試合終了のホイッスルが鳴ると、鳥取の選手たちは何人もがピッチに倒れ込み、東京Vの選手たちは誰もが肩を落とした。気温27.3度、湿度80%という蒸し暑さの中、双方が気力と体力を振り絞った消耗戦。後半にスコアが動いたものの、両チームとも勝利への決定打はならず、1−1の引き分けに終わった。
立ち上がりからしばらくは鳥取が、東京Vの3バックの背後、あるいはサイドのスペースをロングパスでシンプルに突く攻めを繰り出し、再三にわたってCKを獲得するなど押し気味に進めた。しかし東京Vは、GK佐藤優也が安定したキャッチングで決定機を作らせず、徐々にボール支配率で上回って反撃に転じる。前半の終わり間際には鳥取とは対照的に、セットプレーのチャンスから立て続けに決定機を作ったが、今度は鳥取GK小針清允が、的確な位置取りとパンチングで防ぎ、ゴールを割らせなかった。
後半は東京Vの攻撃のテンポが上がった一方で、鳥取も奪った後のつなぎやカウンターが効果的になり、一進一退の攻防が続いたが、57分に均衡を破ったのは東京Vだった。3バックの中央でプレーする鳥取DF柳楽智和が、ボールを奪った後にドリブルで右サイドに進んだものの、そこからのパスがミスとなって相手に渡してしまう。すぐさまカウンターに転じた東京Vは、右サイドでサイドチェンジのパスを受けた森勇介がセンタリング。「ボールがすごく良かったので、落ち着いて打つことができた」と振り返る常盤聡がフリーで飛び込み、ヘッドで合わせてネットを揺らした。
その後、しばらくは東京Vが押し気味に進めたが、追い付きたい鳥取の攻撃がより積極的になってきたのに対し、東京Vは高原直泰が「やっぱり、勝っていない弱さが出てしまう」と振り返ったように、徐々に勢いが衰えていく。そうするうちに66分、鳥取は久保裕一がペナルティエリア内で倒されてPKを獲得。絶好のチャンスをつかんだが、左側を狙った永里源気のキックはコースを読んだ佐藤に止められ、追い付くことはできなかった。
しかし直後の68分、その永里が左サイドをドリブルで駆け上がり、カットインから右足シュート。「スピードに乗ったところで、中の状況も見ながらだけど、シュートまで行こうと思っていた」と本人が語るシュートは、強烈なものではなかったが、相手の守備網の隙間を縫ってゴロでニアサイドを破り、同点ゴールとなった。
その後は、再びボール支配率で上回り、細かくパスをつなぎながら勝ち越しを目指す東京Vに対し、鳥取も縦に速いカウンターでゴールに迫る。蒸し暑さもあって双方の運動量が低下する中、終盤は東京Vが早めのクロスから空中戦に活路を見い出そうとしたが、鳥取も全員が踏ん張ってはね返し、最後までゴールを許さなかった。
先制点を生かせなかった東京Vは連敗こそ2で止めたものの、これで6試合未勝利となり、順位は14位から15位に後退。前述の通り「勝っていない弱さが出てしまう」と語った高原は、続けて「そういう弱さを克服していかないと、こういう厳しいゲームを勝ち切ることができない。自分たちで克服していかないと、引き分けか負けか、ということになってしまう。そこを乗り越えて、チームとして成長しなければいけない」と厳しい表情で語った。昇格争いに踏みとどまるためには、連勝で勝点を伸ばしていくことが必要で、絶望的な状況となる前に、その流れに持ち込むことができるか。しばらくは正念場の戦いが続きそうだ。
鳥取は、今季2度目の連勝はならなかったものの、過去5試合の対戦で1分4敗、1得点も奪えていなかった東京V相手に追い付いての引き分けは、パスを回されて苦しい時間が長かったことを考えれば、決して悪い結果ではないだろう。小村徳男監督は「後半は前からプレスをかけてボールを拾って、良いクオリティーのカウンター、縦に速い攻撃が、幾度となくできたのは、非常に良かった」と評価。小針は「後半に入って開始から攻撃への力が出せず、押し込まれる時間が続いて、踏ん張り切れずに失点してしまった。でも、そこから取り返して、引き分けに持っていけたのは、最低限の結果としてよかった」と振り返っている。
下位は混戦となっており、中位へと抜け出すためには、もう少しの踏ん張りが必要。ケガ人が多く、この日もメンバーが17人しかそろえられなかった(これで3試合連続。この日のメンバーの1人は、京都産業大から来季の加入がすでに発表されている、特別指定選手の安藤由翔〈あんどう・なおと〉で、90分に交代出場)ことに加え、次節は柳楽が警告累積で出場停止と、状況は楽ではない。ただ、今季最長の4連敗を喫した6月と比較すれば、7月は1勝1分のスタートで、復調の兆しを本物の勢いに変えることができるか、こちらも真価が問われる戦いが続くことになる。
以上
2013.07.08 Reported by 石倉利英















