2連敗した山形は、落ち着いた試合への変化を感じさせる修正をいくつか施していた。キーバーにはコーチングに長けた清水健太が22試合ぶりに先発に戻り、右サイドバックも山形のイケイケモードを演出してきた山田拓巳に代わり、小林亮が11試合ぶりに先発起用された。そして山形にとって、千葉側の変化も幸いしていた。「ジェフがそんなに前から来なかったので、前に対戦したときよりもしっかりむしろ引いてブロックを組んで、というチームに変わってたので、ある程度ポゼッションできた」(堀之内聖)。相手のロングボールに対しては作田裕次がケンペスにほとんど競り勝ち、形成が思わしくないときはキーパーも使って作り直しながら、前線の動き出しに合わせスペースへ長いボールを送っていた。そうして何度か作ったチャンスのうち、最大のものは15分のスローインからのプレー。右サイド、ロメロ フランクが縦に送ったボールで完全に裏を取った山崎雅人からニアに飛び込んだ伊東俊がワントラップ。ニアを狙ったシュートは角度がなく、GK岡本昌弘にキャッチされたが、その後も味方同士が距離感よくプレーする山形が千葉にペースを握られることはなかった。
普段以上の慎重さとリスク管理の意識が感じられた山形に隙が生まれたのは23分。谷澤達也へのタックルでファウルを取られた秋葉勝が「ボールから目を離してしまった」その隙に、山口智が一気に逆サイドへ展開すると、米倉恒貴が上げたクロスをヘディングで決めたのも山口智。リスタートしたあと、そのままゴール前まで詰めていたのだ。山形は秋葉の周囲にも選手はいたが完全に不意を突かれ、「山口選手が『ここはチャンスだ』と遠くのほうからずーっと走ってランニングかけたときに、こちらで気づける選手が一人もいませんでした」(奥野僚右監督)と最後はノーマークで打たれている。山口智をはじめとする千葉のしたたかさが光ったこのプレーが、前半の千葉のほぼ唯一のチャンス。山形にとってはなんとももったいないプレーとなった。
後半は立ち上がりこそ千葉が主導権を握ったが、すぐに流れを奪い返した山形が、小林亮のオーバーラップなど前半には少なかった攻撃的なプレーを増やして1点を追った。相手陣内に押し込み、ボールを動かしながらサイドからの好機をうかがったが、前回対戦の敗戦を受け、「クロスの守備を徹底した」(鈴木淳監督)という千葉にとっては、「あまり中割られてないし、外へ出させて単純なクロスという相手の攻撃が多かったので、わりと対応しやすかった」(佐藤健太郎)と慌てることなく対応。山形は67分の2枚替えを同点を実現する足がかりにしたかったが、その直後に与えたコーナーキックでケンペスにフリーでヘディングを許し、ポストの跳ね返りを大塚翔平に決められて突き放された。
この状況での2点差は千葉にとってはセーフティーリード。ミドルサードまで持ち運ばせても、ディフェンディングサードでは相手に自由を与えなかった。そしてこの終盤も、虎視眈々と追加点を狙っていた。84分、谷澤からのスルーパスに反応したケンペスのループシュートはポストに跳ね返されたが、86分にはケンペスがタッチライン際のボール処理をミスした作田と入れ替わってフリーで持ち込み、決定的な3点目を挙げた。
シュート数では15対7と山形が倍以上。「そこまでの差は感じなかったんですけど、やっぱり相手の試合運びがうまかった」と堀之内。自分たちのプレーに多くの課題を抱え、まずは己との戦いを戦わねばならなかった山形に対し、千葉は常に相手の突きどころを探りながらプレーする余裕を持つまでに熟成されている。「ゲームの内容をもうちょっと上げなきゃいけないということは残るんですけれども、そういうチームとしての統一感だったりということは非常によくなってきたので、さらに上のレベルをめざしてトレーニングして次のゲームに向かいたい」(鈴木監督)。今シーズン初の5連勝。トップ2追撃の態勢は整った。
「どうしても相手が下がっているなかでというと、そこを大事に大事にという心理もはたらきます。(崩しきれない原因は)そういったところでそれをぶち破るぐらいの大胆な、思いきりのいい動き出しであったり、シュートであったり、クロスであったり、それと中での慌てないコンビネーションですね」(奥野監督)。山形は、遮二無二勝負に出てビッグチャンスも得られるが守備への切り換えも多いスタイルから、より試合を落ち着いてコントロールできる方向へ微調整の舵が切られているが、まずは一歩踏み出せた形跡も、その代償として、相手ゴール前での怖さを失った側面も見受けられる。同様のコメントは「味方のサイドバックが持ったときにサイドに流れる人数が少なかったり、サイドに流れることができなかったりしたことがあった」(山崎)、「ザキさん(山崎)が裏に抜けてくれてたんですけど、そこでもう一人絡んだり、そこにボールが入ったりというのがあまりなくて、ザキさんだけが頑張ってるような感じでした」(秋葉)と選手側からも聞かれたが、いい攻撃といい守備は矛盾するものではなく、一体のもの。そう実感できるまでやり続けられるかどうかが問われている。
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2013.07.15 Reported by 佐藤円















