もちろん、サッカーはチーム対チームのスポーツではある。だが、そのチームという集合体は、個人の集まり。つまり、個人としての強さが集積しないと組織としても強くなれない。一方で、いくら個々が強くても、組織としてバラバラであれば、サッカーは勝てない。そういう意味でも、今の広島対C大阪は、個人としても組織としても非常に興味深い対決である。
例えば広島には佐藤寿人、C大阪には柿谷曜一朗という二人のストライカーがいる。現在の得点ランク首位と2位。ただ、同じFWとはいえ、そのスタイルは全く違う。柿谷は、もともとMFタイプ。ドリブル、パスに秀でた才能を持ち、ゲームの組み立てもできる。期限付き移籍でプレーした徳島でも、決して得点を量産してきたわけではない。しかし、C大阪復帰後はレヴィー クルピ監督の指導も功を奏したのか、「得点がとれるFW」へと変身して、ここまで10得点を記録し、2年連続二桁得点を早々に達成した。「巧い選手」から「怖い選手」へと変貌をとげ、チームを牽引するカリスマ性も身につけた、Jリーグでも最注目の選手と言っていい。
「C大阪の中ではもっとも危険。ボールを引き出して、素晴らしいトラップからシュートまで持ちこむ形も持っている」と警戒するのはDF水本裕貴だ。またMF森崎和幸も「少しでもスキを与えるとゴールを決めてくる選手。昨年は僕らが勝利しているが、あまり過去のイメージを持たない方がいい。柿谷選手を含め、今のC大阪は状態がいい」と指摘する。今年のJリーグスペシャルマッチで指揮官として柿谷と接した森保一監督も「改めて素晴らしい選手だと感じた」と賞賛を惜しまない。
一方、広島を代表する「個」と言えば、言うまでもなく佐藤寿人である。10年連続二桁得点、J1+J2通算得点179点は史上1位(通算得点はジュニーニョ/鹿島と並ぶトップタイ)。今季2度目のハットトリックとなった川崎F戦のゴールは、全てがスーパーなクオリティを持ち、ゲームを決定付ける重要な得点ばかり。「JリーグMVP」の称号にふさわしい選手であることを、改めて見せつけた。
佐藤は柿谷とは全くタイプが違う。C大阪の若き天才が幅広い能力を持つ「ゼネラリスト」だとすれば、広島の絶対エースは「スペシャリスト」。点をとるという一点に、想像を絶する能力を発揮する選手だ。
例えば川崎F戦の1点目、シュートのこぼれに反応するスピードの速さ。3点目に見せた青山敏弘のパスを呼び込む動き。森保監督が「自分がゴールするための準備が素晴らしい」と指摘するが、それなくして「誰よりも速く」の飛び出しはできない。事前準備の確かさはそのまま、彼がゴールを生み出すまでに無限の「思考」を連続させていることの証明だ。
柿谷のプレーには、おそらく本人にすら「説明不能」な驚きがある。一方、佐藤は自身で「全てのゴールを説明できる」と語っているように、論理の積み上げで得点パターンを構築するスタイルだ。どちらがいいとか悪いとかの問題ではない。要は全くタイプが違うタレントであり、比較するのは難しい。
この二人の突出した才能を組織の中で十分に生かしているからこそ、両チームの現在がある。広島はリーグ戦6戦負けなし(5勝1分)で、その間の佐藤の得点は6点。一方、C大阪は9戦負けなし(4勝5分)で、その間の柿谷はやはり6点。柿谷が得点した8試合の戦績は6勝1分1敗であり、6試合を数える佐藤の得点試合は5勝1敗。チームの全得点に占める得点比率は、佐藤が44.4%で柿谷が43.5%。驚くほど数字が似通っている。両チームが「エースに得点させる」ことを攻撃の原点として組織を整備し、それによって結果を出していることの証明だろう。
もちろん、サッカーはチームスポーツである。別にエースが得点しなくても、他の誰かがゴールを決め、しっかりと守れば勝利できる。しかし、相手のレベルがあがってくれば、最後は「自分たちのやるべきことは何か」という原点に立ち戻らざるをえない。どちらも攻撃的サッカーをうたい、決して一人の選手に攻撃の全権をゆだねているわけではないが、例えばボランチがボールを持った時にまず誰を見るか。広島では佐藤寿人であり、C大阪なら柿谷曜一朗であることは、疑いのない現実である。
突出した得点能力を持つエースを、どう生かして得点をとるか。逆に言えば、相手のエースを機能させないためにどう守るか。広島対C大阪、攻撃対攻撃のぶつかり合いになる明日の激突の要旨は、直接のマッチアップとなるわけではないが、結局には佐藤寿人vs柿谷曜一朗に行き着く。紫の11番が広島の夜に連日の輝きを発するか、それとも桜の8番が才能を爆発させるか。二人をサポートするそれぞれの選手たちの躍動とあわせ、注目せざるをえないストライカー対決である。
以上
2013.07.12 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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