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【J1:第18節 広島 vs 大宮】レポート:平日の広島の夜を、1万6351人の熱狂が揺さぶる。その主役は、両サポーターから愛された男だった。(13.08.01)

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7月31日(水) 2013 J1リーグ戦 第18節
広島 3 - 1 大宮 (19:04/Eスタ/16,351人)
得点者:3' 石原直樹(広島)、74' 渡邉大剛(大宮)、81' 石原直樹(広島)、90'+4 石原直樹(広島)
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増田卓也は大宮側、富山貴光は広島側。対戦相手のサポーター席まで出向き、深々と頭を下げ、拍手をする。5月6日に起きた激突事故の時、サポーターに受けた声援のお礼の意味を込めて。両サポーターからは、大きな拍手とコールが起きた。筆者は大宮サポーター側にいたのだが、そこには「増田、元気になったか」というゲートフラッグも。胸が熱くなった。
もちろん、首位攻防戦の熱気も緊張感も、この日のスタジアムには半端なく存在していた。平日にも関わらず、エディオンスタジアム広島に集まった観客は1万6351人。平日ナイトゲームとしては、クラブ史上最多の数字をたたき出したことが、その証明である。
両サポーターも選手たちも、勝利を強く希求した。しかし、スポーツは結果が全てではない。その大前提を理解し合えているからこそ、試合前の美しい光景が自然と表現された。
勝点や得失点差でデジダルに「残留」「降格」のシビアな悲喜劇が起きるサッカーの世界では、きれいごとに聞こえるかもしれない。しかし、もし「勝つために何をしてもいい」のであれば、サッカーはやがて社会から駆逐される。危険なタックルが横行し、審判や相手を罵り、ピッチに暴力が溢れる事態になる。そんな憎しみに満ちたスポーツを、誰が愛することができようか。

「敵、とは言いたくないんです」。
森保一監督の、試合前日の言葉である。

「もちろん、勝つために戦う。でも、相手をリスペクトしていないと、ゲームは成立しない。選手・審判・スタッフ・サポーター。全ての力が合わさって、一つの試合が完結する。そういう大切なことを、5月6日の大宮戦で、再認識できた。広島も大宮も、相手をリスペクトしつつも互いにしのぎを削り、協力しあっていい試合をお見せする、いわば仲間なんです」
仲間、という認識でいえば、石原直樹ほど両チームを結びつける存在はいない。彼の名前がコールされると、広島側はもちろん、古巣・大宮側からも暖かい拍手が贈られる(ちなみに、BMWスタジアムで響いた湘南サポーターからの拍手も盛大だった)。石原自身、大宮への感謝の言葉は常々口にしていた。だがまさか、これほど強烈な「恩返し」が待っていようとは、大宮サポーターも想像していなかったはずである。

まさに、石原直樹ショーだった。微妙にボジションを動かして相手DFの視界から消え、山岸智のクロスを呼び込んだ先制点は、佐藤寿人を彷彿とさせた。高萩洋次郎のFKに合わせた2点目は、広島の夜空に天高く飛翔し、完全に頭一つ抜け出してヘッドを打った身体能力は、伝説の男・久保竜彦の姿がダブって見えた。
極めつけは3点目。高萩とのアイディアがピタリと一致し、大外に開いてスーパーパスを呼び込む。決して簡単な角度ではなかったが、ポストに当ててゴールの中に飛び込んだのは、ストライカーらしいシュートの巧さであり、同時にここまで必死の献身を続けてきた石原に対するサッカーの神様からのプレゼント。それは、今も気持ちを示してくれる大宮サポーターに対して、「元気でやっています」というメッセージにもなった。

大宮にしてみれば、前半、主導権を握っている間に同点にしておきたかったはずだ。先制点の後、広島が必要以上に受けに回ってしまったこともあり、セカンドボールは大宮が支配。24分、上田康太のクロスを叩いた長谷川悠のヘッドがバーをたたき、33分にはセットプレーの流れから菊地光将が強烈なシュート。このどちらかが決まっていれば、果たしてどうなっていたか。

後半、広島の運動量があがり、前半よりも流れはホームチームに傾いた。それでも、渡邉大剛の個人技によるシュートで追いついた4分後の78分、ペナルティエリア内で放った富山のシュートが、ポストの内側に当たって入っていれば。そんな仮定の話を語りたくなるほど、きわどい戦いだった。

結局、この試合は石原直樹に尽きる。もちろん、疲労困憊となりながらも3得点に絡んだ高萩の才能のきらめきは美しかったし、腰痛を抱えていた青山敏弘が後半になればなるほど存在感を増した姿には、プロフェッショナリズムを感じた。
しかし、厳しい勝負の境目は、決めるか決めないか。単純明快ではあるが、サッカーにおいてもっとも重要であり、だからこそ深遠なテーマにこだわりぬくストライカーの存在が、首位決戦の明暗を分けた。その舞台が広島対大宮戦だったことは、決して偶然ではないのだろう。
球際で発露される激しい闘志。90分という時間の中でかわされた両チームの駆け引きの妙。10人になっても攻めに出た大宮の熱情。いたずらな時間稼ぎをせず、だめ押し点を狙いにいった広島の矜持。試合終了までサポーターを熱狂させたこの日の戦いは、両クラブの歴史に深く、強く、刻まれたはずである。

以上

2013.08.01 Reported by 中野和也
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