「本当に勝ちたかった」飯尾一慶主将のストレートな一言が、チームの総意だったに違いない。その気持ちを体現したが如く、全員が体を張った泥臭いサッカーで、東京Vが7試合ぶりの勝点3を手に入れた。
「少し浮き足立っていた」(財前恵一監督)という、相手守備の立ち上がりを、東京Vは上手く突けた。前半7分、森勇介が放ったクロスをGK杉山哲がキャッチしきれず、大きく弾かれたボールに詰めたのは西紀寛だった。「狙った?いえ。ただ思い切って振ったら入りました」慌ててブロックにいったGK杉山に当たり、軌道が変化したことが、また幸い。鮮やかなループを描いてゴールへと吸い込まれていった。
精神的優位に立ち、より自分たちのサッカーをやりやすくするためにも先制点を奪いたかった東京Vが、狙い通りに先制した。そこから主導権を握り、東京Vペースに傾いていくかと思われたが、テンポ良く攻撃できていたのは札幌だった。左右両ワイドをギリギリいっぱいまで広く使い、縦に素早く展開し、荒野拓馬、岡本賢明、さらにはボランチ堀米悠斗、DF奈良竜樹ら若い選手が積極的にシュートを狙う。試合前、飯尾一慶が「ウチは、得点力ある外国人がいるわけではないから、少なくとも相手よりも数多くチャンスを作って、そのうちの何回かを得点する形でいきたい」と語っていたが、より多くのチャンスを作っていたのは札幌の方だった。それでも、東京Vは、「自分たちの時間帯じゃないときに我慢してしっかり守って、いざ流れが来た時に、追加点をとってもらうと信じてた」(石神直哉)と、守備陣が踏ん張りをみせた。
特に後半、53分上原慎也、54分CKから日高拓磨、55分にも日高と、立て続けに作られた3度の決定的場面を、GK佐藤優也の好セーブも含め、耐え凌ぎきれたことが大きかった。すると迎えた60分、常盤聡が西の前に広めに空いたスペースにパスを出すと、西がそのままドリブルで持ち込み相手DFを交わし、最後はGKとの1対1を落ち着いて左足で制した。「本当は股抜きを狙って失敗したら、たまたまいいところに行った」と、この日2ゴールの背番号11は淡々と語ったが、「つなごうという意識が強い中、いまの東京Vでドリブルシュートはなかなかない形。素晴らしい」と飯尾が絶賛すれば、高原直泰も「チームにとっても大きな2点。よかった」と、賛辞を惜しまなかった。
西の2得点による貴重な白星に「何よりもまず、今日は勝ったことがよかった」と、多くの選手がひとまずの安堵の表情を浮かべた。だが、一方で、その誰もが、「最低限、今日ぐらいの戦いをしないと勝てないということがわかった」と、再認識したことも口にしている。「勝ててない間、勉強や学ぶことができなかった。同じミスを繰り返し、失点し、勝つことができず、成長できなかった。1つのミスに対してもっと1人1人が意識していかなければ成長はないし、勝つこともできない。勝つということが厳しいことだと、全員が改めてわかったと思います。多少時間がかかったけれど、ここから全員で持ち直していければと思います」と、高原は語った。7試合ぶりの白星によって、内容はどんなに泥臭くても、“勝つことでしか味わえない何か”を各々が感じているのではないだろうか。その“何か”を、再び味わうべく、次節も勝利を目指す。
一方、敗れた札幌にとっては、内容の良さでは完全に東京Vを上回っていただけに、悔しさもひとしおなゲームとなったに違いない。ミス絡みで早い時間に失点を許したが、その後の戦い方は躍動感溢れ、若い選手が多数揃うフレッシュな札幌らしいものだったと言えるのではないだろうか。「変えるよりも、続けていこう」とハーフタイムで話したという内村圭宏の言葉が、思い通りのゲーム運びをしていたことの証拠だろう。
後半の立ち上がり、再三あった決定機を逃したあと、東京Vにリードを広げられたことが何よりも悔やまれると内村は語った「先に2点目を取って、東京Vを楽にさせてしまった」。その後、73分、前田俊介からのパスを、右から荒野が中央の内村へ入れると、ワンツーで走り込んできた前田へ。そのシュートはGK佐藤優也の好セーブに阻まれるが、こぼれ球が真正面にきた内村がきっちりと決め、1点差としたことで、「追いつくのは時間の問題だと思っていた」(内村)。
だが、財前監督が試合後の会見で繰り返し指摘したとおり、「最後のブロックを崩すというところで、最後の質、アイデア、関わる人数とかがまだまだ足りない」。その点こそが、今後札幌が上位へ浮上するための大きなテーマとなりそうだ。
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2013.07.15 Reported by 上岡真里江















