昨年も同じことを書いた。しかし、やはりこのカードになると、どうしても感慨深くなる。広島の7番と8番。クラブにとって特別な番号への想いが強くなる。
今、この二つの番号は、もちろん森崎兄弟のもの。広島ユース出身者として初めてプロでの成功を勝ち取った二人の存在なくして、昨年の初優勝は語れない。その森崎兄弟以前に想いを馳せれば、やはり二人の偉大なフットボーラーに行き着く。7番・森保一、そして8番は風間八宏だ。
この二人のサッカー人生は、対照的だ。朝から晩まで休むことなく、3人の子どものために働き続ける母親の姿を見て育った風間の「才能の発露」は早かった。名門・清水商で1年の時からレギュラーとなり、3年時には日本で開かれたワールドユースの代表に選出。筑波大1年の時には日本代表にも選ばれた。卒業後は日本リーグを経由せずドイツでプロとなる、当時としては「破天荒」な生き方を彼は選んだ。
一方の森保一は、年代別代表はもちろん、長崎県選抜で国体に出場するのが高校時代唯一の実績。マツダサッカー部に入る時も本社ではなく、子会社のマツダ運輸での採用。入部して2年間、トップチームでプレーすることはなかった彼が、後に日本代表に選ばれるほどの選手になるとは、おそらく誰も想像しえなかった。
二人は、マツダやサンフレッチェで7年間、共にプレーしている。ドイツで培った強烈なプロ魂を持ち込んだ風間は、一切の妥協を許さない。森保も練習中から何度も厳しく叱責された。一方で風間は、森保が持つ吸収力と正しい判断を下せる選択力の確かさを高く評価していたことも事実。急成長を続ける背番号7と円熟の極みに達した背番号8がダブルボランチを組み、1994年のファーストステージ優勝に広島を導く。システマチックな「機能美」にかけては、未だにこの時の広島を上回るチームは現れていない。
明日、この二人は指揮官として、3度目の対決を迎える。プロの監督として約半年だけ「先輩」となった森保率いる広島が、過去の2戦は快勝。就任1年目から優勝という最高の結果を出した森保監督に対し、風間監督は川崎Fでのチーム改革に時間をかけ、苦しみながらも今のチームを創り上げた。「これまでの2試合とは違う」という意識は、超がつくほどの負けず嫌いである川崎Fの指揮官の意識にあるだろう。
それも当然と感じさせるほど、最近の川崎Fの破壊力は、目を見張るものがある。第9節の対名古屋戦から6戦連続、ヤマザキナビスコカップも含めれば8戦連続の2得点以上。8試合21得点という得点力は脅威そのものだ。もちろん、そのベースは風間監督が創り上げた「主体的に相手を崩すサッカー」の浸透があるが、個のタレントの輝きも見逃せない。
現在得点ランクトップの10得点を記録している大久保嘉人は、J1通算100得点まであと1点。同世代のライバルである佐藤寿人の目の前でメモリアルゴールを決めるべく、腕をぶしている。レフティ・アタッカーのレナトは、ドリブル・パス・シュート、あらゆる要素で一級品。久しぶりにJリーグに降臨した、ブラジルの若き宝石だ。そしてもちろん、中村憲剛の存在。鹿島戦で美しい直接FK弾を決め、コンフェデレーションズカップから帰国後の公式戦2試合で3得点。さらに前節、1993年4月16日に広島で生まれた風間宏矢がドリブルで二人を翻弄し、大久保の得点をアシストする活躍を見せた。ちなみに、彼が生まれたその1ヶ月後、風間八宏は生まれたばかりの宏矢に「お前に1点をプレゼントする」と約束し、その言葉どおりに「Jリーグ日本人初得点」を決めた逸話もある。
破壊力満点の攻撃陣を持つ川崎Fは、まず広島の攻撃に対応する布陣は引いてこない。まして、自らのチームに強烈なプライドを感じさせる風間監督である。自信を持って、自分たちのサッカーをぶつけてくるだろう。
それは、森保監督にとっても望むところだ。相手の「広島対応策」を打ち破ることを考えず、ただ自分たちのサッカーを思い切りぶつけることだけを、念頭に置けばいい。8試合の完封劇を含むリーグ最少失点(10点)は素晴らしい実績ではあるが、広島といえばやはり攻撃。佐藤寿人・高萩洋次郎・石原直樹・ミキッチ・青山敏弘らが揃う攻撃陣は決して川崎Fに引けをとらないし、F東京戦ではパク・ヒョンジンという新星が結果を出した。川崎Fとはまた質の違う攻撃サッカーに、今季はしたたかさを加味して勝点を積み上げている。
今季の優勝争いという観点から見ても、大きな影響を及ぼす両チームの対決は、森保一と風間八宏、かつての7番と8番が広島で闘うという切なさも加わり、サポーターに様々な想いをかきたてる。だが、二人の勝負師に、そんな感傷など一切なく、勝利のみを追求するだろう。広島の歴史に刻み込まれる二人の伝説が演出する、J屈指の攻撃サッカー対決、スペクタクルな展開を想像するに、難くない。
以上
2013.07.09 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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