苛立ち、テクニカルエリアにずっと立ち尽くしていた。アウェイであり、引き分けでもいいという状況から、リスクを冒さない戦い方は計算どおり。しかし守備の局面での厳しさが、ホーム・北京での彼らとは違った。若い選手たちの躍動に振り回され、試合の主導権を握られてしまった。
24分、カヌーテのヘッド。その1分後にはピアオ・チョンのミドル。決定的なシュートを北京国安は放ったが、そのいずれも増田卓也がスーパーセーブ。CKからゲロンがヘッドで押し込んだがオフサイド。
中国の雄の反撃をしのいだ広島は、さらにギアをあげていく。精密なポゼッションから縦パスにつなげ、野津田が、川辺駿がゴールに迫った。37分、パク・ヒョンジンが放ったFKは、ポストのわずか数10センチ右を通過。北京国安はハーフタイムまで広島の攻勢にさらされ続けた。
勝負に「たら、れば」はない。しかし、あらゆる部分で相手を上回っていたこの前半にゴールを決めていれば……。試合後、そんな想いが胸をよぎった。

後半、知将・スタノイェビッチ監督は、まず2トップを1トップに変更して中盤に厚みを加え、さらに守備ブロックを前半よりも数メートル下げてスペースを消した。それでも58分、川辺にポスト直撃のシュートを打たれるなど、ペースが広島から動かないと見るや、指揮官はFWゲロンに代えてDFとしてもプレーできるヤン・ユンをボランチに投入。マティッチと共にシャドーの10代コンビへのマークを強化したのである。
森保一監督は石原直樹、さらに高萩洋次郎を送り出すも、北京国安のブロックは強固だ。カヌーテや72分に投入されたシャオ・ジアイーらヨーロッパで経験を積んだベテランたちが効果的なカウンターを演出し、広島の攻勢を削ぐ。試合終盤には岡本や塩谷司がミドルレンジからシュートも放ったが、すべて跳ね返され続けた。後半、北京国安のシュートはわずか2本。しかし、72分のヤン・ユン投入以降、試合をコントロールしたのは中国の勇者たちだった。

「サポーターに申し訳ない」
両チーム最多となる4本のシュートを放った野津田は、言葉を絞り出す。勝てなかった結果のすべての責任を背負った表情で、ルーキーは悔しさに顔をゆがめた。チャンスの総数でも決定機の数でも凌駕したが、最後は相手の経験を上回れなかった屈辱感を、若者は感じている。
だからこそ、「よくやった」という言葉は、彼らにはふさわしくない。あえて言おう。勝たねばならなかった、と。この試合、いやACLの6試合で何を学んだか。その成果を彼らが見せた時に初めて、「ACLは素晴らしい経験になった」という言葉を贈ろう。
必ずやれるという実感は得た。だからこそ「勝たねばならなかった」という想いを、忘れてはならないのである。

以上

2013.05.01 Reported by 中野和也
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