湘南にとって、さまざまなものが詰め込まれていただろう前節だった。序盤は川崎Fの攻勢に晒され、押し込まれる展開が続いた。それでもセットプレーに起因する決定的なシーンを鎌田翔雅が掻き出し、Jデビュー戦となったGKアレックス サンターナは鋭い反応で枠を封じた。前半終了間際に失点を喫し、ゲームの流れとしてはけっしてよくはなかったが、しかし動じない。
鎌田は振り返っている。
「我慢しなければいけないことはみんな分かっていた。嫌な時間帯に入れられましたが、事故みたいな失点で、崩されたわけでもないから、みんな切り替えることができた。2点目を食らわないことが大事だと思っていたので、後ろは集中して、これ以上失点しないことだけを考えてやっていた」
我慢の先にやがて得点機は訪れる。56分、永木亮太の絶妙なコーナーキックに遠藤航がヘッドをぴたりと合わせて追いつくと、さらに10分後、キリノの突破を経て高山薫が泥臭く押し込んだ。アレックスの好守もあり、相手のコーナーキックを立て続けに防いだ直後の、鮮やかなカウンターだった。さらに、交代で入った下村東美がディフェンスラインの前のスペースを埋めれば、90分を回ってから入った大槻周平は前線で巧みに時計の針を進めた。
慌てず騒がず時を待ち、守り抜き、決め切る。好セーブを連発したアレックス然り、前線で次の展開へと繋げたウェリントンら新たに加わった仲間がさっそく特徴を発揮し、交代選手も仕事を果たした。ゲームの閉じ方を含め、90分+アディショナルタイムを制した逆転勝ちには、無骨だけれど頑なな、組織としての意識の共有と個々の責任のまっとうがあった。よくも悪くも若さを強調されてきたチームは、着実にその階段をのぼっている。
もちろん、「これからも試合は続くし、次を勝つことがいちばん大事」とキャプテンの永木がすぐに見据えたように、束の間の喜びに埋もれるわけにはいかない。中2日で迎える今節への意欲はより高まっていよう。
今節BMWスタジアムに乗り込む横浜FMは、中断明けに大宮と浦和を立て続けに撃破したが、前節の柏戦はドローに終わっている。齋藤学の突破からマルキーニョスの4戦連続ゴールによって先制し、その後もカウンターからビッグチャンスをつくるなど優位に進めながら、後半アディショナルタイムにセットプレーを契機に追いつかれたのだった。今節は勝利をもってあらためて首位に迫りたい一戦だ。
しかし思えば、今季リーグ開幕戦とヤマザキナビスコカップ予選で横浜FMと対戦した湘南も、マルキーニョスと齋藤、また中村俊輔を含めて決定機を仕留められたものだった。好ゲームを演じながら、また開幕戦では一度はリードを奪いながら、要所で決め切れず、逆に決められて落とした感は拭えない。
「90分を使って勝つ巧さを感じた」と、島村毅は振り返る。
「マリノスに対してはとくに、リスクマネジメントの意識をより強く持たなければいけないと思う。90分とアディショナルタイムまで、チームとして集中したい」
守り抜き、決め切る。当たり前にしてもっとも難しい一瞬が勝負の行方を左右する。観る者にとっても、握る汗はけっして真夏のせいだけではない。
以上
2013.08.02 Reported by 隈元大吾
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