ダービーという雰囲気に、愛媛は完全に飲み込まれてしまった。チームはもちろん、それは観る側も同じかもしれない。試合後は愛媛の完敗、という印象が強かったが、そう感じさせられるのもダービーならではの感覚か。無得点で敗れただけに、愛媛の側からすると無力感を味わったゲームになった。しかし、局面で愛媛の選手が戦えていなかったかといえば決してそうではなく、改めてVTRを見返すと印象もやや変わる。
ダービー4連敗という現実を突きつけられた試合直後、愛媛にとっては全く勝つチャンスがなかったようにすら思えたダービーだったが、前半の愛媛には先制点を奪うチャンスがあった。河原和寿の飛び出しや重松健太郎のフリーキックからのチャンスもそうだが、最も可能性があったのは前半の34分。左サイドを三原向平が突破すると、折り返しに飛び込んだのは右サイドの石井謙伍だった。左足のシュートがミートし切れずGKの正面を突いたが、サイドを崩して徳島ゴールに迫ったシーンだった。
しかし愛媛は前半、守備を重視したために多くの時間帯で徳島にボールを回されてしまったのも事実だった。ゲーム序盤の失点が多い愛媛にとっては、前半を無失点で乗り切りたいという心理が働くのもやむをえない。それがダービーという大舞台なら、なおさら。勝つための手段として、守備から入る準備をしてきたことも理解できるが、それを強く意識するがあまりに愛媛は最後まで相手陣内にボールを運ぶパワーを欠いてしまった。結果的にそれは観る側にネガティブな印象を残したが、結局前半は0−0で折り返した。ある部分で愛媛にとってはプランどおりの展開で、あとは後半にスイッチを入れられるかどうかが問題だった。
その点で、後半の立ち上がりは愛媛の両サイドが前に出ることで、愛媛が徳島陣内でパスをつなぐシーンが出てきた。ただ、そこで慌てなかった徳島。55分を過ぎたあたりで愛媛が再び5バックになった時、シンプルにツートップを狙って再び愛媛を押し込んだ。そして58分に先制点が生まれる。徳島は最終ラインから前線に放り込むとドウグラスと津田知宏が愛媛のセンターバックに競り勝ち、最後は愛媛の石井よりも徳島の大崎淳矢が半歩先に飛び込んでシュート。これがポストを叩きながらもゴールネットを揺らした。
ここから当然、愛媛も反撃に出たが今度はゴールへの意識が空回り。徳島のペナルティエリア付近まではボールを運ぶが、強引なミドルシュートも続いて徳島に怖さを与えられない。逆に、徳島はセカンドボールを拾われた時間帯もチーム全体でカバーし合い、集中を切らすことなく愛媛をゴールから遠ざけていった。そして、アディショナルタイムに愛媛の足が止まった隙を見逃さずドウグラスが試合を決める2点目を奪った。
振り返れば徳島も先制点のあと、後半のアディショナルタイムまで追加点を奪えそうなチャンスは少なかった。最後まで前に出るパワーがなかった愛媛を圧倒してもおかしくないゲーム展開でもあっただけに、試合の内容に関しては満足していない。
ただ、前半は前線からしっかりプレッシャーをかけて愛媛に自由を与えず、後半は最終ラインも含めて粘り強く守り、3試合連続の完封。この成果に加えて、攻撃面でも前節は津田が、そして今節はドウグラスが決めてツートップの強さがゴールという形に表れた。チームとして守るべきところを守り、決めるべき選手が決めるという形がでてきたことは今後の戦いで苦しい状況が訪れた時にも自信になるだろう。そして何よりも上を目指すリーグ後半戦は勝点3を積み重ねることが重要になってくるが、その点では勝って6位以内をしっかり射程圏内にとらえたことは大きい。
一方で、冒頭で愛媛にも勝つチャンスがあったとしたが、最終的にはプランを遂行しきれず、しかもその守備的なプランを意識しすぎて前に出る力を失った戦い方が観る側の失望を生んだことは紛れもない。ダービーという舞台は勝利の喜びを増幅させるが、逆にマイナスの印象もより強めてしまう。そこで今、一番危険なのはチーム全体がネガティブな方向に向かってしまうこと。次もホームで千葉という強敵を迎え撃つが、そこで再びファイティングポーズをとることができるか。「このチームで新たな勝利を刻もう」というサポーターの思いは今回届かなかったが、千葉戦はその期待に応える第一歩にしなければならない。
以上
2013.07.15 Reported by 近藤義博















