7月31日(水) 2013 J1リーグ戦 第18節
川崎F 1 - 2 湘南 (19:03/等々力/15,934人)
得点者:44' 大久保嘉人(川崎F)、56' 遠藤航(湘南)、66' 高山薫(湘南)
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「(川崎Fに育ててもらったという意味で)気持ちがあるんですかね。内なるものがあるんですかね」とはにかむ高山薫は、決勝ゴールを決めた選手に送られるビッグマッククッションを大事そうに抱えていた。初めてもらったというそのクッションを「家に飾ります」と話しつつ、66分の決勝ゴールを振り返った。
「フロンターレはパス・アンド・ゴーがすごいから疲れました。でも逆にみんなが上がってくるので、カウンターのチャンスだと思いましたし、それでチャンスを作れました。(得点の場面は)キリノは速いし、前に持ってきてくれると思っていました」
キリノの折り返しを胸で押し込む泥臭いゴールではあったが、川崎Fのアカデミーで育った高山にとって、そして湘南にとっても大きな意味のある決勝ゴールとなった。川崎Fは三度、自らのアカデミーで育った高山にゴールを許した。
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川崎Fの複数の選手が口にしていた「勝たねばならない試合」という評価は、試合の中で証明されていた。ただ、その勝利への強いと結果とが結びつくことはなかった。
湘南はいつものがんばりをこの試合でも見せ、果敢に前からボールを奪おうと前に出る。ただし、そのプレスをいなすだけのパスワークを川崎Fは持っていた。試合開始早々の3分には、川崎Fが右サイドを攻略して中村憲剛が決定的なシュートを放つ。7分にも流麗なコンビネーションでボールを前へと運び、ペナルティエリア内に走りこんだ山本真希が強烈なシュートを放った。
湘南のゴールを守る新加入選手であるアレックス サンターナの攻守があったにせよ、川崎Fにしてみれば得点と紙一重の攻撃が続いていた。中村はそんな前半の立ち上がりについて「取りに来ているところを上手くいなしてゴール前までに行って、シュートまで行けている」と振り返り、その時間帯を経て「向こうも取るのを諦めて、ベッタリ引く。そこからカウンターという形に切り替えてきた」と述べている。
湘南は無理に前に取りに出る事を止め、割り切って守る策に出る。3枚の最終ラインに加え、左右両WBが下がった5人でゴール前を固め、さらにその前にボランチの2枚と2シャドーが並ぶ。つまり、5−4(5人の最終ライン、4人の中盤)のブロックを作り、川崎Fの攻撃を封じ込める事を狙った。
湘南の最終ラインを統率した遠藤航はその守備ブロックについて「(ボールを)動かされるのはある程度しょうがないと割り切って下がり、5バック気味になって中を締めながらサイドに追いやりながら、というところを意識していた」と述べている。結果的にこの割り切った守備陣形は川崎Fの強力な攻撃を封じ込める。
ポゼッションを追求してきた川崎Fに対し、こうした極端な守備ブロックを作るチームが現れることは予想されていたことであり、ゴール前に“うじゃうじゃ”と存在した湘南の選手をいかに外し、ゴールに近づくのかが問われる試合となった。そういう意味で、試合開始直後の時間帯に決定的な場面を作っていたことが川崎Fに心理的にマイナスに働いてしまった可能性がある。風間八宏監督はその点について「非常に良い立ち上がりをしたと思いますが、それが少し攻めることができる、ということでテンポを落としてしまった」と述べている。感じていた手応えが、油断に変わって行った可能性を指摘するのである。
川崎Fの出方を伺っていた曹貴裁監督は、前半22分ごろにキリノを始めとした選手をベンチ前に集め守備についての指示を与える。すなわち「(菊池)大介をトップ下に置いて、相手のボランチにふたをするような形ではっきりマークを。相手の3バックの一人にキリノが行ったらウェリントンが締める、または逆の形(ウェリントンが行ったらキリノが締める)、とした方が収まりやすいかなと思い」そうした守備面での変更を行う。
川崎Fは44分に大久保嘉人が先制点を奪うが、ボールの処理を誤った事故的なこぼれ球を拾ったもので、結果的に曹監督の守備面での役割の変更は川崎Fにとって重荷となっていた。また、湘南は先制されても気落ちすることはなかったという。その心理について鎌田翔雅は「嫌な時間帯に入れられましたが、1点で抑えられたことが後半に繋がったと思います。どちらかというと事故みたいな失点で、崩されたわけでもないから、みんな切り替えることができた」と述べている。
湘南がそうした心理を保っていたという意味で、湘南が後半の立ち上がりから川崎Fのゴールに肉薄する場面を作ったのは必然的な流れだったのかもしれない。迎えた56分。菊池のシュートによって得たCKを、遠藤が頭で決める。ゾーンで守る川崎FのCKでの守備を研究し、離れた場所からゴール前に飛び込んでのパワフルな一撃だった。
66分の高山の逆転ゴールによってリードを許した川崎Fの猛攻は、88分のPK奪取として結実したかに見えた。登里享平から中村へと入った縦パスを起点にし、最後はレナトがエリア内で仕掛けたドリブルで得たPKであり、がむしゃらに守る湘南の守備ブロックを切り刻んでのものだった。だからこそ、2−2となるべきシュートがポストに弾かれた衝撃は大きかった。勢いづくはずの等々力はその熱の行き場を無くした。
「最後のPKが入っていれば勝点1に終わっていたと思いますし、もしかしたらひっくり返されていたかもしれないというきわどい試合でした」と話す曹監督の認識は正しい。それだけに川崎Fは大久保のPK失敗が痛かった。
本稿二度目の表現となるが、ポゼッションを突き詰める川崎Fの前に、守備を固めるチームが現れるのは予想されていたものである。そんな相手に勝利するために、川崎Fは守備を固める相手から点を奪う攻撃を作らなければならない。もちろんパスワークはある程度の成果を見せており手応えが見えている。だとすれば、中村や登里、山本が時折見せたミドルシュートがその解決策の一つとなるはず。何れにしても今後のチーム作りを見てみたいと思う。
9試合連続で複数点を記録してきた川崎Fを1点に抑えた湘南は、結果的に今季の3度の川崎F戦で負けることがなかった。不細工でもなんでも、死力を尽くして闘いぬき、そして勝点3を手にしたその気持の強さに脱帽するしか無い。勝つためには、技術が必要である。そしてそれと同じくらいに“絶対に勝つ”という気持ちの強さが必要となる。この試合は、そうしたサッカーの根源的な要素を見せてもらえたという意味で、学ぶべきものが多かった。そんな湘南に感謝しつつ、彼らが見せた“気持ち”を川崎Fは教訓としてほしいと思う。そして、曹監督が作るチームとの次の対戦では、必ずリベンジしたい。
以上
2013.08.01 Reported by 江藤高志















