福岡を追いかけて全国を渡り歩いていると、自分が住む福岡以外にも、お気に入りの場所が出てくるものだ。そのひとつが岡山。町に漂う温かな雰囲気と、地元・岡山代表のファジアーノ岡山を地域で盛り上げようとする空気。それが何よりも心地よい。試合を見るだけではもったいない。そんな気持ちにさせてくれる町でもある。県庁所在地における降水量1mm未満の日数が全国最多であることから「晴れの国 岡山」と呼ばれているように、いつ訪れても晴れているのも嬉しい。
岡山へ足を運んだら、あてもなく中心部を探検しながら岡山の空気に触れることをお勧めしたい。市内を走るチンチン電車でのんびりと回るのもいい。気候が良ければ歩くのもいい。また、岡山では至る所に自転車屋を見かけるが、ほとんどの店がレンタルサイクルを用意してくれているので、ママチャリを漕いで行くのも楽しい。そして、グルメを楽しむのなら「デミカツ丼」。B級グルメファンならデカ盛りの聖地と呼ばれている「はぎわら」や「黒川食堂」に足を運んで、思い切り胃袋を膨らませるのも悪くない。
しかし、私が訪れた第19節は、岡山にしては珍しく大雨。計画していたサイクリングを諦めてJR吉備線に乗車、吉備津駅を目指す。吉備津駅までは15分程。駅前には、岡山の中心街とは別世界の、のどかな風景が広がる。そこから10分。山間に厳かに佇む神社が見えてくる。吉備津神社。大吉備津彦大神を主祭神とする山陽道屈指の大社で、桃太郎伝説のモデルなどで知られている神社だ。
深い緑に覆われた鳥居をくぐって境内に続く階段を登っていくと、まず出迎えてくれるのは拝殿。その隣に本殿が続く。火災のため焼失した物を、室町時代応永32年(1425年)に再建したもので、建築様式は「比翼入母屋造」。全国唯一の様式であることから「吉備津造」とも称され、国宝にも指定されている。その向いに堂々と立っているのは樹齢約600年のいちょう神木。それらが積み重ねてきた歴史の重みと、口では説明できない空気の重さが私の体を包んでいく。そして本殿・拝殿の隣には、山肌に沿って全長360メートルに及ぶ廻廊が一直線に伸びる。天正7年(1579年)に再建されたもので、こちらは県指定重要文化財。その廻廊を静かに歩けば、あらゆる煩悩が消え去るような気持ちになる。私は無神論者だが、それでも、目に見えない不思議な力を感じずにはいられない吉備津神社。時間に余裕があれば、是非、足を運びたい場所だ。
さて、見えない力に心を洗われて無我の境地に達したところでkankoスタジアムへ向かう。この日は次第に強まる雨足のおかげで十分に楽しむことが出来なかったのが残念だったが、kankoスタジアムは、そこへ足を運ぶだけでも楽しくなれる数少ない場所でもある。スタジアム前広場に広がるファジーフーズの屋台の数々から発せられるのは、ホームのサポーターも、アウェイのサポーターも、とにかく、サッカーを好きな全ての人たちに、サッカースタジアムで過ごす時間を丸ごと楽しんでもらいたいという想い。勝負がかかっている以上、試合が始まれば真剣勝負。甘い顔はしてはいられない。しかし対戦相手は敵ではなく、文字通り相手。それはサッカーを愛する仲間たちでもある。そんな仲間たちが集まる空間を、最高の場所にしたいという気持ちが伝わってくるスタジアムが、心地よくないわけはない。
そしてキックオフ。高い位置からプレスを仕掛ける自分たちの戦い方を変えて、相手にボールを持たせて構える形でスタートさせた福岡だったが、これが逆効果。前半は岡山の攻撃に振り回される展開が続く。さらに、メリハリの利いた岡山サポーターの手拍子、声援、歓声がアウェイ感を強くさせる。後半は何とかリズムを取り戻したものの、それでも試合は一進一退。結局、何とか引き分けに持ち込んで勝点1を積み重ねるにとどまった。福岡は、上位進出のにために勝ちたかった試合。しかし、悔やんでも何も変わらない。悔しい想いから何かを得ることでチームは更に成長していく。
余談だが、この日の試合終了後、アビスパサポーターたちは、スタジアム近くの銭湯「清心温泉」で汗を流し、焼き鳥テラスで焼き鳥を楽しみながら岡山サポーターと交流を図ったらしい。スタジアムのそばにサポーターが集まれる場所があるのはうらやましい限り。そして、試合が終われば、ホーム、アウェイの区別なく、同じサッカー仲間として騒ぎ合えるのも何とも岡山らしい。そんなエピソードを顔見知りのサポーターから聞き、また岡山が好きになった。けれど勝負は別。次の対戦では容赦なく勝たせてもらうつもりだ。
以上
2013.07.15 Reported by 中倉一志
J’s GOALニュース
一覧へ【J2日記】福岡:アウェイに行こう〜岡山編(13.07.15)
吉備津神社は、岡山駅からJR吉備線に乗車して4駅目(約20分)。おごそかな雰囲気で私たちを迎えてくれる。
長い階段を登っていくと、まず拝殿が出迎えてくれる。
雄大な姿の本殿。拝殿とともに国宝に指定されている。
山肌に沿って続く廻廊。全長は360メートルに及ぶ。
樹齢約600年の「いちょう神木」
カンコ―スタジアムを襲った豪雨も、キックオフ直前に上がり晴れ間も見えた。















