スポーツの世界では「相性がいい」とか「相性が悪い」という言葉を耳にすることが多いが、私は基本的に、この言葉を信じていない。同一シーズン内であるのならともかく、メンバーも変わり、監督以下スタッフも変わったチーム同士に、過去の戦績は当てにならないという考えを持っているからだ。強いから勝ち、弱いから負ける。勝負の世界にあるものは、唯一、そういう理由だけだと思っている。
そんな私だが、それでも「何かあるんじゃないか」と思わざるを得ないスタジアムがある。京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場。おそらく、この名前を聞いて頭を抱える福岡サポーターもいるはずだ。最後に西京極で勝利したのは2000年5月3日。その後、西京極では6試合を戦ったが全敗。スコアは1試合を除いて5試合が1点差。どちらが勝利してもおかしくない試合ばかりだったが、結果として全てに敗れた。正直、私の中では、数あるJリーグのスタジアムの中で最も行きたくないスタジアムだ。
そして2013シーズン第26節、福岡は13年ぶりの勝利を挙げるべく西京極に乗り込んだ。「もし私に選択肢があるのであれば、京都の選手を7人くらい福岡に連れて帰りたい」とプシュニク監督が語ったように、個々の能力の比較なら、残念ながら京都に軍配が上がる。同時に「私は福岡の監督として誇りを持っているし、選手たちを愛している。この6か月間で彼らは非常に向上し、今は京都のような素晴らしいチームと肩を並べて試合が出来る力がある」とも語ったように、チーム一丸となってアグレッシブに戦う福岡にも、十分に勝機はあった。
そして、アビスパは狙い通りに試合を進める。いつもの4−1−2−3の布陣を4−2−3−1に変更して中盤の人数を厚くして、高い位置からアグレッシブにプレッシャーをかけて京都のストロングポイントを消すと、攻めては10分、44分に城後寿が決定機を演出。1回目はバランスを崩し、2回目は京都GKオ スンフンの好守の前にゴールは割れなかったが流れは悪くない。課題と思われた後半の立ち上がりも、自分たちのスタイルで京都ゴールに迫る。ここまでは想定通りに試合を進めていた。その後、少しずつアビスパのプレスが遅れだし、京都が個の能力を発揮して攻め始めたが、この時間帯を乗り切れば再び福岡に流れがやってくるはずだった。だが、この最初の勝負所を我慢できなかった。56分には中原秀人のミスがきっかけになって失点。続く64分にも2失点目を喫した。起点となったプレーはオフサイドにも思えたが、判定はオフサイドなし。一度は跳ね返した物の、そのこぼれ球をつながれて原一樹にゴールネットを揺らされた。
けれど、福岡は諦めない。選手交代を機に再び前への推進力を得た福岡は2点を追って京都を攻め立てる。69分には途中出場の西田剛のクロスに坂田大輔が併せて1点差。72分には西田が決定的なシュートを放ち、その後も、勝利に必要な2点を追って最後まで攻め続けた。試合には敗れた。西京極での13年ぶりの勝利もならなかった。その事実に悔しさは募る。だが、選手たちは力を出し切って最後まで戦った。その姿を見て私の心の中に湧き上がってきたのは悔しさよりも他の感情だった。「じゃあ、次は勝ってやろうじゃないの」。きっと多くのサポーターも、そう感じていたに違いない。
そして30日、福岡は1日のオフを過ごした後、次の試合に向けてトレーニングを開始した。「ほぼ僕が壊してしまったゲーム。壊してしまったゲームに対して、次の試合でしなければいけないことはすごく大きいと思う。チャンスが与えられたら、しっかりと取り返すつもりでやりたい」。そう語っていた中原秀人は、いつもにも増して必死の形相でボールを追った。ハードなトレーニングには、誰ともなく声を掛け合って仲間を鼓舞する。誰も下を向いてはいない。目の前の試合に勝つために何をすればいいのか。ただそれだけを考えてボールを追う。そして最後は笑顔でトレーニングを終了。福岡は、いつもと変わらぬ態度でトレーニングを終えた。大事なことは結果に一喜一憂しないこと。反省すべきは反省し、やるべきことを見失わず、それをひたすら積み重ねること。どんなことが起こっても目標達成のために前に向かって走り続けること。その姿勢に微塵の迷いもない。残された試合は16。その最後を告げるホイッスルが鳴るまで福岡の歩みは止まらない。
以上
2013.07.31 Reported by 中倉一志















