前節と同じように、勝敗はやはり90分を戦った末のトータルの結果であることを改めて思わされるゲームだった。つまりこの試合の結果としては、双方とも勝利に値する内容を展開できなかったということになる。連勝はならなかったが勝点を継続して積み上げた熊本と、勝ちきれなかったものの連敗を止めた山形。この日加えた勝点1、あるいは落とした2が終盤にどんな意味を持ってくるかは、この試合で見えた修正点を次節以降の戦いに反映できるかにかかっている。
この一戦に臨むにあたって熊本が意識していたのは、山形のプレッシングをはがしてボールを保持する時間を増やし、それにより山形の攻撃を受ける時間を減らすこと。合わせて、前に出て来る山形の背後のスペースを狙い効果的なカウンターをしかけることだった。
そうした意識が立ち上がりから見られたのは確かで、3分には堀米勇輝から齊藤和樹へと長いパスが出ている。だが前半に関しては、完全に山形のゲーム。前への圧力と鋭い出足からのアプローチで熊本にボールをつながせず、奪っては素早く展開。「相手のサイドをどういう風に衝いていくか、また中盤でどれだけボールをコントロールしてゲームをコントロールするかという部分で、中盤に山崎(雅人)を入れた」と奥野僚右監督が話した通り、左右のMF、さらにはサイドバックまで絡む流動的な動きでボールを運ぶ山形が、次第にサイドを起点に押し込んでいく。8分には右から左へ展開して角度のないところから中島裕希、10分には伊東俊と中島が左でワンツー、13分には左からのこぼれを秋葉勝がミドル、25分にも左からの形で山崎の落としをロメロ フランクが狙う等、チャンスを量産。これらはバーに嫌われるなどして枠をとらえきれなかったものの、31分、中島が熊本DFを引きつけて粘った折り返しを、中央に詰めた山崎が右足で沈め先制した。
前半のゲームが行われたのはほとんど熊本陣内。これほどまでに押し込まれたのは、山形の出足やボールの動かし方の早さについていけなかったこともあるが、「エリアをどう埋めていくかという意識付けをするなかで、エリアは抑えてるんだけどボールサイドにいけない」(池谷友良監督代行)状況になっていたからだ。脚の痛みもあって前半で退いた北嶋秀朗が「ボールを取りに行くスイッチが見つからない状況だった」と話している通り、全くと言っていいほど積極的な守備を見せることができず、セカンドボール争いでも優位に立てなかった。特に、ウイングバックが引いた前のスペースを頻繁に使われたことも、そうした展開に拍車をかけている。
これを受け、熊本の池谷監督代行は後半から4バックへシフト。3バックの中央にいた吉井孝輔をボランチに上げ、「我慢して守るというよりも自分からアプローチをしかけて奪う、奪って出る、そういう力をすごく持ってる」(池谷監督代行)という黒木晃平を右サイドに出して、対面の石川竜也のケアにあたらせた。また左のMFに仲間隼斗を入れることで、同様に山形の右サイドに対応、さらに前の形も縦関係に動かしたことで中盤のバランスも改善を見た。奪いどころが高くなったことで、攻撃に切り替わっても高い位置でポイントができ、「裏に抜ける動きが出てきて好転していった」(同)熊本に対し、山形はこの変化にうまく対応できず、「風下になったこともあって、受ける形になってしまった」(奥野監督)。
熊本は58分、黒木からの浮き球をスペースに走り込んだ仲間が足元にピタリとおさめ、小林亮を右に、最後はGK清水健太を左にかわして無人のゴールへ流し込んで同点。以降、前半とは一転して主導権をにぎり、77分にはGK南雄太からのキックを齊藤、堀米とつないで最後は齊藤、88分にも堀米から齊藤とチャンスを迎えるが追加点は奪えず。山形も山崎から宮阪政樹、伊東から比嘉厚平、中島から廣瀬智靖と交代カードを切るが流れを引き戻すまでには至らず、結局1−1でドローとなった。
追いつかれて勝ちきれなかった恰好になった山形だが、押し込まれた後半も1失点に留めて連敗を止め、最低限の勝点を加えたことは前向きにとらえられよう。ただ、中島も、また奥野監督も触れている通り、前半に迎えた決定的なチャンスを決める精度の向上と、後半の守備に関しては引き続き課題。前への推進力と背後のケアのバランスも改善の余地がある。
一方の熊本は、今までに無いシステムの変更が奏功したのは小さくない収穫。後半の勢いを考えれば勝ち越してもおかしくなかったが、そこは山形同様に精度を高めていく必要がある。また、池谷監督代行も話したように「勝点をきっちり取るときは取る」というスタンスも現時点では止むを得ない部分があり、「残り10分とかで勝負を決めようという考えは無い」という言葉にも納得できる。とは言え、拮抗した勝負を制して勝ちきるにはやはり、少々のリスクは必要になってくる。最低でも(勝点)1を取るという共通認識が固まってきたからこそ、よりアグレッシブに3ポイントを取りに行く姿勢をこれから高めていきたい。
以上
2013.07.28 Reported by 井芹貴志















