「名前を呼ばれた時は緊張しました。先発のピッチに立つのは、また新しい感覚でした。課題も多かったですけれども、収獲も、それなりにありました」
初スタメンに名を連ねた第12節の神戸戦。ミックスゾーンで声をかけると、少し嬉しそうな表情を浮かべて応えてくれた。そして「また出たいです」と力強く話した。
三島勇太。アビスパ福岡U−18出身の18歳。今シーズン、ただ1人、トップ昇格を果たした。1月14日に行われたシーズン新体制発表会での印象は、まだまだ時間がかかるだろうなというものだった。まだ彼のプレーを見たわけではなかったが、高校を卒業した選手が、いきなりプロの世界で活躍することは難しい。まして、あどけなさを残す、おとなしそうな青年が厳しいプロの世界でプレーするためには、いろんな面で経験を積むことが必要だろうと感じたからだった。
ところが、トレーニングを見て、すぐに印象が変わった。朴訥とした雰囲気は記者会見のままだが、誰よりもアグレッシブにプレーする。ボールを持ったら迷わずにゴールへ向かう。そして、奪われれば激しくボールにアタックして奪い返しにかかる。相手が先輩であろうと、誰であろうと、その態度に変わりはない。練習が終われば、相変わらず朴訥とした、おとなしそうな青年なのだが、ピッチに立てば、高卒ルーキーということを周りに感じさせない。その姿は記者会見で見せた印象とは全く別のものだった。
来る日も、来る日も、変わらない姿勢でプレーする姿がマリヤン・プシュニク監督の目に留まるのに時間はかからなかっただろう。その証拠に、開幕戦でベンチ入りを果たすと、その後も試合登録メンバーとして名を連ね、ここまで12試合を戦ってベンチ入りを果たせなかったのは第9節・群馬戦だけ。「サッカー選手に若いとか、ベテランとかいう区分はない。いい選手か、そうでない選手なのか、それだけだ」とプシュニク監督は常々に口にするが、彼を「若手枠」としてではなく、戦力としてベンチに置いていることは明らかだ。
「彼の特長は、スピードがあって、アグレッシブにプレーするところ。まだ若いので、いろんなことを学んでいる最中だが、また、どこかでチャンスをつかむのではないかとみている。そして、彼の練習態度や、サッカーに対する意識の高さを見ていると、そのチャンスが近づいてきているのではないかと思っている」。これは神戸戦を控えた5月1日、メディアの囲み取材に応えたプシュニク監督の三島評。そして3日、その言葉通り、三島は初めてスターティングメンバーに名を連ねた。
3月31日のデビュー戦(対水戸)では「緊張してプレーもガチガチになってしまいました。全然、経験がないので、何をしたらいいのか分からなかったです」と話していた三島。ボールを失うのを恐れて、仕掛けるべき所で相手から逃げるシーンもあった。しかし、この日は違う。最大の持ち味である「仕掛ける姿勢」を前面に出してプレー。16分には、ゴール前に現れて金久保順からのパスを胸で落として坂田大輔へラストパス。決定的なシーンを作り出した。プシュニク監督も「彼のプレーには満足している」と合格点を付けた。
もちろん課題もあった。突破を図る前に体を強くぶつけられて、2度、3度と跳ね飛ばされた。それだけ相手を本気にさせたということだが、「前を向く前に相手に体をぶつけられてボールを放してしまうことがあったので、そこを負けないように鍛えていきたいです」とは本人の弁。試合翌日、雁の巣球技場で改めて試合の感想を聞くと「体を強くしたいです」と同じ言葉を繰り返した。相当悔しかったに違いない。
さて、Jリーグデビューも、初スタメンも、終わってしまえば単なる通過点に過ぎない。大切なことは、いい時も、悪い時も、変わらぬ姿勢でサッカーと向きあい続けることだ。そして、近い将来、アビスパで育った選手が、アビスパを牽引する中心選手になることを、多くのサポーターが期待している。
以上
2013.05.07 Reported by 中倉一志















