前節、ホームで仙台に完敗を喫した名古屋が、強い危機感を持って再び豊田スタジアムでのゲームに臨む。相手は今季好調の横浜FM。強敵である。今節では栗原勇蔵と中町公祐という中心選手を出場停止で欠くが、34歳となった今も異次元のプレーを見せる中村俊輔を筆頭にタレントが揃い、それ以上に組織力の高さが際立つチームは非常にハイレベル。現在リーグ連敗中の名古屋はこの窮状から脱却する方策に加え、この難敵に対する何らかの策を持ってキックオフの時を迎える必要がある。
それは指揮官も理解しているようだ。試合2日前となる木曜日の練習で、ストイコビッチ監督は“通例”を破った。いつもならばコンディショニングを主眼に置いたトレーニングが行われるタイミングで、戦術練習を行ったのだ。ゲーム形式の練習においてスタメンと思われるチームが組んだ布陣は前線のタレントを活かしきる4-2-3-1。藤本淳吾が「役割がハッキリしていい」と言うバランスの良いフォーメーションだ。そしてストイコビッチ監督は紅白戦を途中で何度か止め、ビルドアップとサイド攻撃のアイデアを熱っぽく指導。こういったことは名古屋の、シーズン中の練習では珍しい部類に入ることである。さらに紅白戦の最後にはセットプレーのパターンもいくつか確認する念の入れようだった。ストイコビッチ監督は練習メニューをもって、明らかな危機感をチームに提示したのである。
首脳陣の焦りにも似たアクションに、名古屋の選手たちの反応は様々だった。藤本は「このトレーニングをどう考えて、どう判断するかは選手。その場しのぎにはしたくない」と語り、古巣対決となる田中隼磨は「自分にはクロスの精度を求めているし、その他の選手に対しても色々な意味を含んだ練習だと思う」と意図を汲み取った。増川隆洋は「基本的なことですよ。でも原点に戻ってやれることをしっかりやれるようにすることも大事」と受け止め、主将の楢崎正剛は「これで曖昧だった部分が取り去れたわけじゃない。でも変えなきゃいけない中で、こういう練習をやらざるをえない」と表情を曇らせた。共通するのは、現状は間違いなく苦しいということと、そこから抜け出すことはそう簡単ではないという意識が垣間見えることだ。その上で、「それでも下を向いてる暇はない。ポジティブにやるしかない」という小川佳純の言葉が、選手とスタッフ、クラブ全ての覚悟を代弁する。
一方で、横浜FMはスタメンのセレクトとそこに込められる意図に注目が集まる。栗原の代役はファビオが濃厚だが、問題は中町のポジションである。ボランチでコンビを組む富澤清太郎が守備的な役割を担っているため、同じ特徴を持つ小椋祥平では中盤が重くなる。ゆえに候補としては兵藤慎剛や中村俊のボランチ起用が考えられるが、それでは攻撃面で決定的な力を欠いてしまう。前節で試したツートップの4-4-2にせよ、従来の4-2-3-1にせよ、前線のユニットの選定は樋口靖洋監督も頭を悩ませているところだろう。守備を固めて中村俊の創造性に賭けるか、中村俊のゲームメイク能力で前線の迫力をカバーするか。そう考えてみても、やはり横浜FMの浮沈を握るのは中村俊ということになる。彼がどの位置でプレーするかは名古屋にとっても最も気がかりな部分でもある。
横浜FMにとっての“鍵”が中村俊なら、名古屋にとってのそれは玉田圭司ということになる。同じく木曜日の練習後、ストイコビッチ監督は練習場のピッチの上で玉田と1対1で話し合った。10分か、15分か、とにかくじっくりと話し込んだ。玉田は「頑張れって言われただけだよ。戦術とかじゃなく、気持ちの部分。監督の期待はいつも感じているし、まだまだできるだろう?ということだと思う」と明かした。ストイコビッチ監督は2008年の就任当初から玉田にエースとしての全幅の信頼を置いている。それだけのパフォーマンスを見せてくれ、という檄に対し、玉田は「試合前にメンバーがわかっているのはイメージもしやすいし、選手同士で話し合いもできる。良い形でマリノス戦に向かいたい。自分や淳吾、小川のアイデアも出して、色々なバリエーションを見せたいです」と意欲を燃やしている。
ゆえに、試合の行方は名古屋の背番号11と、横浜FMの背番号25を追いかければ、自ずと見えてくる。玉田が中盤から前で小気味良いボールタッチを見せれば、名古屋の攻撃がうまく循環している証拠だ。それは中村俊も同じで、たとえボランチ起用されたとしても、チームが彼をその位置に押し上げることができていれば、試合の主導権は横浜FMの手中にある。創造性豊かな2人のエースを、それぞれのチームがどれだけ活かせるか。試合を構成し左右する要素は他にも様々あるが、まずはこの一点が最も見るべきポイントとなる。
折りしも今節はJリーグ20thアニバーサリーマッチに選ばれた鹿島vs浦和という「オリジナル10」同士の対戦があるが、もうひとつのオリジナル10対決が名古屋vs横浜FMだ。名古屋はこの一戦を皮切りに、7月の清水戦と鹿島戦、8月の浦和戦のホーム4試合でJリーグ20周年ユニフォームの着用を決定。黒を基調とした限定ユニフォームは、昨年、クラブの20周年記念に続く試みとなる。昨季はG大阪に0−5と大敗した因縁の黒いユニフォームだが、選手たちは特に引きずっている様子もない。「ユニフォームよりもプレーで目立ちますよ」と笑い飛ばしたのはキャプテン楢崎だ。心境としては開き直りに近い状態で名古屋は連敗ストップに挑む。
以上
2013.05.10 Reported by 今井雄一朗
J’s GOALニュース
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