34試合を戦うリーグ戦は物語のようなものだ。山があれば谷がある。この試合も1試合だけ独立して見れば、互いにミスが多く、ゴール前での精度の低さばかりを感じさせる内容だったかもしれない。しかし、物語が前後の文脈があって初めて成り立つように、この試合も両チームがたどってきた結果と内容、特に前節を踏まえて見ると、途端に姿を変えてくる。1−0で鹿島が勝利をおさめたが、鹿島は前節の疲労感がありありと残った内容であり、湘南はいまの苦境を乗り越える確かな一歩を残す内容だった。
序盤から仕掛けたのは湘南だった。
「通常であれば我々がアクションして、相手がリアクションするのですが、今日は残念ながら相手にアクションを起こされた」
セレーゾ監督がそう振り返ったとおり、連敗中という負の要素を振り払おうとするかのように、湘南の選手たちは鹿島の最終ラインに積極的にプレッシャーをかけていく。開始直後こそ、高く設定したDFラインの背後を取られ、危うい場面をつくられたが、その後はプレッシャーをかけてアバウトなボールを蹴らせて奪う、という狙いがうまく機能する。ボールを奪えばトップの馬場賢治にボールを当てて、複数の選手がすばやくサポートに入る。ただ細部の精度を欠き、鹿島のDFを本当の意味で慌てさせるまでには至らなかった。
鹿島はリスクを避けて長いボールを選択したがセカンドボールを拾うことができず、相手のミスからボールを保持しても攻撃は散発だった。しかし、一人のプレーが試合の状況を一変させた。31分、曽ヶ端準のゴールキックを小笠原満男がヘディングで繋ぐと、ダヴィがうまくトラップして前を向く。まだゴールまでは距離があったが、思い切り左足を振り抜くと、強烈なドライブがかかったシュートはゴールに吸い込まれ鹿島が先制点をあげた。
しかし、プレーの意図をより多く表現できていたのは湘南だった。
「去年のJ2の試合と比べても三本の指に入る試合だったかな、と自分でも思う」
そういって曹貴裁監督は選手たちを讃えた。連敗中にも関わらず、チームをよみがえらせ、J2の時に見られていたゴールへ積極的に向かう姿が徐々に見られるようになったのは、大敗したこの2戦とは大きく違う前進だ。
「やってる方向で結果が出ないからといって、ミドルシュートを打ちまくろうとか、セットプレー頼みになるとかは、本当に我々の良さを消してしまうと思う」
そういって、いまの路線を貫く意志を見せた。
1−0で逃げ切る強さを見せた鹿島は6戦無敗と好調さを維持したが、前節のようなテンションの高さを維持することができなかったのは大きな課題。
「チームとしてはもっともっと厳しく、シビアに考えていかないといけないと思っています」
試合後のセレーゾ監督のコメントも厳しいものだった。
以上
2013.05.07 Reported by 田中滋















