2−2。磐田は2点を取り、2点を失った。F東京は2点を奪われ、2点を奪い返した。単純に言えば、そういう試合だった。
磐田は、監督交代から準備期間1日という短い時間しかなかった。その中で長澤徹ヘッドコーチは伝えることを「精査して落として落として芯をというイメージだった」と言う。システムを昨シーズンまでの形である4−4−2へと戻し、今季リーグ戦未出場のルーキーの田中裕人を抜擢して試合が始まる。中盤と最終ラインがフラットに並び、前線もプレスバックして守備を厚くした。「ある程度、主導権は握られる」という覚悟だったが、この守備が機能を果たした。前半、奪ったボールはサイドへと展開し、左サイドからは山田大記が仕掛け、右サイドは駒野友一が周囲との連係で切り崩す。そこから前田遼一、金園英学がクロスを引き出すという狙いがうかがえた。同時に、田中を最終ラインの前に残し、小林裕紀にはある程度の自由を与えてボールへの関わりを増やさせていた。
その結果、29分にコーナーキックから1点を先制し、40分には右サイドのアーリークロスから前線に上がっていた小林が追加点。磐田は体を張った守備でF東京の攻撃を封じ、2−0で試合を折り返すことに成功した。磐田の挙げた2得点は、いずれも横からのボールにF東京の選手がゴール前でボールウォッチャーとなってしまったことに起因していた。長澤ヘッドコーチは「イメージどおりに選手たちはやってくれた」と語っている。意図的な狙いも多分に含まれていたはずだ。前半を終わった時点でほぼ磐田の勝ちゲームの様相を呈していた。
しかし、F東京が後半、盛り返す。前半は、磐田の3ラインのブロックと、体を張った守備を崩せず、失点を重ねてしまった。試合後の権田修一は「体力的に辛いときの失点がこういう結果を招いた。体が重いときに0−0でロッカールームに戻ることを考えるべきだった」と、反省の言葉を並べた。
2点のビハインドを追いかけるF東京は59分、李忠成と石川直宏を同時にピッチへと送り出した。さらに、ポポヴィッチ監督は72分に、平山相太を投入して勝負を仕掛けた。代わって入ったこの前線の3選手が互いを補完しあって劇的な展開へと動き出す。
前線に交代選手が並んだ直後の73分、平山が左サイド深くまで侵入して中央へと折り返す。「浮かさないことだけを意識した」という石川が走り込んで左足を振り、ゴールネットを揺らして反撃が始まる。李と石川が入って推進力が上がり、そこに平山の高さとキープ力が加わって攻撃の迫力が増した。磐田の運動量が落ちたことも重なって敵陣でのプレー時間がどんどん長くなっていく。場内のデジタル時計も消え、2分が経過する。平山がGKと競りあってこぼれたボールを太田宏介がライン際で拾って中央へと送った。李がそれを左足で押し込んで土壇場で試合を振り出しに戻して終えた。
磐田は、勝負を決める3点目を取り損ねた。後半の失点直後、カウンターから右サイドの深い位置で駒野がキープし、攻撃をやり直してミドルシュートを放った。ポストを叩いたこのシュートが入っていれば、そこで試合は終わっていただろう。また、そのほかにもカウンターを仕掛けたところで「ファイナルタッチが乱れた」(長澤ヘッドコーチ)場面も存在した。疲労や焦りからくる判断ミスを引き起こしたことで勝負を決め切れなかった。駒野は「ボールを奪っていい形は作れたが、決めきるところはまだまだ。押し込まれる展開になったが相手のサイドの裏を狙って時間を稼ぐことも考えればよかった」と言う。取りきれなければ、守りきる選択もどこかで下さなければいけなかった。
F東京は2失点目がなければという試合だった。前半を最少失点で切り抜けば、逆転もあったかもしれない。ただし、李、平山、石川が2点を運んできたことは大きな意味を持つ。突き抜けた個性を持つ彼らの活躍は固まりつつあったメンバーの可能性を広げた。力のある組み合わせは、まだまだ存在する。その日の相手やシチュエーションに合わせて靴を履き分けることだってできる。ポポヴィッチ監督に、お気に入りの一足だけがすべてでないことを彼らは身をもって示していた。「俺を忘れちゃ困る」。試合後の李の言葉は代表監督だけに向けられたものだったが、いろんな意味を含んでいたように聞こえた。
以上
2013.05.07 Reported by 馬場康平















