ズデンコ ベルデニック現大宮監督が仙台の監督だった、2004年のこと。当時の試合後記者会見でのスロヴェニア語によるベルデニック監督のコメントには「スタビレ」とか「スタビーレン」とかそういう言葉が頻出していた。英語の stabile (安定した)に相当するのかと思い調べるなどしてみたところ、やはりそういう意味の言葉だった(stabilen)。それを知ったあとで日本語の会見テキストを読み返してみれば「このチームにはまだ安定感が足りない」とか「安定感を身につける必要がある」とかそういうかたちでこの言葉は使われていたようだった。当時のJ2で藻掻いていた頃の仙台は、確かにベルデニック監督の求める複雑な組織力を身につける途上で、安定感を欠く戦いが続いていた。
残念ながらベルデニック監督はそのシーズンを終えると、仙台を去ることになった。J1昇格を達成することはできなかったが、今も仙台に残る人的・戦術的財産は少なくない。2004年当時に2年目だった菅井直樹や中原貴之は今も仙台でプレーを続け、ルーキーだった当時から大車輪の活躍を見せていた梁勇基は今ではプロ10年目、堂々たる背番号10である。当時は選手だった渡邉晋・原崎政人の両氏は現在は仙台のコーチだ。また、2004年に仙台にやってきたコーチが…手倉森誠現仙台監督である。
手倉森監督率いる仙台は年々組織力を増し、それにともない安定感も増して、昨季は優勝争いをするまでに成長した。今季は初挑戦のACLと並行して戦うJ1の舞台で安定感を欠く戦いも少なからず経験してきたが、5月1日の江蘇戦を最後にACLの敗退が残念ながら決定。「今までに感じたことのない悔しさだった」(手倉森監督)「本当に悔しい終わり方をしたのでまたこの舞台に戻りたくなった」(梁)という気持ちのもと、ACL連続出場という目標も加え、出遅れていたタイトル争いへの思いを強くした。
その結果が前節の名古屋戦での快勝である。強敵を相手に、しかもアウェイで2-0と無失点での勝利。カウンターを中心に戦いながら、時に落ち着いたボール回しで相手のプレッシャーをいなす場面も多く作った。この勝利で得た自信を、これからの試合を勝ち抜く安定感に変えたいところだ。
ここで仙台の前に立ちはだかるのが、ベルデニック監督が率いる大宮である。2004年の仙台が欲しくても身につけられなかった安定感に加え、7連勝、さらに昨季から続くJ1リーグ戦21試合連続無敗という記録を更新中だ。勢いもある。ノヴァコヴィッチとズラタンの強力2トップが目立つが、青木拓矢と金澤慎の両ボランチが司る攻守のバランスも安定しており、大崩れしない。新加入の高橋祥平に象徴されるように最終ラインの大胆な押し上げなどをもって、前線から最終ラインまでのコンパクトな布陣も実現できる。それこそ、昨年に開幕から9戦無敗を続けていた仙台が持っていた強さ―――赤嶺真吾とウイルソンの2トップ、角田誠と富田晋伍のボランチの働きなどなど―――に似ているところもある。
渡辺広大のコメントは示唆に富む。「お互いに『真面目なチーム』という印象。真面目に、継続して組織力を出して勝負したい」。両者が互いの強みを発揮できれば、ハーフウェーライン付近に前後の幅が詰まった両者の布陣が敷かれ、狭いゾーンでのボールの奪い合いが見どころとなるだろう。そして、相手のラインの裏を突くためには、時にセオリー通りではない「勝負の一手」も必要となってくる。
ではその、勝負を決める「勝負の一手」は何か? それは大宮のズラタンが第6節C大阪戦で決めたリフティングのちボレーのようなアイディアかもしれないし、仙台の柳沢敦が第10節名古屋戦で決めたダイビングヘッドのような泥臭さかもしれない。はたまたコンパクトさも強烈なプレッシャーも関係ないセットプレーかもしれない。組織力に個人技などの+αを加えることで、互いにチャンスをつかみたいところだ。
大宮が連続無敗記録を伸ばすか、それとも昨季第23節の対戦で大宮に現在のところ最後の黒星をつけた仙台が相手に土をつけるのか。自らに安定感と勢いを身につけるために、両チームはユアテックスタジアム仙台で激突する。
以上
2013.05.10 Reported by 板垣晴朗
J’s GOALニュース
一覧へ【J1:第11節 仙台 vs 大宮】プレビュー:記録更新の有無を分けるのは安定感か、勢いか。組織力を武器とする両雄の「勝負の一手」に注目。(13.05.10)















